“白でなくてはいけない”…生理用品に立ちはだかるタブーと法の壁 「女性×テクノロジー」のフェムテック市場に熱い視線
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 「フェムテック」とは、女性(フィーメール)と技術(テクノロジー)を掛け合わせて作られた言葉。最新のテクノロジーを活用することによって、「生理」「妊娠」「更年期」など女性が抱える健康問題や体の悩みを解決していこうというものだ。

・【映像】映像:土田記者の解説 紙ナプキンだけが生理用品じゃない フェムテック製品に注目

■紙ナプキンだけが生理用品じゃない フェムテック製品が続々登場

“白でなくてはいけない”…生理用品に立ちはだかるタブーと法の壁 「女性×テクノロジー」のフェムテック市場に熱い視線
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 日本女性の9割が、生理の際に紙のナプキンを利用しているといわれているが、実はその代替となるような「生理用ショーツ」や「月経カップ」がフェムテック製品として出てきている。

 「生理用ショーツ」は、経血を吸収しやすい特殊な布製の素材で作られており、紙ナプキンのように1日に何度も取り換える必要はなく、基本的には1日1枚のショーツで過ごせるとされている。また、洗濯して繰り返し使うことも可能で、環境にも良いとされている。「月経カップ」はシリコン製で、タンポンと同じように膣に直接入れて経血をためることができるもの。カップ内に溜まった経血を洗い流して、繰り返し使うことも可能だ。個人差はあるが、1回装着すれば1日取り換えずに過ごせるとされている。

 コロナ第1波のときに、一時トイレットペーパーがなくなったことが大きなニュースになっていたが、実は生理用品もかなり品薄の状態が続いていた。ネット上では、検索ワードの上位に「月経カップ」があがっていたという。災害などの緊急時に備えて、紙のナプキン以外の選択肢を持てるというのは、安心にもつながるだろう。

 フェムテック製品には他にも、妊娠しやすい日を予測するアプリ、尿漏れを防ぐトレーニンググッズなど、様々なものがある。
 
 海外では、こうした製品に医療保険などが適用されることで手に入りやすい国や地域も出てきており、ヨーロッパを中心に普及が進んでいる。日本でも市場は徐々に拡大しており、2025年には市場規模1.4兆円(※フェルマータ調べ)に達するのではないかという試算もある。

■立ちはだかる2つの壁

 一方で、フェムテック製品には普及を妨げる2つの大きな壁がある。1つは「生理」「妊活」「更年期」などをタブー視する傾向が、まだまだ日本社会にはあるということ。「生理休暇」の制度を設けている企業は多いが、実際に「生理でおなかが痛いので明日仕事を休ませてください」と上司には言いにくい人も多いだろう。また、妊活中の女性が「排卵日なので休みたいです」というのも、かなり勇気がいるはずだ。まずはこういった空気感、環境を変えていく必要があるのではないだろうか。

 もう1つは、規制の問題だ。薬機法という法律で、「生理用品」の定義は「色が白でなくてはいけない」「使い捨てでなくてはいけない」などと厳密に決められてきた。しかし、フェムテックの生理ショーツは好みやその日の気分で選べるように白以外の選択肢もあり、使い捨てではなく、繰り返し使えることを推奨しているものもある。したがって、この薬機法の定義にあてはまらず、「雑貨・雑品」としてしか販売ができない。

 「雑貨」だと、たとえば生理用ショーツが一体どのくらい経血を吸収できるものなのかなど、具体的な効果や効能をうたうことができない。このため、開発メーカーには「広告も打ちにくく、口コミで広がっていくことに期待するしかない」と嘆く人もいる。規制によって必要としている人に届きづらくなるという問題が起きているのだ。

 厚労省は、現在は「白でなくてはいけない」などの条件にあてはまらなくても承認できるプロセスはあると主張しているが、業界に浸透していないのが現状だ。

■規制緩和に向けて、動き出した2人の政治家

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 今年10月、自民党にフェムテック振興議員連盟が立ち上がった。発起人は、当選2回の宮路拓馬議員(41)。そして会長は、幹事長代行の野田聖子議員。来年に開かれる予定の政府の規制改革会議に、フェムテック分野の規制緩和に向けた提言をすることを目指し、フェムテック製品を開発・販売する上でどんな問題があるのか、企業からヒアリングを行っている。

 ヒアリングに参加したのは、「潤滑ゼリー」のメーカー。妊娠を望む男女の、女性側の痛みを緩和するために開発された製品だ。婦人科に来る不妊の相談の中で、こうした痛みが原因だというケースもかなりあるそうで、不妊治療として医師からゼリーの使用を勧めることもあるという。

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 この手の痛みを緩和するとされる製品はネット上に様々あり、粗悪なものも含まれている。だからこそ、品質管理がしっかりしたものはきちんと「医療機器」として認めてほしいと開発メーカーは訴えている。

 しかし、医療機器として認められるには、薬機法の適用対象と認められなければならない。薬機法の対象となるのは、「病気の診断・治療・予防」になるもの。妊娠を望む女性の“痛み”は、病気の診断・治療・予防にはあたらず、薬機法の対象外=「雑貨」として扱われてしまう。

 これについて厚労省は、医療機器として認められたいのであれば、フェムテック製品も申請手続きを進めてほしいと主張している。そのためには製品の安全性を証明するエビデンスの蓄積が必要だが、フェムテック製品は新しくできたものであるため、“前例”がない。そのため、一から積み上げていかなければならない。振興議連のヒアリングに参加した企業が開発したフェムテック製品は、医療機器として認められるまでに、申請から5年もかかったというものもあるという。

 一方で、厚労省は、フェムテック市場が広がってニーズがあることがわかれば規制緩和に向けた検討をするという考えは示しているという。さらに、経済産業省も、フェムテック市場はどのくらい伸びるのか、実態調査を始めた。法整備の実現にむけて、前向きな動きが出てきたとみてもいいのではないだろうか。

■「すべての女性にかかわる話に光を」フェムテックの未来は

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 フェムテックの今後を左右する政治の動きを取材していて感じること。それは、自民党議員の中でまだフェムテック分野への関心が低いということだ。さきほど紹介した振興議員連盟は、第1回の参加者が6人。そして、第2回と第3回に参加した議員は、会長の野田聖子議員、発起人の宮路拓馬議員を除くとわずか1人だった。男性社会の永田町の世界では、フェムテックの議論に参加しようという議員の数が少ないのが現状だ。

 今後自民党内で法整備の必要性についてどう理解を得ていくのか、本当に法整備の実現に向けた環境づくりができるのか。カギを握る2人は次のように決意を語っている。

「フェムテックという言葉自体知られてないからスルーされてしまっている。自民党の女性活躍は、キラキラした女性をクローズアップさせるもの。この議連では、生理の問題などすべての女性にかかわる話に光を当てたい」(発起人の宮路議員)

「60年女性をやってきて活躍できなかったのが生理の時期だなと思う。いろんなイノベーションがあったのに、今の生理用品の規格は60年前に作られたもの。私たち女性のまわりは止まってるんだなとわかった。言葉を法律にのせることで広がっていくことを何度も経験してきているので、『法律をつくらないとフェムテックは広がらない』というのであれば、応援する法律をつくっていくのが私の仕事」(会長の野田議員)

■プロフィール
土田沙織(つちだ・さおり)
テレビ朝日政治部記者。これまでに安倍政権で総理番として、政府の新型コロナ対応などを取材。現在は二階幹事長や野田幹事長代行ら自民党議員を担当。代理出産など生殖補助医療に関する法整備の検討や夫婦別姓について取材を進めている。

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