“受診控え”“小児科離れ”が子どもたちにもたらす影響を懸念 小児専門病院の理事長に聞く
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 医療現場での人手不足が叫ばれる背景にある、医療機関の深刻な経営難。日本病院会などが全国の加盟医療機関に行なったアンケートによれば、実に約半数が赤字に陥っているという。その原因のひとつが、新型コロナウイルス感染への恐れに伴う“受診控え“だ。

 「このままの状況が3年続けば破綻する」。そう話すのは、中野こども病院(大阪市)の木野稔理事長だ。

・【映像】コロナ禍で増える"受診控え"半数が赤字転落した病院経営の実態は?

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 日本初の民間小児専門病院として開業した中野こども病院は、救急患者を24時間365日休まず受け入れ、毎年6万人もの患者が訪れる人気の病院だった。コロナ禍にあっても、新型コロナウイルス感染疑いのある患者や軽症・無症状者も受け入れてきた。

 しかし新型コロナウイルスの感染不安から、子どもの受診を控える保護者が増える“小児科離れ”が生じた。「うちは病児保育もやっているので、朝7時40分くらいになると、いつもは時間外の患者さんや、早く来て待っている患者さんがいた。これだけガラガラになるのは異常事態だ。そもそも例年の収益は数千万円程度だった。それが今年になると、一時期は入院患者が半分近くになり、4月から積み上がった赤字が10月(現在)で2億3000万円ほどに達している」。

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 職員のボーナスを削減するなどして、なんとか凌いできたというが、厳しい状態が続いている。「あまり高齢者のことを言いたくはないが、いわゆる暇つぶし、井戸端会議のために通院されていた方々が減るのはいいと思う。しかし医療が潰れてしまったり、医療の本質的なことが理解されなくなったりしてしまうのは困る。私どもはコロナの患者さんを受け入れる協力病院になったので、空床補償もしてもらっている。融資も受けるし、今の窮状はなんとか乗り越えられるかもしれないが、その先が難しい。国には事情や施設に応じて、経済的な支援をお願いしたい」。

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 木野理事長がこうした懸念を示すのは、ことが経営の問題だけにとどまらないからだ。不登校やいじめの問題を抱える子どもに寄り添ったり、虐待を発見して福祉に繋げたりといった役目も担っている小児科が機能を停止してしまえば、地域に与える影響も計り知れないものがある。

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 「“もう少し早く来ていただければきちんと対処できたのに…”というお子さんもおられる。特に小中学生の不定愁訴だ。ちょっとお腹が痛い、ちょっと頭が痛いという状況が長引き、不登校になってから初めて来られるといったこともある。経営が悪化する以上に、小児科医としては子どもたちが不利益を被っているということが心配だ。新型コロナウイルスの感染拡大が始まって半年以上が経つわけで、若年者で重症になった方はおられないとか、小児科ではクラスターは起きていないといったことを大人たちは学ぶべきだと思う。本来、熱が上がったから下げるとか、咳があるから抑えるといったことだけでなく、子どもの身体を発達や成長の中で診ていくのが小児科の役割だ。障害がある子どもの場合、その子にあった対応がなされているか、あるいは家庭の状況を見ることもある。心の栄養、環境の調整ということも大切だ」。

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 また、コロナ禍で普及の兆しを見せているオンライン診療にも限界があると指摘する。「医療的ケアが必要な方や障害を持っておられる方の場合、病院まで連れて来ることだけでも親御さんは苦労されるし、そもそも移動すること自体がリスクになることもある。一方で、訪問診療にも制限がある。その意味では、長期で診ている方については親御さんから現状を伝えてもらったり、処方したりといった点には活用できると思う。ただ、急性期でちょっと調子が悪いとか、何か様子が変わったという場合、オンラインではきちんとした診断や指導はできない」。

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 その上で木野理事長は、将来を見据え「20年後、30年後の日本を支える子どもたちをいかに育てるかを一緒に考えるのが小児科医だ。その意味では、大人には人間ドックはいくらでもあるが、子どもにはない。乳児検診を少し集団でやるだけで、小学校、中学校、高校生にはない。そこを生命保険会社などに協力いただいて、安い掛け金や生命保険料で毎年チェックしていくような、アメリカでは導入されているようなシステムを導入できないか」と訴えていた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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コロナ禍で増える"受診控え"半数が赤字転落した病院経営の実態は?
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