2020年をもって解散したE-girlsのメンバーで、現在は女優として活動している山口乃々華。2月4日(月)には、初の書籍『ののペディア 心の記憶』も発売し、新たな船出に乗り出している。
本書は、2019年3月にスタートした女性誌『GINGER』のWEBメディアで連載したエッセイ『ののペディア』をもとに、新たに書き下ろした文章や撮りおろしの写真もまじえ、読み応えのある内容に構成されている。エッセイでは、山口が「今、心に留まっているキーワード」について、<【あ】歩く>から<【わ】わたし>まで50音順に記しており、新たに書き下ろされた【E】ではE-girlsについて感じていることを、素直な言葉で綴った。
取材日、「お願いします!」と現場に現れた山口は、キラキラした瞳と晴れやかな笑顔でハッピーなオーラを纏っていた。やわらかく、汚れのない雰囲気の中に芯の強さがほのかに見える。彼女自身の印象は、文体のそれに表されていた。インタビューでも、自身について、てらいなく語ってくれた。
背伸びしないで、等身大の自分を表現したエッセイ「すごく気に入っています」
――『ののペディア 心の記憶』の発売、おめでとうございます。新しく書き下ろしたパートも含め、どういう気持ちで綴っていったんでしょうか?
山口: ありがとうございます。今回、書き足した「はじめに」は、『ののペディア』を始めるにあたって、3年ほどやっていた日記を思い返して書きました。もうひとつの「おわりに」は、最後の最後に書いたんです。手を差し伸べてくれたスタッフさんがいなかったら、「こういうふうに思うこともなかったな」ということ、私の周りには本当にたくさんの人がいて、この1冊ができたことを思いながら、書かせていただきました。
――連載中、【あ】~【わ】については、どのように書き進めていたんですか?
山口: 生きていると、日々、本当にいろいろなことがあるじゃないですか。そうした自分の気持ちの整理をするために、書かせていただくこともありました。17~20歳の頃、自分では解決できなかった悩みを、もう1回掘り起こして書いてみることで「どこに落とし込めるか」みたいなところも見つけることができました。心の掃除の作業というか、整理整頓のような気持ちで書いていましたね。
――通常、エッセイを書く場合、何をどこまで吐き出すかの判断も重要かと思います。そのあたり、どう捉えていましたか?
山口: 直接的に言いすぎるような文章は…と思うので、そこは担当者さんに、「これだとちょっと前向きさに欠けちゃうね。どうしたら前向きになれるかな、というところまで考えてみよう!」と、適宜アドバイスをいただいていました。悩んでいる内容を書いていたとしても、そのゴールは常に前向きであるようにと、意識していたんです。ゴールまでの道のりを、みんなと一緒に考えていけたらいいなって思っていたので。読んで頂いている方が、一緒に共感してくれて、「ああ、じゃあ私の悩みも、こうなのかもしれないな」と、ご自身の問題の解決にもなったらいいな、と思っていました。
――なるほど。だから、心が温まるような本に仕上がっているんですね。ほかに編集さんからアドバイスされたことなど、ありますか?
山口: 連載にあたって、「背伸びしたことは書かないでいいよ」と言ってくださいました。なんか…書いたものを誰かに読んでもらうと思うと、ちょっとかっこいいことを書きたくなっちゃうので(笑)。けど、背伸びしないで書かせていただきました。素直な気持ちを書いているから、後から読んでも恥ずかしくないのかなって。そこが、私の中ですごく気に入ってる『ののペディア』の部分です。
連載中は、ちょくちょくE-girlsのメンバーから、「読んだよ!」と言ってもらっていました。中でも、鷲尾伶菜さんがすごく気に入ってくれていて、「乃々華ちゃんの連載、めっちゃいいよね~」と、よく言ってくれていたのも、恥ずかしかったけど嬉しかった思い出です。
心の中にある思い「どこかでずっとE-girlsではいたい」
――『ののペディア』では、撮りおろしの写真も素敵です。どんなイメージで撮影に臨みましたか?
山口: ロケーションを「どこにしますか?」と聞かれたとき、『ののペディア』の中に書いてある、いっぱい歩いた道や、行った場所で撮りたいなと思いました。だから、ロケ地は親しみのある場所を選びました。写真自体は、本当に素敵にオシャレにしてくださって…。こだわりで言うと、洋服は全部私服なんです。自分のいろいろなものが染み込んだ服のほうが、『ののペディア』には合っているかなと思ったので、自前にしました!
――そして、書き下ろしたE-girlsの【E】についても伺いたいです。どのような気持ちを込めて書いたんでしょうか?
山口: 書いていた当時は、ラストライブのリハーサル期間でした。なんか本当に…絶対に、適当には書きたくないという思いはあったので、E-girlsが作ってきた作品もちゃんと見返してから書こう、と決めていました。だからこそ、すんなりとは書けませんでした。
私にとってE-girlsは、本当に当たり前にありすぎて、「何がいなくなって、何が増えるんだろう?何なんだろう?」と、ずっとわからなかったんです。それを適当にせずに、丁寧に、自分の当たり前にあるE-girlsを感じながら、全部を大事にしながら書きました。E-girlsを離れてみないと、E-girlsが私にとって何だったのかはわからないので、エッセイの中では「未来への宿題」とも書きました。なので、そのときの自分がしっかり出せています。想いの詰まった回にはなりました。
――E-girlsでの活動や作品を見返していたときは、どんな思いになりましたか?
山口: すごく華やかな世界にいさせてもらえてたんだな、と改めて感じました。ライブのDVDを見ていても「何だ、この広さ?」、「何だ、この人数は!?」というぐらいお客さんがいて、派手な演出があって、衣装が何回も変わっていたりして。「E-girlsってすごく華やかだな」と思うと同時に、「辛かったな」って(笑)。やっぱりその時期は、学校にも通っていましたし、一番忙しくて。石井杏奈と武部柚那が一緒だったから、何とか支え合えてやってこれました。…私にとってE-girlsは、本当にサバイバルだったかもしれない、です(笑)。
――ドキュメンタリー番組『LAST E-girls~ありがとう、新たな道へ。~』では、石井さんとのトークの中で、「解散後も、ある意味ずっとグループかもね」と言い合っていましたよね。その心境に変化はないですか?
山口: ああ、変わらないかもしれないです。染みついているから離れないという意味では、本当にそうだなと思うんです。学校みたいに行かなくなる、とかじゃない。パタンと終わって、新しいことが始まるというよりも、ずっと染み込んでいるものがやっぱりあって。本当に濃い時間だったので…土台というか、確かにずっとE-girlsなのかもなって。そうでいたいし、そういう気持ちは忘れたくないな、と思っています。
E-girlsには初心が詰まっていますし、私たちの生き方や、「どうしていったら夢は叶うんだろう?」というプロセスみたいなものを、いっぱい学んできました。それらを忘れて、頑張る力が消えていくのは嫌だなとは思うので、どこかでずっとE-girlsではいたいかもと思っています。
山口乃々華として、2021年の目標「修行の年にしたい、挑戦したい」
――『ののペディア』の発売のほか、今後は女優としてもどんどん活躍されるかと思います。今年&今後の目標なども、ぜひ教えてください。
山口: 今後は、ミュージカルの世界に挑戦していきたいと思っています。今年はチャレンジの年として、本当にいろいろなことに挑戦して、修行のように、いろいろなことをちゃんと身につけておかないと自分の理想としている波には乗れないと思うんです。以前、豊洲の円形劇場(IHIステージアラウンド東京)に行ったとき、「すごい!!あそこに立ってみたい!」と思ったので、その夢がいつか叶うように頑張りたい。そして、その先には、また新しい夢が生まれてくると思うので、自分の心の声にちゃんと耳を傾けて、頑張っていきたいです。
――挑戦して悩むこともあるかもしれませんが、そういうときは誰かに相談するタイプですか?
山口: 絶対、人に話しちゃいます(笑)。でも、自分で何にも答えを出していない状態では話さないかも。「きっとこうだろうな、こうするべきなんだろうな」と思っているけど、それでも迷うとき、わからないときに相談することはよくあります。悩んだときは、母にも電話しますし、友人にも話すし、結構いろいろな意見をもらって、みんなに慰めてもらって、やっと前に進んでいます。
取材・文:赤山恭子
写真:You Ishii
スタイリング/徳山智代
ヘアメイク/川嵜瞳(PEACE MONKEY)
【山口乃々華】初の著書『ののペディア 心の記憶』2月4日(木)発売
山口乃々華 初の著書『ののペディア 心の記憶』
【書誌情報】
著者:山口乃々華
発売日:2021年2月4日
価格:本体710円+税
判型:A6判
発売元:株式会社幻冬舎