TVアニメ『魔法科高校の劣等生 来訪者編』オープニング主題歌「Howling」を歌うASCA。誰もが一度足を止めた2020年。開催を予定していたイベントやライブツアーの中止など、コロナ禍は彼女の音楽活動にも大きな影響を与えた。そんな中リリースされた「Howling」に、ASCAが込めた想いとは。
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■コロナ自粛期間で「独りじゃない」と気づいた
――もうすぐ年末ということで、まずは2020年を振り返ったお話を伺いたいと思いますが、業界全体としても音楽活動が難しい1年となりました。
ASCA:びっくりしましたね。歌に関する活動が一切できなくなってしまったので、コロナ禍となった最初の数週間は自分の家で「私はこの先みなさんに忘れ去られてしまうのではないか……」という不安を抱えながら生きていました。
そこから自粛期間が明けたタイミングで西川貴教さんと一緒に歌わせていただく機会があって「こんな考えをしていてはいけないな!」とまずは肉体を鍛えはじめ、気持ち的にも前向きになっていきました。
――「Howling」の歌詞の中にも、苦しみを乗り越えて前向きになれるようなフレーズが散りばめられています。
ASCA:私自身、この自粛期間を通じて「独りじゃない」ということに気づくことができたんです。私はこれまでの活動でさまざまな方々に応援をいただいてきて、ツアーやワンマンライブでも素晴らしい景色をたくさん見させていただいてきました。
そういったこれまでの記憶や想いから「こんな不自由な時代だけど、声を上げていこう」というテーマが生まれて。そう思うと、この2020年は決して無駄ではなかったと思いますね。
――TVアニメ『魔法科高校の劣等生 来訪者編』ともリンクした内容になっていると思いますが、作詞の際にフィーチャーしたキャラクターはいますか?
ASCA:「Howling」はリーナ(アンジェリーナ=クドウ=シールズ)に寄り添って作詞を行いました。アニメの制作側からもオーダーがあったのですが、原作を読ませていただいて、私自身もリーナの人間性に共感できる部分がたくさんあったんです。主人公の達也と深雪は強すぎて(笑)、憧れはするんですけど共感まではいかないというか。
リーナは自分の進んでいる道に対して「このままでいいのかな……」と迷いながらも、しっかりと自分の意志を持った行動をとっていて。そんな彼女の葛藤と私自身の中にある音楽活動への葛藤を重ね合わせながら、“彼女と一緒に声をあげていたい”という思いで作詞を進めていきました。
――みなさんに特に聴いてほしいフレーズはありますか?
ASCA:先ほどもお話しした「独りじゃないだろ」というフレーズは全てのサビに入っているのですが、デビューして間もない頃の私は「ひとりでもっと頑張らなきゃ!」と、気持ちが内向きな状態だったんです。
今振り返ると自分のことしか考えられていなかった時期だったと思うのですが、これまでの音楽活動を通じて「私はこんなにもみなさんに支えられているんだ」ということに気づいて。ほかの楽曲の中でも同じようなフレーズは歌ってきましたが、今回が一番自分の気持ちを反映させて歌うことができているのではないかと思いますね。
――楽曲の配信開始後やアニメ放送後、みなさんからの反響はいかがでしたか?
ASCA:たとえば「この楽曲が好きだからアニメを見ました!」というふうに、楽曲きっかけでアニメに入ってくださる方もいらっしゃって。アニメ作品を通して活動するアーティストとして、とても嬉しいことだなと思いました。
ほかにも、楽曲の歌詞をしっかりと読み込んでくださっていたり、「くよくよしたときに聴いています」とか「毎朝出勤する元気が出ないときに聴いています」といった方もいらっしゃって。そんな感想を見ていると「ちゃんと届いて欲しい人にこの楽曲が届いているんだな」という実感がありました。
――「Howling」は勇気をくれるようなフレーズとともに、メロディーから気持ちの良い疾走感も感じられて、聴いていると自然と気分が高揚します。
ASCA:これまでもさまざまなアニメの楽曲を歌わせていただいてきたのですが、今回初めてストリングスを入れずに収録をしたんです。
作曲のSakuさんは私のライブでギターも担当してくださっているのですが、そのライブの余韻が残った状態でこの楽曲の相談をしたこともあり、挑戦の意味も込めてゴリゴリのバンドサウンドにしようと。また、サビ中の「wow wow」はライブ中みんなで叫べるフレーズにもなっているんです。
――コロナ禍以降のライブではコールアンドレスポンスができない状況が続いていますが、心の中でも叫びたくなりますよね。
ASCA:先日配信ライブをさせていただいたのですが、私もMCでまさに同じことを言いました。「今日は声は出せないけど、私の声とみんなの心で一緒に叫びましょう!」と。
実際に声は出せなくても、きっとみんないろいろな叫びがあると思うので、このタイミングにこの楽曲をリリースすることができて本当によかったなと思いました。
■頑張って生きているあなたへ「みんなと一緒に声を上げたい」
――これまで放送されたアニメ本編の感想もうかがっていきたいと思います。先ほど作詞のお話でも出てきたリーナのどのような部分が特にお好きですか?
ASCA:コメディー要素がリーナに集中していたり、明らかに作画が違っていたり、リーナには制作側の狙いを感じていて……(笑)。狙っているのはわかりつつも、やっぱり可愛いですね。
――リーナが達也や深雪と戦うシーンも熱かったです。
ASCA:深雪とリーナが戦うシーンで、お兄様(達也)と深雪が向かいあって力を渡す場面を見て「おお~、久しぶりですね!」という気持ちになりました。やはり優しくて最強だなと思いましたね。
――今後の展開も楽しみですね。最後にASCAさんの来年の目標とファンのみなさんへのメッセージをいただければと思います。
ASCA:今年は予定していたリリースイベントやツアーが中止になるなど、みなさんに会いに行けなかったという悔しい気持ちが大きかったので、来年は私自身やファンのみなさんのそんな悔しさも含めて回収していきたいなと思っています。
今後もまだ状況がどうなるかはわかりませんが、今年はオンライン配信など“会えないなりの楽しみ方”もあるのだと知ることができたので、そういった方法も活かしつつ、やはり実際に会うことができれば良いなと。
「Howling」に関しては、歌詞にも想いを込めて書き綴っています。みんなと一緒に声を上げたい。そして毎日を頑張って生きているあなたに向けて歌った楽曲です。受け取っていただいて「明日からまた頑張ろう」と思っていただけたら幸いです。ぜひお楽しみください。
インタビュー・文・撮影:吉野庫之介
(C)2019 佐島 勤/KADOKAWA/魔法科高校2製作委員会