BACKSTAGE TALK #15 Young zetton
AbemaMix出演の合間に、HIPHOPライター コマツ ショウゴがアーティストにインタビューを実施!
ココでしか聞けないBACKSTAGE TALKをお届けします!
—まず、ラップを始めた経緯から教えてください。
Young zetton:最初は、『(BAZOOKA!!! )高校生ラップ選手権』を観て、フリースタイルってカッコええなって友達と話していて、それから始めたんですよ。フリースタイルをやっているうちにいろんなラッパーと出会って、ライブを見に行くようになったら、改めてカッコええなって思って。本気で音楽に取り組むようになったのは21歳から。
—それまではどんな音楽を聴いていたんですか?
Young zetton:友達と一緒に遊んでいる時、ANARCHYさんの曲とかみんなで聴いていました。クラブで遊んでいたりもしていたんで、HIPHOPは割と身近にあって。子どもの頃は、変な音楽ばっかり聴いていたんですよ。
【映像】Young zetton AbemaMix ライブパフォーマンス
—変な音楽? 例えば?
Young zetton:僕、小学生からカポエラをやってたんですけど、ビリンバウっていうカポエラで使う楽器があるんですよ。それをウォークマンで聴いていました。
—ブラジルの民族音楽みたいな?
Young zetton:そうそう。あとは、エレキギターを触っていたこともあって、Deep Purpleもずっと聴いていました。
—なるほど。Young zettonさんの楽曲やスタイルから、HIPHOP以外のエッセンスを感じる所以は、その影響もあるんですかね。ご自身で、ラッパーではなく、アーティストとおっしゃっていますし。
Young zetton:勝手な偏見かもしれないですけど、ラッパーにはラッパーのルールや型みたいなものがあるじゃないですか。そういうのが苦手で。僕は僕。表現者やから。ラッパーにだけカテゴライズされたくないからアーティストと名乗っています。曲もラップだけじゃないですし。
—昨年12月に、EP『Delicate(feat.Homunculu$)』をリリースしました。昨年は、短スパンでリリースを重ねていましたね。
Young zetton:はい。いい曲をたくさん作ってリリースすることを心がけていました。
—ビートメイカーのHomunculu$さんとの合作ですが、以前から一緒に制作していますよね。
Young zetton:彼と同い年なんですよ。Homunculu$は和歌山に住んでいるんですけど、僕が下手くそな時からサポートしてくれているから、信用できると言うか。間違いないビートを送ってくれるから、ずっと一緒にやりたいなって思っていたんですよ。それを伝えたら、Homunculu$もそう思ってくれていたみたいで、今回一緒にEPを作ってみました。
—5曲を収録したEPでしたが、ビートは何曲くらいの中から選出したんですか?
Young zetton:確か7曲。彼は自分のビートに自信を持っているから、送ったビートを返却させないんですよ。これで作って、みたいな(笑)。その中で、どうしても今回作りたい楽曲に合わないビートが2曲あったから、それは別のタイミングで使うことになりました。
—ビートを聴いた印象はいかがでした?
Young zetton:こういうビートを使いたいって抽象的なイメージを伝えたんですけど、ズバッと当ててくれたんですよ。日本のシーンではあまり使われていない、別のジャンルを組み合わせたビートでした。ドリルとメタルだったり、ドリルとU.K.のガレージロックだったり、うまくミックスしていて。それを聞いて、気持ちがフレッシュになりました。
—ラッパーという肩書きに括られたくない、という心情にマッチしたのかもしれませんね。
Young zetton:そうですね。ロックを押し出していきたかったので、メタルやガレージロックをミックスさせていたのは良かった。
—リリックにも、“ロックスター”と入っていましたね。
Young zetton:自分に自信を持ってロックスターって言える人は、全員ロックスターだと思うんですよ。マインド的な問題。だから僕も、自分に自信があるという気持ちを込めてリリックにしています。
—生き様と言うか。
Young zetton:そうですね。感情です。小学生がベッドの上に寝転びながらヘッドホンをつけて、爆音で音楽を聴いて、ロックスターになりきっている感覚かもしれません。
—EPのタイトルが『Delicate』ですけど、先に決めていましたか?
Young zetton:いいえ、完成してからタイトルをつけました。俺ってデリケートやなって思って。
—と言うと?
Young zetton:友達と喧嘩しちゃって、結構傷ついたんですよ。例えば、SNSで知らない人に中傷されても全然気にしないんですけど、友達との喧嘩は尾を引いちゃって。冷静に考えると、俺って繊細だったんやなって気づいたんですよね。それがちょうど制作期間だったので、タイトルに設定しました。
—改めて自分に気づいたということですね。曲順にこだわりは?
Young zetton:一番聴かせたい曲を最初に置いて、あとは流れです。順番に聴いていっておもしろく感じるようにしました。
—その1曲目は「priceless」。
Young zetton:今まで叫ぶ曲が多かったので、ラップの技術的な部分を曲にできていませんでした。その新鮮味を感じてもらいやすいのが「priceless」でした。
—2曲目の「真・物語」にある、“シャウトも武器だがこのラップも十分聴かせれんだ”というリリックでも、それを示していますね。そして3曲目の「Initial XIII」ではJin Doggさんをフィーチャリングに迎えています。
Young zetton:Jin Doggさんはラップを始める前からずっと見とって。めっちゃカッコええなって憧れはありましたし、今でもその気持ちは変わりません。一緒に曲作りをすると、めちゃくちゃ刺激を受けるんですよ。一緒にライブをしてみると、パフォーマンスも上手って気づきますし。連絡の返信がマイペースだから、たまに心配になります(笑)。
—(笑)。リリックの世界観を築く上で、刺激を受けるものは?
Young zetton:この瞬間も含めて、全部です。車に乗っている時、ご飯を食べている時、遊んでいる時、ライブをしている時、全部がインスピレーション。それを感じて、なにか正解を導き出そうと常に思っているんですよ。その答えとなる意思表示こそが、リリックだと思っています。
—日常のすべてがインプットで、そのアウトプットこそがリリックということですね。他に曲作りで大事にしていることはありますか?
Young zetton:固定観念をなくすことですかね。HIPHOPの考え方っていろいろあると思うんですけど、それを抜きに考えて作るようにしています。フリーな状態で、自分が作りたい曲を作るだけって言うか……。絶対、みんな気づくと思うんですよ。その枠に括られていなくてもいいって。HIPHOPも進化し続けているので、ずっとそのままである必要もないなって思いますし。それの先駆者になりたいんですよね。ステレオタイプなイメージを壊して、もっと自由に。
—柔軟に曲を作っていれば、誰かがそれを新たなジャンルとして定義するかもしれませんね。
Young zetton:それが目標です。そのために、今はシンプルに制作を続けていきたいです。去年は世間的にはいろいろありましたけど、自分的にはいい1年でした。失敗もありましたけど、着実に思った方向に進めているので。
—最後に、今年はどんな1年にしたいですか?
Young zetton:あまり決めないんですよね。とりあえず目の前のことをこなしていって、自分でやるべきことを引っ張り出して、またこなして。今までの何倍もかましたいと思っています。