「こち亀」圭一&麗子を見て考える、人から妬まれない“完璧セレブ”の姿
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 1976年から2016年までの40年間、一度も休まず連載が続き、アニメも1996年から2004年までのレギュラー放送、2005年から2008年までと2016年原作40周年スペシャル放送と長期にわたりテレビ放送された人気漫画・アニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」。豪快で情に厚く、破天荒な警官「両さん」こと、両津勘吉が主人公だが、同僚である中川圭一と秋本麗子という2人の“セレブ警官”も、両さんとは違った魅力で作品を彩った。いつも金欠な両さんと、金持ちな後輩・圭一と麗子は、なぜうまくいくのか。また、人々から妬まれず好感を呼ぶのか。作中で描かれたのは、そんな「完璧セレブの姿」だった。

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 容姿、才能、家柄など、人が人を妬む理由はいくつかあるが、その代表的なものが財力だ。「こち亀」では、決してルックスがいいタイプではなく、ましてや財力にとってはマイナスな両さんだが、全てを兼ね備えた圭一・麗子コンビに対しては、憎まれ口こそ叩くが、妬むまでいかない。2人の人格がわかるエピソードは、何度も出てくるが、まずはプロフィールから見ていこう。

 圭一は戦前より名を成した中川財閥の御曹司で、ニューヨーク郊外にある、東京ドーム500倍の広さという父の別荘で50人のベビーシッターに可愛がられながら16歳まで生活。200人のコーチにあらゆるスポーツを教え込まれ、日本での大学卒業後はカーレーサー・ファッションモデル・デザイナーなどをこなし、どういうわけか警察官へと転身した。

 秋本麗子は、本名、秋本・カトリーヌ・麗子。後に事業で大成功する貿易商の父とフランス人の母との長女として誕生し、15歳でスイスの名門女子高に入学すると、ピアノコンクールで優勝したり、ヨーロッパ・ケーキコンテストで入賞したりと、輝かしい成績を収めた。卒業後はフランスへ戻った後、日本の大学へ進学。大学卒業後は、正義感の強さから警察学校へと進んだ。

 どちらも想像を絶する金持ちであり、お金にまつわるエピソードには枚挙に暇がない。圭一が「100均」を「100万円均一」だと思い込んでいたことは有名な話であり、所持する愛車は5000台ほど。両津勘吉が冗談で「3兆円」で忘年会プランを計画させた際には「それだけ使えば死ぬほど贅沢できますね」とノリノリで、移動は1人1台の音速ジェット、オーロラの中を飛行の後に宇宙で宴会、ラスベガスで1人10億円のチップを用意するなどと、あまりにも一般人とかけ離れた金銭感覚を持ち合わせている。

 麗子に関しては、圭一ほどのぶっ飛んだ金銭感覚ではないものの、バーゲン品の洋服を購入後に圭一と「いくらだと思う?」「900万円くらいかな」「600万円よ」「安い!」と盛り上がったかと思えば、歯が丈夫な両津にダイヤの指輪をかじられても「ひどい!半分になっちゃった…」と呆れるだけ。総資産は圭一と同じく不明ながらも、年商2,000億円の父だけでなく自身でも会社を経営して年収は5兆円とのことなので、規格外の金持ちであることは間違いない。

 ここまでセレブなのに嫌われない理由。それは何といっても「金持ちすぎる点」に尽きるのではないだろうか。主に嫉妬は「自分でもそこへ辿り着けるかもしれない」という気持ちや、「自分はそれほど能力で劣っていない」などとの考えから生まれるものだが、ここまで突き抜けてしまえば、もはや夢物語である。初期こそ稀に鼻に付く言動はあったものの、基本的には潤沢な資産や強力なバックボーンをひけらかすことなく、あくまで自然体。その振る舞いが、あまりにも別次元すぎるのだから嫉妬の対象にはならないわけで、例えるならば、野球少年がイチローに嫉妬しないのと同じようなものなのである。出る杭は打たれるが、出すぎた杭は打たれないのである。

 その上、圭一は子犬の健気な姿を見ると幼い頃の思い出がよみがえって涙腺が緩む、酔うと攻撃的になるなどお茶目な部分も持ち合わせており、麗子については舞台の代役としてふくよかな女性に扮した際、そのままの姿で出会った両津に、麗子と知らずに「性格美人」と気に入られるほどの優しさの持ち主でもある。打たれないほど出すぎた杭でありながら、憎めない性格。これが、圭一と麗子が愛される所以なのではないだろうか。

(C) 秋本治・アトリエびーだま/集英社・ADK

こちら葛飾区亀有公園前派出所
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 - 1話
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