未来の医療現場を支える看護学生たちの国家試験があさってに迫る中、新型コロナに感染してしまった場合でも追加の試験はなく、受験生からは不安の声が上がっている。
東葛看護専門学校の井上桃香さんは、「1年生の時初めて行った実習で、受け持った患者さんが自分たちとの関わりですごい笑顔になってくれた時に、すごいそれが嬉しくて」「本当に看護師になりたいなっていう思いが強くなってそれから3年間ずっと頑張ってきて…」と、看護師への夢を語った。
井上さんは、コロナの影響で最後の実習が中止になるなど厳しい1年を過ごしてきた。年に一度の国家試験を明後日に控え、「合否への不安はもちろん当然のようにあって…。だけどそれ以前にコロナ陽性になってしまったら、受験できるかできないっていうところで、すごい何か根本的なところで不安とか心配になって」と、実情を明かした。
看護師など22の医療分野の国家試験を所管する厚生労働省は、「1年かけ準備した専門性の高い、試験の質を維持するのは難しい」ということから、受験生が感染してしまった場合、追試を行わないと公表している。これに対し、全国知事会や日本看護系大学協議会などは、追試の実施を求めているが変化はないままだ。
変わらない現状に、井上さんは「コロナ陽性になったら悔しさしか残らないし、もしそういう人が出てもその受験資格を奪うんじゃなくて、チャンスが欲しいなっていうふうに思います」と、思いを語った。
井上さんのような受験生は、受験生なら誰しもが持つ合否へのプレッシャーに加え、「受験」の入り口にすらたどり着けないかもしれないという、二重の不安を抱えている。
また、試験会場は12都道府県に限定されていて、すべての地域に会場があるわけではない。山梨県の共立高等看護学院に通う高橋怜華さんは、東京の会場で受験するため、悩みが尽きないという。
高橋さんは、「国家試験に向けて家族にも感染対策をしてもらってたり、行動制限してもらってたりするので、自分がその中東京の方に出てコロナのウイルスを地方にみんなで持って帰ってきちゃうっていうのがちょっと怖いです」と、本音を漏らした。
さらに、感染してしまったら…という恐怖と闘う今の気持ちを聞くと「私たちも例年とは違う環境の中で勉強しているんですけど、個人の責任で追試験がないのは悔しいですし、ちょっと理不尽だなぁっていう思いはあります。(試験を受けれないってなった場合には)一年間は働けないので次の国家試験までまた勉強します」と、試験を前に苦悩をにじませた。
厚労省によると、看護師の国家試験への出願数は66530人で前の年より280人多くなっている。今回、取材した学校ではこの1年、コロナの影響で授業がオンラインになったりなど、受験対策も苦労したという。
厚労省は、受験生がもしも感染者の濃厚接触者になってしまっても、陰性が確認されれば別室で試験を受けられるような配慮をしている。ただ、気を付けていても誰しもが感染者になるリスクはある。
未来の医療を支える看護学生の皆が納得できる形で試験に臨めるよう、国は環境を整えることが必要だ。
(ABEMA/『ABEMA Morning』より)