「罰則で脅して、という議論に怖さを感じる」「なぜ憲法学者たちは声を上げない?」従わない店名の公表や入院拒否患者への懲役刑に橋下氏が強い懸念
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 元自治体の首長経験者である東国原英夫氏と橋下徹氏が16日のABEMANewsBAR橋下』に出演。都道府県知事が休業や営業時間短縮の要請に応じない飲食店の名前を公表できるよう関係する政令を改正ことや、通常国会に新型コロナウイルスに感染した患者が入院先から逃げ出した場合に刑事罰を科すことなどを盛り込んだ感染症法の改正案が提出されることについて議論した。

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■「罰則で脅して休業させようという議論になってきている」

 まず、元宮崎県知事の東国原英夫氏は「致し方ない」との立場を示す。

 「全国知事会も休業要請に対して罰則と補償をセットにした法改正を求めたが、現場を経験した人間からすると、これくらいの武器はほしい。行政には“うちは自粛したけれど、あそこは開いてる。おかしいじゃないですか”という意見がどうしても来てしまうし、その時に“罰則規定がありますから”というエクスキューズができるのは大きい。刑事罰ではなく、過料なので前科もつかない。ただし、公表というのは“ここに危険がありますよ、みなさん気をつけてくださいね”というのが主旨であって、晒し者、批判の的にしてしまってはいけない。去年、店名公表されたパチンコ屋さんが叩かれたようにマスコミの問題もあると思うけれど、だからこそ補償もセットだし、要請、指示、勧告、それでも守らなかったら立ち入り、命令、そして最後に公表、というくらいにしないといけない」。

 一方、橋下氏は「いざという時には政治権力が国民に義務を課さなければ有事は乗り切れないと思う」としながらも、次のように懸念を示す。

 「身体を拘束する自由刑と、お金を取る罰金、これが今の法体系の中での罰則だ。つまり名前の公表は、制裁には使われないもの。しかも今はSNSの時代なので、とてつもない社会的制裁が加わる。誹謗中傷問題が散々議論されているけれど、このことも注意しなければいけない。もちろん首長としては強い武器になるし、僕も知事の立場だったらありがたいと思ったかもしれない。でも今は一人の国民として、そういうことが濫用気味になっているんじゃないのかという不安、恐ろしさがある。

 もともと“補償金を使って休んでくださいね“という主旨だったのが、新聞の社説なんかを読んでいても“50万円で効き目があるのか。罰で休業させよう“という感じがして、議論がちょっとおかしくなってきていると思う。憲法29条3項に定められているように、営業の自由を侵害する場合には正当な補償をしなければならない。お店は別に違法行為をしているわけではないし、そこに感染者がいるかどうかも分からない。社会防衛のため、やむを得ず犠牲になってもらうわけだから、補償が必要になる。僕が去年の3月、4月から“罰則と補償はワンセットだ“と言ってきたのも、法律に補償金というものを明記しようとするなら、お願いベースではなく強制的な休業に伴うものになる。だからこそ過料のようにちょっとでもいいから罰則をつけ、強制だという位置付けにしなければならないということだ。それがいつの間にか、罰則で脅して休業させようという議論になってきている」。

■「なぜ憲法学者たちは声を上げない?」

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 また、先週開かれた専門家らによる厚生労働省の部会では感染症法の改正案が示された。そこには患者が入院先から逃げ出した場合に懲役や罰金などの刑事罰を科すことや 自治体の宿泊療養の要請に応じない感染者には知事が入院を勧告できるようにすることなども盛り込まれている。

 東国原氏は「僕は刑事罰も仕方がないのかなと思う。指定感染症というのは死に直結する場合もあり、非常に社会的な影響が大きいもの。これは厳格に扱わないといけないし、本気でやるのであれば感染症法等は見直さなければいけないと思っている。橋下さんがおっしゃった通り、例えば道路を通す時、そこにいらっしゃる人たちに公共の福祉のために退去してもらわなければならない場合がある。その時には補償を出すというのが基本だ。同時に、ルールを守らない人がいた場合には、やっぱり社会的な制裁も必要なんじゃないか」と話す。

 「ただし、欧米の先進国では有事法制があるので、外出禁止令を出して、守らない人間には罰則。しかし日本にはそれがない。一方で、NHKの世論調査を見てびっくりしたのは、“私権制限もあり”と答えた人が86%に達している。こういう考え方の人が増えるのは、かつての日本のように、権力の暴走を招くという危ない側面もある」。

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 橋下氏は「患者には入院もしてもらわないといけないとは思うけれど、正当な理由がある場合には拒絶もできるということにしておかないといけない。身体を拘束されたり、移動の自由を奪われたりするというのは、とてつもない人権侵害だ。だから刑事事件を犯した人だけが刑務所に入れられるという具合に、憲法でも身体の自由を奪われるのは例外中の例外という考え方になっている。色んな事件を見てきた経験からしても、通常の感染症法の中で罰則つきで入院を強制するというのは、まずい方法じゃないか」と指摘する。

 「まさに憲法改正論議で緊急事態条項の話が出ているが、この国は例外的なことをやらざるを得ない“有事”と“平時”との切り替えができない。いよいよ感染者を拘束しないといけないくらいの有事の際には地域ごとに法的根拠ありの緊急事態宣言を出して、休業や入院の義務を生じさせる必要がある。医療機関も、通常の診療に支障をきたしたとしても感染症の対応にシフトさせていく。もちろん、いずれも補償つきだ。緊急事態宣言というのは、本来そういう性格のものでなければならない。平時の状態、しかも一般法で権利を罰則つきで制限していくというのは危ない方向だ。

 去年3月、本当に使えないポンコツの特措法を適用する時ですら、憲法学者を始めとして学者の方たちは“人権侵害だ”とか大騒ぎしていたのに、今回は“自由にとって危ないことだぞ”という声を挙げない。むしろ僕みたいに“権利の制限をし過ぎじゃないか”と言った方が“お前、感染症のことをどう考えてんだ”みたいに言われる。戦時体制の時というのは、こんな感じなのかなと思う。“危ない、危ない。だから従え”みたいな感じでワーっと雪崩れていく。義務は必要だし、いざという時には権力も使わないといけないと思うが、それはきちんと、有事と平時を切り分けて、政治が責任を持ってやる。その区分けが必要だ」。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)

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