中学校を卒業後、福井県の高等専門学校に進学、7年間にわたり土木建築を学んだ森真七会さん(22)は、4月から社会人になる。森さんが他の新卒と違うのは「2社に就職する」という点だ。一体どういうことだろうか。
・【映像】職場のダイバーシティー実現は理想論?/2社に新卒入社?
中学時代から憧れた建築士の仕事。ただ、物作り以上に人と接することに楽しさを感じることに気づいたことから、土木建築以外の領域にも目を向けながら就職活動を続けてきたという。
その過程で興味を抱いたのが、地元企業と学生をつなぐ人材採用支援などを行う株式会社akeruだった。同社が主催するイベントの学生スタッフとして携わると働きぶりが認められ、内定を出したいとのオファーをもらったという。しかし、一旦はこの誘いを保留とし、就職活動を続けることになる。その後、靴のインターネット通販などを行う株式会社ザカモアを見学、代表の人柄や職場の雰囲気に魅力を感じ、両社のどちらを選ぶか、決断できずにいる日々が続いた。
思い切ってakeruの大連達揮代表取締役に胸の内を打ち明けると、「2社とも気になっているなら、両方で働いてみる?」と提案された。「え、何言っているんだろう?2社で働くってどういうことだろう?みたいな」。
元々付き合いがあり、信頼関係がある間柄だった2社。大連氏とザカモア代表取締役の西村拓朗氏が話し合った結果、森さんはそれぞれの会社に4月から正社員扱いで入社することになった。週2日はザカモアで、週3日はakeruで働くことになっている。
「正直、楽しみと不安の表裏一体感があるが、やると決めたので、あとはできる方法を模索するしかない。弊社はプロジェクトごとにメンバーを入れているので、週3ぐらいのボリュームに対して働いてもらえば問題ない。どちらかというとザカモアさんの方が勝手ながらちょっと心配かな」と話す大連氏に、西村氏は「勝手に心配されたが(笑)、確かに週5日働くとのが基本スタイルなので、懸念点はある。ただ、支え合える同期がいるので大丈夫だと思う。これで森さんが成果を出して、めちゃくちゃ成長してくれれば、2社で働くという選択肢が普通になっていくかもしれないし、面白い」と応じた。
共に30代前半の経営者である両氏。大連氏が立ち上げて5年目のakeruに対し、西村氏が率いるザカモアは創業80年の老舗企業だ。西村氏は「競争心はバチバチだ(笑)。そして、社員たちからしたら、“何その話”という感じだとも思う。でも、今まで普通だった、1社に絞って、という働き方だけではなく、フレキシブルな働き方も認めているんだ、ということをトップが発信することで社員の成長につながっていけばいいと思う」と話した。
前代未聞の2社で新卒社員になることになった森さんは「メチャクチャ不安だ。覚えることは2倍だし、前の日の仕事が残ったまま、もう片方に出社しちゃうなとか。だから入ってみたら辛くて辞めたいなと思うタイミングも出てくるかもしれない。でも、2社同時だからこそ学べることはたくさんあるはずだし、自分で選択したことなので、不安も楽しみながら働けたら」と力を込める。
就職活動サイト『ワンキャリア』の北野唯我氏は「これは悔しいくらいに素晴らしい、クリエイティブな取り組みだと思った。企業側が提案したというのが今の時代らしいし、2社のことが好きとなった」と興奮気味に話していた。(ABEMA/『どうする?withコロナの就活&働き方』より)
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