「国や医師会に憤りを感じる。このままでは医療崩壊だけでなく“居酒屋崩壊”だ」緊急事態宣言の再発出を前に、厚労省の元医系技官が訴え
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 首都圏の1都3県を対象とした緊急事態宣言の発出があすにも決定される。飲食店への営業時間の短縮要請が午後8時に前倒しされるほか、要請に応じない店の名前を公表できるよう関係政令が改正される方針だ。また、罰則規定が盛り込まれるかが焦点となっている特措法改正案について、政府は来月初旬の成立を目指している。

 5日のABEMAABEMA Prime』では、緊急事態宣言の課題について、元厚生労働省医系技官で作家の木村盛世医師に話を聞いた。

・【映像】木村氏による解説

■「国や医師会に憤りを感じる」「“地域間搬送”と“高齢者対策”を」

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 木村医師はまず、「私が最も言いたいこと」として「感染者数が増えたことで皆さんも非常に不安になっておられると思うが、国民ひとりひとりが本当に頑張って感染防止に努めてきたおかげで、日本はG7の中の優等生だ。第1波、第2波、第3波と言っているが、これらも欧米に比べれば“さざ波”みたいなものだ。ただし、さざ波であっても重症者数は増える。昨年の春以降、国や医師会は国民の頑張りに応えて、医療を総力戦の体制にしておくべきだった。私は厚生労働省にいたし、医師でもあるので、非常に憤りを感じている」と指摘する。

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 「そもそも日本には世界で最も多い160万の病床がある。しかし、新型コロナウイルスに対応できる病床数はわずか3万、つまり2%に過ぎなかった。他の国々は日本の100倍の感染者数を抱えながらも医療崩壊を起こしていない。10兆円程度の真水のお金もあるわけだから、医師が足りないのであれば、監督官庁である厚労省は基金を作るといった努力をすべきだった。あるいは現場が回るよう、呼吸器を使える開業医が数ヶ月間クリニックを留守にしても大丈夫なような手当てをすべきだった。冬になれば再び感染者数が増えるということは3月から分かっていたのに、こういう宿題をやるのを怠ってきた。そのツケは国民が払わなくてはならないし、厚労省と日本医師会は謝罪してしかるべきだ。そして、最も困るのが飲食業や旅行業者だ。休業要請というのは、何か悪いことをした人に対して行われるもの。何もしていないのに強制的に自粛させられるというのは非常に辛いことだ。ぜひとも手厚い補償をしていただきたい」。

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 その上で木村医師は緊急事態宣言の再発出について「出してほしくはない。しかし、残念ながら病床数を増やすことも、呼吸器を扱える医師を増やすことも簡単にはできない。それでもワクチンができてくる春まで、なんとか乗り越えないといけない。やはりそのためには国民は自粛をしなければならないということだ」と話し、発出後に考えられる施策として、「地域間搬送」と「高齢者対策」を挙げる。

 「例えば北海道や大阪府では医療が逼迫しているが、そうでない地域もある。昨年春にイタリアが医療崩壊を起こした時には、ドイツが重症者を引き受けた。最近でも、スウェーデンの重症者をノルウェーが引き受けようとしているという話もある。日本においても近隣の自治体同士では行われているが、遠くになれば自衛隊のヘリを使わなければならなってくる。そこは早急に考えなければならない。また、高齢者に重症化リスクがあることは明らかなので、なるべく外に出ないようにしてもらわなければならない。我慢を強いることになる以上、国や地方自治体は宅配サービスの充実や、体力が落ちてしまわないようなトレーニングの提供など、対策を講じてほしい。そのためのアイデアは、懸賞金を出してでも募るべきだ」。

■「ウイルスから完全に逃げきることはできない」

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 私権の制限に繋がる性格を有する「営業時短要請」や「外出自粛要請」、そして緊急事態宣言を求める声が、いわゆる「リベラル」派や「リベラル」政党から上っていることに対する疑問の声も根強い

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「“感染が広がってきたから再び緊急事態宣言を出せ”と騒ぐのは、幼稚園児でもできる。ここまで我々は強制力を伴わない形でなんとかやってきたし、この民間の力、国民の力を信じるべきだ。それでも、いわゆる“パターナリズム”、つまり、“お上が何かやってくれるから、それに従っていれば助かる”という発想が日本には常に存在している。確かにヨーロッパのようなロックダウンをかければ効果は大きいだろうが、今以上の強制力を伴う施策を受け入れてしまうのは、日本の民主主義の根幹にも関わることになる」と指摘。

 「『BuzzFeed Japan』の岩永直子記者による、京都大学の西浦博教授のインタビュー記事を読むと、飲食店への対策だけでは、R(=実効再生産数、1人の感染者が平均で何人に感染させるか)の値が十分には下がらず、1程度にとどまるというシミュレーション結果になっているという。つまり、今より増えはしないが、感染そのものは続くということだ。徹底的にやろうとするなら、韓国、中国、台湾のような東アジアの国々のように、個人の移動情報を追跡するといったことも考えられる。しかし、それは民主主義国家ではない。一方、フランスやイタリアなど普遍的なリベラリズムが根付いたヨーロッパの国々では、人々が“基本的人権である個人の自由を奪うな”と主張した結果、感染爆発が起き、ロックダウンによってそれを奪われるという矛盾した状況も起きている。では、日本はいかに“第三の道”を行くのか。そこまで視野を広げて議論してほしい」。

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 木村医師は「いわゆる第1波といわれた春、夏の頃は人々の行動を抑えることで感染者数は減った。しかしウイルスの感染力が強まる冬になると、行動を抑えても陽性者数が減ってきていない。今回の緊急事態宣言によって一時的に減ったり、春、夏にかけてウイルスの感染力が弱まったりしても、ウイルスそのものが簡単に消えるわけではないし、感染はまた広がってくる。早期発見・早期封じ込めをすればウイルスがなくなると思っている方もいるようだが、それは違う。感染症というのは、逃げれば逃げるほど襲ってくるものだし、完全に逃げきることはできない。実際、あれだけの監視社会である中国であっても広がってきている。

 大切なのは、ここから医療体制を立て直していくことだ。こういうことを何度も繰り返していれば、医療崩壊だけでなく“居酒屋崩壊”が起き、社会経済活動が立ち行かなくなってしまう。そうなれば失業者、自殺者も増えるだろうし、社会不安が増大する。緊急事態宣言や自粛というのは、そういうところまで考えなければならないものだ」と訴えた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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