“不要不急の外出を控えてくれ”というのは誤ったメッセージだ。小池都知事の発信に京大・宮沢准教授が異論
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 「国民の皆さまにおいては、年末年始、静かにお過ごしをいただいて、このコロナ感染を何としても食い止めることにご協力いただきたい」。菅総理は14日夜、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、自身肝いりの政策だった「GoToトラベル」を今月28日から来月11日まで全国で一時停止することを決断した。また、飲食店への営業時間の短縮要請も延長、応じた場合の協力金を最大1カ月あたり120万円とすることも表明した。

・【映像】宮沢准教授が「目玉焼きモデル」を生解説

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 『ABEMA Prime』に生出演した京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授は「人が移動することによってウイルスが全く無かったところにも持ち込まれるのは間違いない。ただ、移動自体には罪はないし、札幌や福岡などに関してはGoToが大きく寄与したというよりも、4月くらいに入ってきて、その後も残っていたウイルスの感染が再び爆発したと考えるべきではないか。もちろん夏の波がGoToのせいだという見方を否定することはできないが、私が見ている限りにおいては、うまいことやったという印象の方が強い」と指摘。

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 その上で、「いま見えている新規感染は2週間前のものなので、現時点での状況を予想することは難しいが、私は多くの場所で下降傾向にあるとは思っている。それでもGoToトラベルの停止や営業自粛によって、次の波を遅らせる、小さくするという効果はあるし、それによって患者数が減れば、年末年始の医療体制の崩壊を防ぐ効果もあると思う。その意味では仕方がなかったとは思うが、急すぎる。果たして旅行業、観光業は実務的に対応できるのだろうか」とした。

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 ただ、小池都知事が臨時会見で国と歩調を合わせるとともに、「都外、都内への不要不急の外出は避けましょう」などと呼びかけたことについては厳しく批判した。

 「東京の人には大変申し訳ないが、遺伝子配列を調べてみると、いま全国で流行っているのは全て5月、6月くらいに流出していった、“東京由来”のウイルスだと言っていい。ただ、小池都知事の発言には同意できないところもある。“不要不急の外出を控えてくれ”というのは、明らかに誤ったメッセージだ。確かに、ウイルス感染を防ぐ一番簡単な方法は、外に出ないこと。しかし、それはあまりにも暴論だ。私が訴えてきた、身体に入るウイルスを100分の1に減らすことを心がける“100分の1作戦”を参考にするなど、きちんと感染予防対策をしていれば、スーパーやデパートに買い物に行ったり、映画や音楽を楽しんだりしても問題はない。それなのに“外出を控えてくれ”言わってしまえば、皆さんが家に籠もってしまい、経済が冷え込んでしまう。医療体制を守ることは非常に大切だが、事業をしている人にも手厚いケアをお願いしたいし、外に出るための方法をもうちょっと発信すべきではないか」。

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 また、今後の過ごし方について宮沢准教授は「冬は警戒レベルを上げなければいけない、季節の変わり目は感染しやすくなると思ってほしい。ただ気をつけていただきたいのは、4月の緊急事態宣言もそうだし、小池都知事が言っていたように“短期集中で抑える”という考え方は根本的な解決にはならないということだ。いくら一生懸命やっても、波が後ろにずれるだけであって、消えることはない。一旦は数字が下がってきても、油断すれば再び上がってくるということを覚えておいてほしい。また、上がってくると皆さんが狼狽し、それを見て政府も動いくが、どの程度上がるのかを冷静に判断し、パニックにならないようにお願いしたい。これまでの経験を生かして対応すれば大丈夫だし、そもそもやれることは限られている。感染が起きやすい場所で感染が起きるようなことをしない、これに尽きる」と指摘。

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 「電車内でも大きな声で喋らなければ問題ないし、居酒屋でもそこそこ広いテーブルで、普通の話し声なら問題ない。マスクをしてない人がいたとしても咳をしていなければ問題ないし、多少喋っていても小声なら距離を取れば問題はない。美容院についても、陽性だった人が200人くらいに接客したが一人も感染せず、むしろ家庭内で夫にうつしてしまったというアメリカのデータがある。これもマスクなどの対策をしていれば大丈夫だ」と訴えた。

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 宮沢准教授は、こうした自身の考え方を「目玉焼きモデル」と名付け、独自に提唱している。「全ての地域や人に対して均一に自粛しろという主張や政策には、感染しやすいところ、感染しやすい行為によって感染が拡大していくという、至極当たり前の視点が抜けていた。また、今までのモデルでは“自然減”が説明できなかったが、このモデルなら自粛せずに集団免疫が獲得でき、自然減が起きることも説明できる」。

 「目玉焼きモデル」では、地域や人をR0=基本再生算数(1人の感染者が何人に感染を広げる可能性があるかを示す。1より小さい場合は終息へ、1より大きい場合は感染拡大へ向かう)ごとに5つに分け、同心円状にゾーニング。R0の値が最も高いエリア(「夜の街」など)を黄身=中心部、「かなり騒々しい飲食店」などをその周辺部に、また、一般生活や“100分の1作戦”を実践している人たちを白身に、そしてR0(全く感染しない・させない)を最外縁の「巣籠り」と位置づけて、感染しやすさを視覚化した。

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 「複数の感染者が黄身に入らなければ火は付かないし、白身ならば入っても焦げる程度で必ず止まる。実は第1波と第2波、第2波と第3波の間には小さな波がいくつか立っていたが、これらは感染者が黄身の部分から外周に向かって入っていったことによるものと考えられる」。

 宮沢准教授はこう指摘し、東京の現状については、黄身にあたる歌舞伎町のホストクラブなどで感染が拡大しておらず、その理由はこれまでの波の中で集団免疫を獲得していった為と説明。ただ冬に入ったことで一般生活の白身の人たちの黄身化やR0の値が上昇していることで家庭内感染が起きている事は問題とした上で、「家庭内感染は防ぎようがないという人もいるが、諦めないでほしい」とコメント。家庭内の感染予防として「料理を出す前に小分け」「食事中は小声」「トイレを流す時は蓋をすること」など呼びかけた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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