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 女優・森七菜の勢いが止まらない。2019年公開の劇場アニメ『天気の子』でヒロインに抜擢されると、その高い演技力で注目を集め、2020年は連続テレビ小説「エール」(NHK)でヒロインの妹役、「この恋あたためますか」(TBS系)で主演を務めるなど注目度の高い作品に重要な役柄で出演、一躍知名度がアップした。そんな大ブレイク中の彼女が次に挑むのは、人気少女コミックを原作とする映画『ライアー×ライアー』の主人公、恋愛経験ゼロの地味系女子大生・湊だ。

 ある日、湊は友人の頼みで女子高生ギャルになりきり街に繰り出すと、義理の弟・透(松村北斗)に遭遇。別人“みな”であるととっさに嘘をつくが、透はそんな女子高生姿の湊=“JK・みな”に恋をしてしまうーー。

 湊を演じながら“みな”を演じる。透にギリギリ気づかれないレベルの変化を狙ったといいう森七菜は、どのようにこの役に挑んだのか。話を聞いてきた。

ギャル姿の自分にびっくり「誰これ!?」

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――少女漫画原作映画のヒロインといえば、売れっ子の証ともいえますね。オファーがきたときはどんな気持ちでしたか?

森:(笑)原作の漫画を中学生の頃から知っていて読んでいたので、まさか私が演じることになるとはと思いました。読んでいた作品は他にもたくさんあるのですが、その中でも、どこか特別で運命的なものを感じていた作品だったので、ずっと覚えていたんです。今回出演することになり、その特別感が証明されたように感じてうれしかったです。自分もファンであるからこそ、原作ファンの方の目線は意識しました。

――映画では初主演とのことですが、心の中で普段と違うところはありましたか?

森:台本に一番最初に自分の名前が出てきたので、「観ているお客さんと一緒に旅するのは私なんだ!」と思いました。まず、お客さんに愛してもらえるキャラクターでいるということが一つの目標でした。ただ、原作の湊と“みな”は愛しいと思えるキャラクターなので、そこは(原作に)忠実に演じていけば大丈夫だと思いました。

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ーー自分が湊役ということに意外性はありましたか?

森:「地味系女子大生」というのは、確かにという感じです(笑)。

――でも今回はギャル系の格好もされていますよね。とてもお似合いでした!

森:ありがとうございます。鏡を見るたびに毎回びっくりしていました。「誰これ!?」って!(笑)自分が別人になったようで、自分を騙せるほど変われたことがうれしかったです。実写化するにあたって一番のハードルはそこだと思っていたので(笑)。“みな”のシーンは、メイクさんに頼らせていただきつつ、仕草なども意識しました。ギャルになりきる必要はないけど、透にバレないレベルにはとりつくろわなければいけない。透が気付かないシーンで、「絶対気づくでしょ!」ってなるのは嫌だったので、安心しました。

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――またギャルや派手な格好の役柄をしてみたいと思いましたか?

森:もうちょっと違うパターンの髪染めをしてみたいです。映画『一度死んでみた』の(広瀬)すずちゃんがすごく好きなので、パンク系女子とか演じてみたいです。ギャルはやっぱり足も出るし爪も長いし、すごく大変でした(笑)。

――ご自身ではそういったファッションの経験はなかったですか?

森:ないですね。校則を守って、ずっとスカートも膝下でした。

――学生時代にギャル系への興味はなかったですか?

森:なかったんです。実はメイクも自分でしたことがなくて。これから大人になるにつれてメイクに興味がでるのかなと考えると、いろいろ楽しみです。

――では、ご家族やお友達が見られたら新鮮かもしれないですね。

森:だと思います。ここまでラブなストーリー自体も初めてなので、茶化されるんだろうなと思います(笑)。「キュンキュンしたよ~」とか言われると思います。

“デレ”を自然に出す松村北斗に動揺「この人のことがわからない…!」

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ーー湊は心の声をよく叫んでいましたが、『天気の子』での声優経験は活きましたか?

森:困惑していたり心の声がだだ漏れな湊の顔にアフレコするような気持ちでいたので、その経験は活きたかもしれないです。

――以前、別作品の舞台挨拶のときにご自身は「リアル天気の子だ」とおっしゃっていたのですが、今回は?

森:(場面写真を指して)実は、この渋谷のシーンは実は2回目なんです。1回目は雨で!せっかく3時に起きたのに!あんなに「天気の子」アピールしてたのに!(笑)現場で松村さんに「(『天気の子』は)1年前だぞ、いつまで引っ張るんだ」って怒られました(笑)。

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――松村さんはどんな方でしたか?

森:すごく威厳のある方だなと思いました。それでいて、透はツンとデレを使い分けないといけない役柄なのですが、デレの部分をさらっと出していて。本当の気持ちでやっているかのようにアドリブもたくさん出てくるので、「この人のことがわからない…!」と不思議な気持ちになりました(笑)。松村さんはこういうお芝居もされるんだと尊敬しましたし、きっといろんな顔を持たれている方なんだと思います。松村さんが透を演じたということにすごく納得しました。透は松村さんじゃないとダメなんだと。

――俳優の時とアイドルの時とでギャップを感じましたか?

森:実は松村さんと初めてお会いしたのが「Mステ」(ミュージックステーション)のときなんです。そのときは「ファーコート着ている人がいるな」と思っていました(笑)。それが第一印象です。なので、どちらも見たことがあるのですが、「アイドルをされている方がお芝居をしている」というギャップは感じませんでした。

撮影を重ねていくうちに「松村さんには、こう切り返しても大丈夫なんだ」という信頼が生まれ、打ち解けて行きました。「これを言ったら馬鹿にされるんじゃないか」「俳優ぶってるって思われるんじゃないか」という不安がなくなって、カメラが回っていないときもお芝居の相談させていただきました。

目指すのは「自分の身近にいる人」

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ーー湊も“みな”も透も自分の素直な気持ちを見つけるのに手間取るキャラクターですね。森さん自身はどうですか?

森:場合によります。疑問に感じることは考えすぎてなかなか言えなかったりするんですけど、嬉しいことは隠しきれなかったりします。

――それでは、撮影中も疑問は口にあまり出さず考え込んでしまうんですか?

森:かなり考え込みます。それで自分の中で消化することが多いです。消化してから前に進みます。

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――森さんの演じる役はどれもリアリティーがあると感じているのですが、それは森さんが相当噛み砕いているからかもですね。

森:そう言っていただけると嬉しいです!好きな女優さんがたくさんいて、その中でも満島ひかりさんが大好きなんです。満島ひかりさんが演じるキャラクターは、実際に存在していて、今も生活してるんじゃないかなと思わせてくれるんです。そういう演技に憧れを抱いています。「自分の身近にいる人」って感じてもらえることで共感してもらえるのではないかと思っているので、そんな女優を目指しています。

――「自分の身近にいる人」像をどのように膨らましていくのでしょうか?

森:今回は原作があるのでそれに忠実に演じた部分があるのですが、それ以外は、自分の中で似ているところを探します。ただ、似ているところだけだと自分自身になってしまうので、自分以外の人との共通点や、物語の登場人物と比較したりします。いろんな要素をかき集めて、その人になったり。現場に入って初めてそのキャラクターや新たな個性が見えたりすることもあるので、試行錯誤しながら作り上げています。

――今回はコメディ要素も多く、前半は様々な表情を見せています。その演技はどのように工夫されましたか?

森:原作の湊はコロコロ表情が変わるんです。そこがきっと愛しいポイントだと思ったので、台本に該当するコマを印刷して貼ったりしました。ラブコメは初めてでとても難しかったのですが、監督がしっかり道標を立ててくださったので、とても助けていただきました。たくさん話し合いをしながら演じることができました。

見せる笑いというのは初めてだったのですが、普段の会話の状態を見せても内輪ネタになってしまうので、とても難しかったです。できてるのかなぁと不安に思いつつ、撮影中もちょっと笑ってしまうときもあったので、きっとみんなも笑ってくれると信じて演じました。

最初は自分の感情のメーターが把握できていないところもあったのですが、徐々に自分の感情・喜怒哀楽を出すことにも慣れてきて、「もうちょっとこうしたらいいかも」と考えることができるようになりました。勉強になった時間でした。

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――今回は大学生の湊と高校生の“みな”を行き来する役柄。森さんは高校時代、東京と大分を往復し、女優と学生を行き来してましたね。

森:はい。大分に戻ったら高校生で、東京に戻ったら大人として扱われる。そのギャップに苦しいと感じることも正直ありました。仕事をすることで、ちょっと現実離れしてしまう部分があったので、大分にいれるときは高校生らしく過ごそうと意識していました。花火して、カラオケ行って、チョコフォンデュして…思いつく限り楽しいことをしようと、いろんな思い出作りをしました。

――そこで過ごした“普通の”高校生時代が後々活きていきそうですね。

森:そのおかげで、お仕事はお仕事と切り替えることができるようになったというのはあります。あと自分の中で、女の子と女の人を行き来するような女性になりたいと思っているので、その基盤ができていたらいいなと思います(笑)。

――素敵な女性像です。大人になっていく森さんの今後の活躍も楽しみです。本日はありがとうございました。

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ヘアメイク:池田ユリ(éclat)

スタイリスト:Babymix

写真:You Ishii

テキスト:堤茜子

(C) 2021『ライアー×ライアー』製作委員会 (C)金田一蓮十郎/講談社

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