「一見ちぐはぐに見えるかもしれないがやっていくしかない」 感染防止と経済の両立、優先すべきは
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 全国各地で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、菅総理はGoToキャンペーンの見直しを否定した。感染対策と経済活動の両立を目指す中、何を優先していくべきなのか。

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 感染が拡大しているかどうかを表す実行再生産数は、12日時点で1.42と感染拡大を示す1を超えている。現状について、厚生労働省やWHO(世界保健機関)で医療政策に携わった東京大学大学院特任研究員で内科医の坂元晴香氏は、「いま感染が拡大している地域では実効再生産数が1を超える状況が続いているので、減ることはないと見ていた。ここ数日の間に急に増えてきているのは事実で、これぐらいで増え止まりするのか、さらにもう少し増えていくのか、分かれ目にあると思っている」と分析する。

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 感染拡大防止策を強化するという“ブレーキ”と、GoToキャンペーンという“アクセル”を同時に踏んでいるのではないかという声も聞かれる。坂元氏は「一見すると相反する政策が行われることを、理解し許容すること」を提言し、「感染症対策の観点から言えば、もちろんGoToをやらずに旅行を禁止して、またステイホームのような形で呼びかけるのが効果的だが、そうすると経済が立ちいかなくなるということがここ数カ月ずっと言われてきている。観光や飲食業はかなり大きな打撃を受けているのは事実で、そういった中で最低限の感染症対策をしながら経済をどう回していくか、守っていくかということを考えた時、一見するとチグハグに見えるかもしれないが、感染症対策をしながら経済を回すということもやっていくしかないと思っている」と述べた。

 一方、リディラバ代表の安部敏樹氏は「旅行業や飲食業以外にももっとサポートがあっていいと思う一方で、GoToトラベルは国のお金が呼び水になるまあまあ合理性が高い施策だと思う」した上で、「医療機関を統括しているのは政令指定都市ないしは広域自治体だ。そういったところが医療現場の情報を吸い上げた時に、『感染が広がってきたからブレーキを踏もう』とGoToを止められないというところが課題だと思う。国がお金を回しましょうと言っているが、医療の方が優先されるべき時は必ずある。そういう時は各自治体が決められるようになるべきだと思う」との考えを示した。

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 感染力の強い時期は発症2日前から発症後5日間とされることから、飲み会には10日間空けて行く“every ten days”を東京都医師会の尾崎会長は提唱している。この考え方について坂元氏は「おっしゃる通りで、ほとんど在宅で誰にも会っていないような方が人にうつす可能性はほぼゼロだと思う。逆にいま、東京でよく飲み会に行っているような場合だと多少リスクは高い。そのあたりは個人である程度リスクを判断して行動していくしかない」と述べた。

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 感染対策と経済活動を両立するための課題として、坂元氏は「『誰を守るのか』『社会の何を守るのか』の国民のコンセンサスがないこと」をあげる。「都道府県ではある程度、GoToの人を受け入れるどうかは知事がメッセージを出していると思うが、何を守りたいのかなどの議論がもう少し深まってもいいのかなと。何となく日々の感染者が増えてきたから、“危ない。ちょっと自粛しよう”みたいに見えなくもないところがある。守るべきところ、例えば高齢者や重症化しやすい人を防いだ結果、若年層の自殺が増えていったりすることをどう思うのか。逆に経済優先をすると、やはり高齢者で亡くなる方が増えていってしまう。そのバランスをどこまで社会として許容できるのかなど、議論がもう少し深まってもいいと思う」。

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 4月上旬から5月下旬の緊急事態宣言下では、外出自粛の要請や休業要請、休校、企業向けの雇用調整助成金の対象拡大や個人向けの特別定額給付金などの措置が取られた。

 今回の状況でも同じような対策は必要か。坂元氏は「人の移動や接触を止めることがまず1つ。職場に通勤するように戻ってきつつあるものをもう一度在宅に戻すとか、最近発表された感染リスクが高まる“5つの場面”をどうやって避けていくか。自粛要請ではなく、もう少し強い力で介入していくことになるのかなと思う。一方で、現時点で子どもたちが感染源になって広めていくという可能性は低いとされている。学校や保育園、幼稚園は流行を拡大するあまり大きな要因ではないと現時点ではなっているので、先に休校にするのは違うかなと思う」との見方を示す。

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 また、再び緊急事態宣言をするのは「精神的にもかなり厳しいと思う」と指摘。「それなりに我慢した生活を続けてきている中で、年末年始にまた家から出られない、お店も閉まっていてどこにも行けないという生活を強いるというのは厳しいのではないかと思っている。専門家会議の会見などでも『なかなかそれは厳しいのではないか』ということを言っているので、極端に全部閉じるというよりは、高いリスクのところに絞っていくということになるのかなと思う」とした。

 そんな中、米製薬大手のファイザーが、独ビオンテックと共同開発する新型コロナワクチンについて「90%以上の効果がみられた」と発表した。また、ロシア国立研究所も、「スプートニクV」ワクチンについて「92%の有効性」「深刻な副作用は確認されず」と発表している。

 これらのワクチンは評価できるのか。実際に日本でワクチンが打たれ始めるのはいつ頃になるのか。坂元氏は「通常よりは早く進むのかなと。ただ、いいニュースだとは思いつつ、過度に期待する段階でもないのかなと思っている。治験の段階だと、基本的に健康で基礎疾患がない方々に打っているので、これを高齢者や基礎疾患のある方に打つとどうなるのか。他の難しさも指摘されていて、ワクチンはマイナス80度などで保管しなくてはいけない。それを日本国内に満遍なく行き渡らせて、誰にどういう順番で打っていくのか。いろいろ整えることを考えると、この1、2カ月の間や冬の間に、というのは少し大きな期待かなと思う」との見方を示した。

ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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