真相を知った者は消される――。匿名掲示板「2ちゃんねる」のスレッドを発端とした都市伝説「鮫島事件」を題材とした、パニックホラー『真・鮫島事件』が11月27日から全国公開中だ。新型コロナウィルスが猛威を振るう、2020年の今、この瞬間を舞台とし、物語は「リモート部活会」のオンラインをベースに進んでいく。今なお語り継がれる謎の伝説、鮫島事件の真相は明らかになるのだろうか……。令和時代の新感覚ホラーのヒロインを熱演した武田玲奈と、令和最恐のパニックホラーのメガホンを取った永江二朗監督に、ツーショットインタビューを行った。
コロナ禍でしかできない作品を…永江監督のねらい
――本日はよろしくお願いいたします。まずは監督にお伺いしたいのですが、2000年頭にインターネット上で話題になった鮫島事件を、2020年の今、なぜ映画化しようと思ったのでしょうか。
永江二朗(以下、永江):今はSNSが全盛の時代ですよね。ちょっとした発言が本人の手におえなくなるほど一気に拡散して、ときには事件が起こったり事故が起きたり……。僕は、鮫島事件の本当の恐怖は拡散の恐怖にあると思っているんです。だからこそ、令和の時代の今こそ合致しているのではないか、今だからこそ真の恐怖が描けるのではないかと。そこが企画のスタートのきっかけです。
――作品の中には、コロナ禍であるまさに今の時代が反映されていますよね。コロナで大変な今だからこそ撮りたいという思いもあったのでしょうか。
永江:企画を出したときには、すでに新型コロナウィルスの真っ最中でした。実は、撮影もできるかわからないような状態だったんです。だからこそ、逃げずに真正面からぶつかっていきたいという思いが湧いてきました。脚本も現場も編集も、想像を絶する大変さがありましたが、このコロナ禍でしかできない作品だという強い思いを持って作りました。
――武田さんはヒロインへのオファーがあったときはいかがでしたか。
武田玲奈(以下、武田):実はもともとホラー映画は見るのが苦手で。マネージャーと相談して背中を押してもらいました。これまでやったことのない役柄だったので、挑戦したいという思いもあって、撮影の前にはお祓いに行って、お守りをもらいました。そのお守りは撮影中ずっと肌身離さず持っていました。
――お守りの効果はありましたか。
武田:多分あったと思います(笑)。何事もなく、無事に撮影を終えることができたので。
――お祓いは撮影に入る前に全員でやるとよく聞きますが、今回は一人で行かれたんですね。
永江:今回、コロナ禍ということもあって、お祓いは各々でしたね。あとは、ホラー作品の伝統の一つでもあるんですが、幽霊が寄ってくるようにと、あえてお祓いをしない現場もあったりするんですよ。(笑)
――ええ、怖い。
永江:まあ、僕は撮影中に怖い体験はしたことないですけどね(笑)。
「こんな女優さん、なかなかいない」武田玲奈の“一人芝居”を絶賛
――現場では、おふたりはどんなお話をされたのでしょうか。
永江:武田さんはほかの共演者と芝居をしていないんですよ。劇中は、リモートで繋がっている友達(高校時代の同級生)との掛け合いシーンが続くのですが、まずは、武田さんのパートを撮ることからスタートしました。僕が「パソコンの画面に映る友達、すなわちオンライン・リモートで繋がっている向こう側ではこういうことが起きているんですよ」など、そのシーンの内容、状況を詳しく説明して、演技してもらっていました。共演者と同じ空間で撮影していないので、もしかしてほかのキャストと一度も会ってないんじゃないですか?
武田:そうなんですよね。試写会トルツメのときに2~3人に会っただけなんです。撮影の時にはモニターの向こう側にいる友達の台詞を代役のかたが読み上げてくれるという状態だったので。相手がいなくて、受けの演技ができないのと、自分から発信するだけの演技だったので難しかったです。
――そのような過酷な状況下で、監督から見た武田さんの演技はいかがでしたか。
永江:画面にはグリーンバックを出しているだけなのに、絶叫シーンとか泣くシーンとか、鬼気迫る演技をしてくれて、感動しちゃいました。こんな女優さん、なかなかいないですよ。
――大絶賛ですね! 武田さんはどのように心境を作っていったのでしょうか。
武田:ほぼ一人芝居に近い感じだったのでイマジネーションを膨らませるしかなかったですね。でもやっぱり難しいなと思いましたね。監督にそんな風に思ってもらえてホッとしています。
――本当に大変な状況の中での撮影だったようですが、プラスに働いたことはありましたか。
永江:基本順撮りだったことはよかったですね。ほぼリアルタイムで最後まで進んでいくので、ドキュメンタリー感を出せたと思います。カメラワークもオールハンディ撮影なんですよ。基本的には。ドキュメンタリー感、臨場感はかなり出ているのではと思っています。
武田玲奈、完成作は「想像を絶する怖さ」
――完成作をご覧になった時はいかがでしたか。
武田:一人芝居の状態での撮影だったので、いったいどうやってつながるのか全く想像がつかなかったんです。映画館で観たときには、音も音楽も私以外の人のシーンも想像を絶するほどの怖さでした。後半は目を閉じて、指の隙間から覗いて、それでも怖かったです。
永江:撮影もですが、編集もめちゃくちゃ大変で……。ヘロヘロになりながら、締め切りの数時間前まで編集作業をしてという状態でした。ホントに地獄だった(笑)。やばいなこの作品って、ひらすらそればっかり言ってましたね。だからこそ、映画館で観たときには、今まで携わってきた作品の中である意味、一番感慨深かったかもしれないですね。
――最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。
武田:コロナ渦という状況の中の新しいタイプのホラーの中で、昔からあった都市伝説の真実が語られるのか……語られないのか……。それはぜひ劇場でご覧ください。
永江:音にものすごくこだわって作りました。配信でもレンタルでもなく、5.1chサウンドの劇場で味わってもらいたいです。劇場にて、大音量のホラーを体感してください。
――令和最恐のパニックホラー、多くの人が新しい恐怖体験を味わうことになると思います! 本日はありがとうございました!
テキスト:氏家裕子
写真:mayuko yamaguchi