コロナ禍の今年、意外にも利用者が増えたサービスがある。「少しでもいい音で聞きたい」という音楽好きなら誰でも思う飽くなき欲求に応えようと、あるお店が始めたイヤホンのオーダーメイドを取材した。
東京・秋葉原にあるイヤホンの専門店「e☆イヤホン秋葉原店」では、新型コロナウイルスの感染が拡大した今年、自分の耳にあったイヤーピースを求める客が去年のおよそ3倍になったという。店を訪れていたある学生は、オンライン授業などでイヤホンの使用頻度が増えたといい、「イヤホン買って、イヤーピースも何個か付いているんですけれど、どれもいまいち合わないということが何回かあった」と話す。
「e☆イヤホン」を運営する株式会社タイムマシンの岡田卓也取締役は、「テレワークが後押しになっていて、イヤホンを求める方が多くなった印象です。『長時間つけていても耳が痛くならないもの』、『通話品質が良いものはどれですか?』という質問をよくいただきます」と、イヤホンにこだわる人が増えていることを明かした。
そこで注目されているのが、プロのミュージシャンや音響技術者が使用しているインイヤーモニター、通称イヤモニ。大音量のステージ上でも特定の音だけを聞き取れる高い遮音性や抜群のフィット感が特徴だ。
プロ用のイヤモニは従来10万円ほどかかるが、音にこだわる一般の人にも低価格で体験してもらおうと、去年10月にこのお店が始めたのは「eA-R(エアラ)」というサービス。自分の耳の形にぴったりとあった「自分専用」のイヤーピースを作るというもので、価格は2万3100円から(インプレッション(耳型)の作成料金5500円を含む)。テレビ朝日・並木万里菜アナウンサーが実際にこのサービスを体験した。
まずは、緑色と白色が混ざりあうことで固まる特殊なシリコンを注射器で耳に注入。「冷たい。何か詰まっていくのがわかります。なんかヒンヤリ。ぐにゅっとしたものが…」と並木アナ。もう片方の耳にも注入して待つこと5分。シリコンが固まり、耳型が出来上がった。
出来上がった耳型は工場に届けられ、アクリルへと変貌を遂げていく。表面を研磨しコーティング材を塗り、イヤーピースを制作。そして、世界に一つだけのオリジナルイヤホンが完成する。完成したイヤホンをつけた並木アナは、「つけた感じがしないと言っていたけれど、まさにそれですね。すごいぴったりフィットしています。遮音性も高くて」「走っても全然ずれません」と、驚きの声を上げた。「会社の会議だけだともったいないですね(笑)」と大満足の様子だった。
この店では去年10月にこのサービスを開始して以来、これまでに600件以上のオーダーが入っている。コロナ禍となって以降、増加したという。岡田取締役は「右耳と左耳で型が全然違う方もいらっしゃって、イヤーピースも左右で本当はサイズを変えたほうがいい方も結構多くいらっしゃる。なので自分の耳にあったイヤーピースを選ぶということも非常に重要です」と、イヤーピース選びの重要性を語った。
オンライン会議、授業の増加によってイヤホンを使う機会が増えたことで、耳鼻科を受診する人も増えている。大阪大学耳鼻咽喉科の前田先生は、「長時間イヤホンを使うことはなるべく避けて、イヤーピースは清潔にして使用してほしい。痒みを感じたら炎症の前触れ、長時間の使用を避けること、そして清潔に保つことで耳も守れる」と助言した。
(ABEMA/『ABEMA Morning』より)