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 「この役をどうしてもやりたい」俳優・磯村勇斗がそう使命感を感じ挑んだ映画『ヤクザと家族 The Family』が1月29日(金)より全国公開される。同作のメガホンをとったのは『新聞記者』の藤井道人監督。磯村は、地方都市で半グレ集団のリーダーとして生きる青年・木村翼を演じ、父を覚せい剤で失った過去を持つ柴咲組の組員・山本賢治役の綾野剛、柴咲組の組長・柴咲博役の舘ひろしと出演を果たす。

 ドラマ「今日から俺は!!」(日本テレビ系)では極悪非道なヤンキーを、「きのう何食べた?」(テレビ東京)では年上の恋人を翻弄するワガママな同性愛の少年“ジルベール”を、「恋する母たち」(TBS系)では既婚者の上司に積極的なアプローチで迫る年下イケメンを演じるなど、幅広いキャラクターを魅力的に演じあげ “カメレオン俳優”として注目を集める磯村は今回、どのような顔を見せているのか。そして本作に惹かれた理由とは。話を聞いてきた。

「自分を崩してもらえるような作品と出会いたいと思っていた」

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――出演が決まったときの気持ちを教えてください。

磯村:役が決まる前に監督と面談をして、そのときに事前に台本を読んで運命的なものを、「この役は何がなんでも自分がやりたい、やらなければ」という使命感を感じました。ロケ場所が自分の地元・沼津ということもありましたし、翼という役自体にも惹かれました。柴咲組やケン兄(綾野剛)が残してきたものを未来につなげていくという大事な役柄だったので、高い壁のある難しい役柄だと思ったのですが、やりたいという思いが強く湧いてきて、監督にその熱意を伝えました。それで受かったので、ものすごく嬉しかったです。

――運命を感じたというのはやはり地元がロケ現場であるという部分が大きいのでしょうか?

磯村:はい。沼津、富士をピンポイントで使うロケ地というのはなかなかないので。

あと、成長できるような、自分を崩してもらえるような作品と出会いたいとも思っていたので、そのタイミングで藤井監督と綾野さんがタッグを組んだこの作品に出会えてよかったです。これまで藤井監督の作品も見てきましたし、綾野さんの今まで歩んできたような作品のテイスト、いわゆる骨太な映画を僕も経験したいという思いがありました。

――磯村さんはもともと今回のようなヤクザ映画への出演にも興味があったのでしょうか?

磯村:昭和の仁侠映画は好きでした。今の時代とは全く違う描き方がされていて、かっこよさや渋さも今のそれとは違って興味がありました。あの当時の菅原文太さん、松方弘樹さん、ああいう人たちにはなれないだろうなと思いますけど(笑)。本物に見えてしまうような凄みがあって、やはり男としてはかっこいいなと思います。なので、現代のこういった作品には出たいと思っていました。

登場シーンで見せた説得力ある漢の身体

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――翼はどんな人間だと捉えましたか?

磯村:翼は自分が生きてきた場所を大事にしていて、そこでしか生きていけないという儚さがある。横のつながりの仲間たちを大事にしているけれど、それはケン兄や柴咲組によくしてもらった感謝からくるものでもある。でも、別にヤクザというものをいいとも思ってないし、否定するにも否定できない関係値。そういう複雑なものを抱えながら、ヤクザや街の変化を見てきた、心が繊細だけど意外にクレバーな人だと思いました。

――そんな翼に磯村さんはどのようにアプローチしたのですか?

磯村:自分は半グレ集団に所属しているキャラクターだったので、半グレという集団については調べました。資料は事前にいただいたりしましたけど、半グレは今の時代に生まれた新しいものなので、ヤンチャ色の強い過去の作品を見るというよりも、その人たちのリアルな生涯みたいなものを調べていました。

綾野さんや藤井監督が作る空気感にも助けられました。綾野さんはただいるだけでケン兄だったので、自分も一緒にいると自然と翼になることができました。

あと、自分が沼津出身ということもよかったです。地元の空気を知っていて、あの土地で幼い頃過ごしてきた記憶が翼のバックボーンになりました。

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――登場シーンからかっこいい肉体を披露していましたね。映画に向けて調整されましたか?

磯村:自分の人生で初めて体づくり、減量をしました。(体重を)減らしながら(筋肉を)増やすという無茶なことをやっていたんですけど、「登場シーンでしっかり身体を見せとけば、翼のキャラクターが観客にも見える」と監督から言われていたので頑張りました。

――目標数値があったのでしょうか?

磯村:数字ではなかったんですけど、こういうイメージでという画像は送られてきました。韓国の俳優さんのような、しっかり胸筋がある感じが理想でした。なので、結構頑張らなきゃなと、正直時間が足りないなと思ったんですけど、そこに近づける最大の努力をしました。

1ヶ月程度しか期間がなかったのですが、そこから体重を増やして筋肉に変えて、脂肪を落とす作業をしていたらあと2ヶ月くらい必要だったので、同時に筋肉を増やしながら脂肪を減らすという、体がわけわからなくなるような作業をしました(笑)。筋トレをひたすらやって、量はしっかり食べるんですけど、脂肪は取らないようにしていました。

「何かを教えてもらうというよりは、感じ取って」主演・綾野剛のたたずまい

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――現場で先輩方から刺激を受けたことはありますか?

磯村:たくさん受けました。特に綾野さんとは同じシーンが多かったので、綾野さんの主演としての立ち振る舞いや、共演者やスタッフさんへの気遣いを間近で見させていただきました。そして、ただケン兄として存在しているだけで感じるオーラ。何かを教えてもらうというよりは、感じ取ってくれという感じでした。綾野さんは芝居のテイストを変えてきたり、演技を調整していたので、それに自分は合わせられるかというのが課題でもあり楽しみでもありました。

バーのシーンで、綾野さんから「翼なら、こう動いたほうがいいんじゃないか」というアドバイスをいただきました。そういうことがケン兄に重なっていい関係値が築けたのではないかと思います。

――綾野さんは自分の役以外のキャラクターについても考えていたんですね。現場の雰囲気はどういったものだったんでしょうか?

磯村:基本楽しいシーンがないので現場はピリッとしていました。加藤組の豊原(功補)さんはずっと怒ってる役柄でしたから、ずっとそんな空気の中、演じていました。本番に入ると、どっちが目線を先に外すのかみたいな空気がありました。その圧はすごく強かったです(笑)。気持ちをのせていただきました。

――舘ひろしさんにはどのような印象を持たれましたか?

磯村:舘さんはすごく華がある人だと思います。映画の最初の全盛期の頃の人情と色気のある組長、そこから衰退しておじいちゃんになっていく姿というのは、お芝居ですけど、悲しくなる。本当に年老いたなという説得力がありました。最初と最後の笑顔が同じ表情なのに全然違う。その使い分けがすごいと思いました。

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――最後に本作の見所をお願いします。

磯村:この映画は、ヤクザというものの全盛期から衰退していくというストーリーでありながら、“家族”にフォーカスを置いている作品です。ヤクザ映画なのに暖かくて、遠くの存在に感じるヤクザも一人の人間なんだと改めて感じられると思います。

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ストーリー

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 1999 年、父親を覚せい剤で失った山本賢治(綾野剛)は、柴咲組組長・柴咲博(舘ひろし)の危機を救う。その日暮らしの生活を送り、自暴自棄になっていた山本に柴咲は手を差し伸べ、2人は父子の契りを結ぶ。2005 年、短気ながら一本気な性格の山本は、ヤクザの世界で男を上げ、さまざまな出会いと別れの中で、自分の「家族」「ファミリー」を守るためにある決断をする。2019年、14年の出所を終えた山本が直面したのは、暴対法の影響でかつての隆盛の影もなくなった柴咲組の姿だった。

スタイリスト:齋藤良介

ヘアメイク:佐藤友勝

写真:You Ishii

テキスト:堤茜子

(C)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

映画『ヤクザと家族 The Family』| 1月29日(金)全国公開
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