10年経った今も帰ってこない“姉ちゃん”へ 17歳の佐藤綾音さんが歌に込めた想い
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 東日本大震災で、本当の姉妹のように仲の良かったいとこのお姉さんを失った17歳の少女が今年、『10年の絆』というオリジナルソングを制作した。震災から10年、行方が分からなくなったいとこと同じ年齢になった少女が歌に込めた想いとは―。

【映像】帰ってこない“姉ちゃん”へ。佐藤綾音さんが歌う『10年の絆』

■いとこのお姉ちゃんを超えた、家族のような存在

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 東日本大震災発生から10年。今月6日、岩手県陸前高田市で行われた追悼コンサートで、高校2年生の佐藤綾音さんは、今も行方が分からないいとこへの思いを込め、オリジナルの歌を披露した。

 陸前高田市の運動会の映像でピンクの鉢巻きを巻いて走るのが、綾音さんのいとこ・佐藤千明さん。この運動会の4年後、高校2年生になった千明さんは部活動中に津波に飲み込まれ、現在も見つかっていない。

 運動会へ応援に来ていた当時は2歳だった綾音さんは、震災で行方が分からなくなった千明さんと同じ歳になった。綾音さんは「父と母が仕事で忙しくて、よく(千明さんの家に)預けていたので、一番お世話をしてくれたのが千明姉ちゃんでした。本当に『悪いことは悪い』って言って、ほめる時はほめてくれて、本当に面倒見がいい。いとこのお姉ちゃんっていうのじゃないくらい、家族のような存在でした。本当に姉っていう感じでした」と、千明さんへの思いを話した。

 兄弟のいない綾音さんの遊び相手になってくれた千明さんは10歳も年が離れていましたが、友人も多く、明るくて優しい千明さんは、綾音さんにとって憧れの存在だった。

■“姉ちゃん”一人だけが帰ってこないのは、どうして?

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 死者1606人、行方不明者202人。陸前高田市は岩手県内で最も多くの人が犠牲になった。震災直後、千明さんの家族を含め、家が津波の被害にあった親戚は、綾音さんの家に身を寄せた。

 綾音さんは「数日経って、(千明さんが)一人だけいなかったので、あれ、なんでだろう、なんでいないの?って聞きました」と当時を振り返る。

 千明さんが帰ってこない理由が、幼い綾音さんには分からなかった。家族皆んなで千明さんを探しに行く日々が続いた。

 綾音さんは「とにかく千明姉ちゃんの名前を『千明!』とか『ちー!』とか(大人たちが)涙を流しながら読んでいて、あっ、いなくなっちゃったんだって。なかなか現実を受け止めきれなくて…」と、言葉を詰まらせた。

■歌うことを大好きにさせてくれた、千秋姉ちゃんを題材に

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 2年前から月に3回、盛岡市にある音楽教室に通っている綾音さんは「将来はプロの歌手を目指して頑張っています。千明姉ちゃんとその家族でカラオケに行ったことがあって、その時に(千明さんに)歌をほめてもらったのがうれしくて、それで歌うことが大好きになって」と思い出を語った。

 レッスンを受け始めて1年半ほどたったある日、先生からオリジナル曲の制作を提案された綾音さんが最初に思い浮かべたのは、やはり千明さんのことだった。

 音楽教室NoteOn・工藤毅己主宰は、「(綾音さんに)一番いま伝えたいことってあったりするのって聞いたら震災の話が出てきて、そこで僕も千明さんの存在は初めて知ったわけですけども、その時に歌詞になるような思い出だったりとか、当時どういう状況でどういう思いがあったとか、そういうのを箇条書きで書き出してもらって、それを曲に一緒に組み立ててって形で作りました」と、オリジナル曲制作の経緯を明かした。

■千明姉ちゃんの心は、私の心の中にずっと居続けている

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 オリジナル曲のタイトルは「10年の絆」。伝えることができなかった感謝の気持ちや日常の何気ない思い出、10年間、胸の中にあった思いすべてを一曲に込めた。

 曲を披露する前、綾音さんは「あの時から10年が経ち、自分が17歳となった今、いろいろな思いが巡ってきます。この思いが千明姉ちゃんに届きますように」と、観客に向けて曲に込めた思いを話した。

 「会いたいなんて思わないくらい、すぐ会える気がしてる。私は未来を増やせるけど、あなたは過去さえ増えないね」「離れていてもそばにいる。同じ想いで未来を重ねる。掴んだ両手、二人の絆、分け合った夢、描いた未来。明日も生きてく。あなたの言葉、あなたと一緒に」「この歌があなたへと届きますように」と、歌い終えた綾音さんは今の思いを次のように話した。「千明姉ちゃんがなれなかった高校3年生になっていくわけで。どんどん未来に進んでいくわけなので。何事にも負けないで。やっぱり千明姉ちゃんの心は、私の心の中にずっと居続けているので、千明姉ちゃんの思いとともに頑張っていけたらいいなと思います」。

ABEMA/『ABEMA Morning』より)

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