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 映画『名も無き世界のエンドロール』主演の岩田剛典は、作品への思い入れや、演じた人物像の詳細、共演者とのエピソードなど、インタビューで饒舌に語った。質問に対して、冗談を挟みながら答え、ときには「う~ん」と少し考えた後に自身の正解を導き出したりなど、それは見慣れた光景のはずだった。

 しかし、この日は俳優としての彼の顔に少し驚かされるところもあった。

 岩田が所属する三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEは、2020年11月10日でデビュー10周年を迎えた。本取材は、メモリアルな10周年、一夜限りの特別なライブを行った数日後、そんなタイミングで行われた。まだ興奮冷めやらぬはず、体に余韻も残っているかもしれない、というこちらの推察を鮮やかに裏切るように、岩田は現場で俳優としての穏やかな表情しか見せなかった。10年積み上げた彼のキャリアが、瞬時に俳優モードに切り替わるようになっているのだろう。

▶映像:三代目JSB 10周年記念 「LIVE×ONLINE“JSB HISTORY”」舞台裏にも密着

 取材も佳境に入ったところで、ライブについて、たまらず聞いた。すると、岩田は「いや~」と目をキュッと細くし、「一昨日ようやく観たんです。手前味噌ですけど、めっちゃよかった(笑)!」と、そのときだけアーティストの表情になり、三代目JSBへの思いも語り始めた。

 アーティストと俳優というふたつの顔を共存させ、シチュエーションで使い分けてきた10年。2021年、初めて送り出す1作『名も無き世界のエンドロール』、一方でライブ公演後に初めて胸に宿った思い…心も体も忙しなくめぐる、彼の気持ち、両面を聞いた。

モチベーション高く臨んだ『名も無き世界のエンドロール』、新田真剣佑との初共演

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――主演作『名も無き世界のエンドロール』を拝見し、衝撃を受けました。岩田さんは最初に原作/脚本を読んだとき、どのように感じましたか?

岩田: 僕も衝撃を受けました。こうしたトリックのある脚本は、とてもワクワクするんです。僕自身、韓国映画が好きなので、先の読めない展開が割と好きで。作品へのモチベーションもすごく高かったですね。

――岩田さんが演じるキダは、人のために生きるような男で、なかなか本心や実態を掴みづらそうな印象です。

岩田: キダはマコト(新田真剣佑)とヨッチ(山田杏奈)というふたりの幼なじみがいて、この物語は、主にキダ、マコトのことを描いているんですよね。そして、全員、身寄りがない。キダは親友であるマコトと久しぶりに再会して、マコトのために自分の時間を使うことが自分の人生だと思って、モチベーションにして生きていった人間だと思っていました。キダは自分の人生の目的を見つけられないままですけど、そんな中でも生活して生きていこう、という感じがぼんやりとあって。何となく、「大体みんなこんな感じじゃない?」と思ったんです。僕としては、キダはすごく人間っぽいなと。振り切らないし、白黒じゃなく、グレーを選んでしまう人間というか。弱いように見えるところが、キダの強さなのかなとも思いました。マコトは弱いから、その対比というストーリーかなと捉えていました。

――キダとマコトのバディ感について、どう深めていったんですか?

岩田: 意外と…あまり何をした、ということはなかったです。ストーリーを考えたら、トリック的なところをお客さん目線で楽しんでもらうには、前振りがどれだけ利いているかが肝心なんです。なので、振りの部分での回想シーン、学生時代や幼なじみ3人でいるシーンで、仲のよさがにじみ出るようにしっかり表現しないといけないな、という気持ちを持っていました。まっけんと芝居で「こうしたほうがいいんじゃない?」と言うのは、あまりなくて。ふたりとも狙いや、見えているゴールは割と一緒だったかな、という感じを現場では受けました。

――ちなみに、初対面のときはどんな感じだったんですか?新田さんの第一印象。

岩田: すごいさかのぼると、4年くらい前の日本アカデミー賞で、同じ新人賞を受賞したんです。だから、作品の前に会ったことはあったんですけど、そのときのまっけんは、まだ子どもというか(笑)。ビジュアルは爽やかですし、「フレッシュだな~」という印象だったかな?挨拶も含めて「元気!」でしたね。

――新田さんは、岩田さんに何かおっしゃっていましたか?

岩田: なんか、そういう(当時の)話もしましたね。「テレビで見る印象と変わらない」みたいなことを言っていたかな?年は違うんですけど、今回役柄のこともあって、僕は「敬語とかなしでいいから」という感じでいて。結構仲良くなれました。地方ロケだったし、何回かごはんにも行けたから、すごく楽しい撮影でした。

ふり幅のある役は「やっぱり面白い」し、いつかハードボイルドな役にも…

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――3人の中では、岩田さんが一番年上。岩田さんの高校生姿は『町田くんの世界』で見納めかと思っていましたが、おふたりとともにフレッシュ感をいかんなく発揮できましたか?

岩田: 僕だって、最後だと思ってましたよ!やらざるを得なかっただけです(笑)。シンプルに俺が高校生だと、「ストーリーが入ってこなくなる人がいるかな?」と心配になったので、できればやりたくないとは言ったんです。けど、ふたりが高校時代もやるのに、俺だけ違う人だと変だから、やるしかなかったというか。高校生に見えていたらいいんですけど…。

――岩田さんが高校時代も演じることで、現在のキダとのギャップが出たため、すごくよかったように感じました。現在のキダは交渉屋というミステリアスな職業でしたが、苦心した点はありましたか?高校時代から見て、非常にふり幅がありますよね

岩田: 確かに、そうですね。ふり幅がある役は、やっぱり面白いです。しかも、同じ作品の中で表現できるのは、なかなかないので。別人格になるくらいの気持ちで、とにかく差を出そうと思ってやってはいました。僕としては、台詞がないシーンで、表情だけで語らないといけないのが映画っぽくて好きでしたね。映像でも、コントラストをしっかり作っているじゃないですか。過去映像ではライティングを飛ばしていて、色みも明るい。現在だとずっと青みがかった色になっていて、「同じ映画なの?」と思うくらい、(わざと)全然色みが合っていない。はっきりわかりやすく変えているのは、映像として見やすいのかなと思っています。予告編を見ていてもわかるから、面白いですよね。

――ちなみに、今回、銃を構えたりもしていますね。

岩田: 僕、刑事役をやったことがないので、銃を撃ててよかったです(笑)。

――これから、そういう役もやっていきたいですか?

岩田: ああ、そうですね。拳銃を持つのは…でも日本だと、刑事か犯人になりますよね(笑)。ハードボイルドな方面もやってみたい気持ちはあるかな。

――韓国映画が好きというお話もありましたが、韓国映画はそのあたりでお家芸的なよさがありますよね。

岩田: 2000年代初頭の韓国映画が一番好きなんです。『殺人の追憶』、『チェイサー』はすごく好きで、『アジョシ』とかもいいですよね。救いようのない感じ…日本映画だと、やっぱりあまりない作品というか。日本だと、すごく年齢指定(レイティング)が上がってしまうと思うけど、ああいう韓国映画の表現の幅はすごく憧れます。シンプルにどの映画も脚本が面白い、プロフェッショナルですよね。

10周年特別ライブが終わった今、思うこと「あまりにも濃い10年、気持ちがひとつになった」

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――ところで、先日行われたばかりの『三代目 J SOUL BROTHERS 10th ANNIVERSARY~JSB HISTORY~』の感想も伺ってよろしいでしょうか?

岩田: いやあ、昨日の夜ようやく俺、観たんです。…手前味噌ですけど、めっちゃよかった(笑)!いいライブだったなって。みんなの表情がいつもと違いましたね。みんな、いい顔してたなあ。いい達成感、充実感のある表情だった。「このグループがすごく好きなんだな」と、改めて感じた1日でしたね。

――嘘か誠か、岩田さんが裏で号泣されたというお話を聞いたのですが。

岩田: 『次の時代へ』で僕が泣いたの、本当ですよ(笑)。本当に10年間って…あまりにも濃い10年間だったので、一昨日のライブは積み上げてきたものを感じました。すごく…何て言ったらいいのかな。メンバーひとり、ひとりに対しての感謝だけじゃなくて、なんか、いろいろな感情が、いろいろな思い出とともに蘇る感じがあって。正直メンバーひとり、ひとりの苦悩をわかっているから、こみ上げるものがあったというか。でもね、一昨日のライブで三代目の結束が1日でめちゃくちゃ強まりました、実は。

――さらに、ということでしょうか?

岩田: 気持ちがひとつになった感じが、すごくして。これからの活動が楽しみになった1日でした。10周年はひとつの節目だと思って、2020年はずっと活動してきたんですね。正直、「次はどういう風になりたいのか、どんな活動をしていきたいのか」ということへの明確な答えがないまま、やっていたんです。けど、一昨日のライブを経験したことによって、そういった「どこに向かう?」という次の方向性みたいなものが見えたなって。こんなに悩んでもしょうがなかったことなのに、1回ライブをやるだけで見えるものなんだ、という感覚に実はなりました。やってきた歴史がそう感じさせるのか…一昨日は大きな一歩だったんですよね。そこにグッときてしまいましたね。

――しかも、岩田さんおひとりの気持ちではなくて、7人が同じように心で感じていたことだったと。

岩田: そうですね。……みんな、もがき苦しんでグループにいるので。それがグッときちゃったな、うん。あと、あのライブはグループの10周年のお祝いもあるし、「JSB」という30年続くチームに、ちょっとでも関わったメンバー全員が集結して、お祝いしたわけじゃないですか。それってうちの会社っぽいなって(笑)。仲間だったり体育会系な感じ、絆は、ファンの人にも喜んでいただけたんじゃないかなと思いました。自分たちにとって集大成だったし、今までのベストライブだったのかなと思えましたね。

2021年、岩田剛典個人としての思い、三代目JSBメンバーとしての思いは?

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――2021年、思いを強固にした三代目JSBの活動がありながら、一方で岩田さん個人としては1月から主演作が公開される幸先のいいスタートです。それぞれの思いも伺いたいです。

岩田: まず岩田剛典個人から言うと、僕は世間からは物静かだと思われていると思いますが、すごく意志がはっきりしているし、常にマグロスタイルなんです。自分の活動やブランディングというか、自分をどうプロデュースするかという考えを、HIROさんにそのまま言うようにしています。ビジョン会議も毎年、正月早々に開いて、「今年こういう風にやっていくので、こういう風にスケジュールを空けてください」とか、「2年後にはこうなりたいので、そのための布石として今これをやらせてください」と、具体的に言っています。…で、「生意気だな」っていつも思われるんですけど(笑)。

――人にお任せしないで、自分で決めていかれる。

岩田: そうやっていないと、なんか…僕が不安で押しつぶされちゃいそうだから。今の環境や状態、自分の立場は、基本的にいくらでも代わりがいると思っているんです。自分が常に成長、進化しないといけないと思うし、まだまだ伸びしろがあると自分の可能性に賭けていたい。これまで、多くのチャンスを失っているのでは、と思うこともあって。でも、チャンスを失ってきた分、得られたチャンスに対しては、100%結果をしっかりとついてこさせないといけないと思っているんです。

2020年はたくさん時間があった分、自分の将来や人生について見つめ直せました。具体的に、次どういうチャレンジをするかを、頭の中ではまとめられたんです。2021年からは実行に移すだけだなと思っています。

――三代目JSBのメンバーとしては、どのような展望や思いをお持ちですか?

岩田: グループは僕の人生というか、ある意味ライフワークなんですね。やっぱり目の前のことに、1年1年取り組んでいくことが、僕にとっても、みんなにとってもいいのかなと思っています。全員が結局グループに生かされているので、1年でも長く輝き続けられる環境作りを「自分たちで作り出していかないといけないね」という話をしていますし。

今すごくグループが前向きに、一丸となっているので、めちゃくちゃ状態がいいんですよ。10年たって、完璧なチームになれたなと本当に思っています。穴がないとでも言うのかな?僕もできないことはいっぱいあるけど、誰かができないことを誰かが補えるようなチームワークができました。そこは本当に誇りに思います。10年間やってきて、メンバーみんなのことをリスペクトしているし、そう思える環境が、やっぱりめっちゃ素敵だなって。もっともっと三代目として輝きたい思いがあります。

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取材・文:赤山恭子

写真:You Ishii

■映画『名も無き世界のエンドロール』

【あらすじ】クリスマス・イブの夜。日本中を巻き込んだ、ある壮大な計画が実行されようとしていた―。

 複雑な家庭環境で育ち、さみしさを抱えて生きてきたキダとマコトは幼なじみ。そこに同じ境遇の転校生・ヨッチも加わり、3人は支え合いながら家族よりも大切な仲間となった。しかし20歳の時に、訳あってヨッチは2人の元から突然いなくなってしまう。そんな彼らの元に、政治家令嬢で、芸能界で活躍するトップモデルのリサが現れる。リサに異常な興味を持ったマコトは、食事に誘うが、全く相手にされない。キダは「住む世界が違うから諦めろ」と忠告するが、マコトは仕事を辞めて忽然と姿を消してしまう。2年後。マコトを捜すために裏社会にまで潜り込んだキダは、ようやく再会を果たす。マコトは、リサにふさわしい男になるために、死に物狂いで金を稼いでいた。マコトの執念とその理由を知ったキダは、親友のため命をかけて協力することを誓う。以来、キダは〈交渉屋〉として、マコトは〈会社経営者〉として、裏と表の社会でのし上がっていく。そして、迎えたクリスマス・イブの夜。マコトはキダの力を借りてプロポーズを決行しようとする。しかし実はそれは、10年もの歳月を費やして2人が企てた、日本中を巻き込む“ある壮大な計画”だった─。

岩田剛典、新田真剣佑

山田杏奈、中村アン / 石丸謙二郎、大友康平柄本明

監督:佐藤祐市 脚本:西条みつとし

原作:行成薫「名も無き世界のエンドロール」(集英社文庫) 

配給:エイベックス・ピクチャーズ

©行成薫/集英社 ©映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会

1月29日(金)より全国公開

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