映画『まともじゃないのは君も一緒』(3月19日全国公開)で演じた“才色兼備で大人な女性”という美奈子は、世間が泉里香に抱くイメージとまさにドンピシャな役どころ。近寄りがたいセレブリティなオーラさえまとう。
泉はその美しいルックスとしなやかな肢体から“パーフェクト”と評され、加えて女優としてのキャリアも『美少女戦士セーラームーン』(2003)から長く、4月スタートの連続ドラマ『高嶺のハナさん』の主演も控えている。ヴィジュアルもキャリアもキラキラ。近寄りがたい完璧な人だと思ってその内側を覗いてみたら…イメージとは真逆の「緊張ばかりで心配性」な等身大の一人の女性がいた。
出発点はファッション誌のモデル。有名誌の表紙を飾るなど、華々しい経歴を持つ。しかし女優活動をする際には、“モデル出身”という肩書きに後ろめたさを感じることもあったという。「今も自信があるわけではないけれど、女優業を始めた当初は今よりももっと自信がありませんでした。撮影現場でも周りの目が厳しいように感じたし、怖かった。そもそも世界が違うわけですから」と打ち明ける。
その怖さとは、女優業を一つの仕事としてリスペクトしているからこそ生まれる感情。だがモデル業だってプロフェッショナルな世界だ。そこで泉は先頭を切って走ってきたはず。自分自身で「世界が違う」と構えすぎてしまった結果、生れ出てしまった不安なのかもしれない。「徐々にではありますが、モデルとして生きてきたことも自分の人生だからと誇りを持って受け入れて、女優業に向き合うようにはなりました。でもまだ女優業には慣れないし、ドキドキすることもあります。と知られざる葛藤がある。
女優としてのルーティンを聞くと「プレッシャーでゴハンが喉を通らない。寝ていても脳がずっと起きていてセリフが流れてくる。目覚めた瞬間にその日のセリフを口にしている。そして呼吸も浅い」と心配性が漏れ出てくる。泉へのイメージとしてあったはずのパーフェクト感はゼロだ。
「“才色兼備”と仰っていただくことが多いですが、実際は心配性で緊張しい。すぐに家に引きこもる。私に近しい人はそれを理解してくれているので“大丈夫!大丈夫!”といつも励ましてくれます。…こんな話大丈夫ですか?もっとファンタジーを与えないとダメですよね?キラキラ系のことを言わないと!(笑)」
しかし30代になって、その気持ちも少しは楽になったという。「頑張りの源が“自分のため”から“みんなのため”に変わりました。友達や両親の喜ぶ顔が見たいとか、モチベーションの対象を自分から他者に変えただけで、やりやすくなったというか、肩の力が抜けた感じがあります」。重ねた年齢と重ねた経験がモノをいう。やはり継続は力だ。
その女優業継続の原点をいまだに泉は大切に心に留めている。北川景子らと出演した『美少女戦士セーラームーン』だ。17年前の作品を過去のものとはせず、関連写真をSNSでUPするなど深い愛着を感じさせる。「女優デビュー作という原点であり私の財産ですから。カメラの前での映り方や台本の覚え方も含め、すべてを教えてもらった場所。そこから生まれた人間関係や経験は、今の私の活動のすべてに活きる宝物」と初心を忘れることはない。
『まともじゃないのは君も一緒』は、成田凌と清原果耶のW主演作。『そこのみにて光輝く』『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』で知られる名脚本家・高田亮によるオリジナルストーリーだ。3度目の共演となる成田に泉は「大野という個性的キャラクターを成田さんが面白く作り上げてくれて魅了されました。私はクランクインしてからしばらく経っての参加だったので、すでに出来上がっているチームの輪の中に成田さんが引き入れくれました」と主演の気遣いに感謝。
大野(成田)は見た目は良いが数学一筋でコミュニケーション能力ゼロという変わり者だが、その価値観の差異に美奈子は心を動かされる。「私自身が何かにドップリとハマるような性格ではないので、一つのことに熱中する方は素敵で惹かれます。それを私にも教えてほしいと思うし、もしかしたら私が『教えて!教えて!』と迫りすぎて煙たがられるかもしれません」と共感を寄せている。
コンボTシャツ/3.1 フィリップ リム(フィリップ リム ジャパン)
パンツ/ソブ(フィルム)
ヘアメイク:高橋里帆(HappyStar)
スタイリスト:樋口かほり(KIND)
テキスト:石井隼人
写真:You Ishii
(c)2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会
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