22日から1都3県の緊急事態宣言も解除になったが、飲食店の不安は続いている。2月末に解除された名古屋市の鳥料理専門店を『ABEMA Morning』は取材した。
「アルコール提供が7時までになりますが、よろしいですか? ではお待ちしています」
緊急事態宣言が続くなか入った予約にほっと胸をなで下ろすのは、女将の伊藤綾野さん(45)。40年以上続き、名古屋コーチンなどが味わえるこの店「鳥勢」の“パワフル女将”として慕われている。
名古屋市の繁華街にあり、コロナ以前はスポーツ選手や歌舞伎役者など多くの客が詰め掛け賑わったこの店も、緊急事態宣言後は苦境に立たされた。
「必要経費を差し引いて赤字の方が多いです。苦しい、本当に…」(綾野さん、以下同)
ひと月にかかる経費は家賃を含めて400万円以上。店を開ければ人件費や材料費もかかる。協力金は一日6万円だが、赤字は増える一方だった。しかし、綾野さんは店と従業員の生活を守るため必死に営業を続けた。そこにはある特別な思いがあった。
「父が戻ってくるまで、きちっと守らなきゃと思って」
綾野さんの父・彰悟さんは去年の1月、心臓の病を患って入院することになった。綾野さんは思い出が詰まった大切な店を「自分が守る」と父に約束したのだ。
「借り入れをしました。総額はマンションが買えますね。何としてでも守らないと」
創業以来初めてとなるテイクアウトなどでなんとかしのぐなか、1月中旬から愛知県に出ていた緊急事態宣言が2月いっぱいで解除されることが正式に発表された。時短での営業時間は1時間延びることになったが、綾野さんは複雑な気持ちだった。
「うれしい気持ちと不安な気持ち…。またここで(早く)解除して、感染者数が増えて、また同じ状況になったら怖い」
客は来てくれるのか。父との約束は守れたのか。期待と不安のなかで緊急事態宣言解除の日を迎えた。
「1階だけ席が埋まりました」「アップアップしてきた。久しぶりでありがたい」
次々と来る注文にてんてこ舞いの綾野さん。営業時間延長後の初の営業は大盛況のうちに終了した。
そして、この日から2日後、綾野さんの姿は病院にあった。「長かった……会えなくてごめんね。会いたかった。お店がんばってるからね」と彰悟さんに駆け寄り語りかけた。
この日、父の涙を見たという綾野さん。店を守っていく決意をあらたにした。
「『頑張るからね』って言った途端にポロポロと…。あんな父を初めて見ました。何とか耐え忍んで守っていきたい。父を早く歓迎できる状況に持っていきたいと思っています」
(ABEMA/『ABEMA Morning』より)
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