新型コロナウイルスの感染者が全国で増加し、医療現場は崩壊の危機に直面している。現場で働く人々はどんな思いを抱いているのか、埼玉県で働く看護師に話を聞いた。(テレビ朝日社会部・笠井理沙)
・【映像】働いても給与減額...取材にあたった笠井記者に聞く
■「感染者増で絶望、いつまで続くのか…」
話を聞かせてくれたのは、埼玉県の病院で働く女性看護師。勤務する病院は、国内で感染が広がり始めた2月ごろから、新型コロナウイルス患者を受け入れている。
患者は全員軽症で、発熱などの症状のみ。20代~30代の患者が多く、日々の仕事は、検温や食事の配膳、体を拭くタオルを渡すなど、さほど大変ではなかった。
しかし、秋になり感染者が再び増え始めてからは、病院の状況も一変した。40代~60代の患者が増え、基礎疾患のある人の薬の管理、日常生活の介助など仕事内容が増えた。また患者の重症化リスクが高いことから、こまめに様子を見に行くなど、よりきめ細やかなケアが求められるようにもなった。
一方で、病院内にウイルスを持ち込まないよう、仕事を離れた日常生活でも緊張を強いられる生活が続いている。旅行と飲み会が趣味だという女性。春先からそのどちらも楽しむことができていない。再び感染が拡大した状況に「絶望した」と話す。
「私たちは正直ずっと自粛している。患者さんに病気をうつしてしまうと怖いので。夏くらいまではなんとか我慢したが、最近の感染拡大に絶望…。いつまで我慢しなくてはいけないのと…。」
■冬のボーナスカットも…医療現場の状況は?
最前線で働く医療従事者の待遇について、病院や診療所などで働く人たちで作る日本医療労働組合連合会が「冬のボーナス」の調査結果をまとめた。それによると、前年と比較可能な289組合のうち、128組合がボーナスを引き下げるという。このうち10万円以上の引き下げは31組合に上り、最大で平均35万円以上減額される組合もあった。
背景には医療現場の厳しい経営状況がある。新型コロナの流行が始まって以降、全国各地の病院では「受診控え」が起きている。
さらに新型コロナの患者を受け入れている病院では、専門病棟などを設けるため、一般の入院を抑えるなど、収入が減る状況が起きている。こうした状況に国は支援金を用意しているが、日本医療労働組合連合会によると、現場からは「申請したが届いていない」「金額も不十分」などの声があがっているという。
千葉県の医療機関の担当者は「懸命に頑張っているスタッフに少しでも多く支払いたい。しかし、経営状況が厳しすぎる…」と肩を落とした。
■「やってられない…しかし、目の前には患者さん」
話を聞いた女性看護師も「冬のボーナスが下がるのでは」と不安を感じている。感染拡大の終わりが見えず、業務が大変になるうえ、待遇も悪くなる…同僚とは「もうやってられない」と何度も話している。
「それでも、困っている人を助けたい」そんな思いを持ちこの仕事に就いている。目の前に患者がいるからという使命感で、ここまでがんばってこられたと話す。「でも、私たちもただの人間。いつまで続くのか…」
こういう人たちの努力があるからこそ、医療が崩壊せずに、ここまでこられたのだと感じる。
取材を終えようとしたとき、女性看護師の言葉にハッとさせられた。「私たちの話を聞いてくれてありがとうございます」