暴力団幹部の自宅を税金で買い取り…尼崎市長が“苦渋の決断”を下した理由
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 兵庫県尼崎市議会が23日、山口組系幹部が住む住宅の買収費1800万円を盛り込んだ補正予算案を可決した。この住宅では去年11月、銃弾が撃ち込まれる事件が発生していたこともあり、市民の安全を考慮し、暴力団排除の取り組みの一環として買い取ることを決定していた。

・【映像】暴力団自宅を買収 自治体初の決断について市長に聞く

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 従来、暴力団対策法などに基づき、組事務所など活動拠点となりうる施設に対して使用制限をかけることができた。ところが自宅については対象外となるため、「様々な対策の隙間になってしまっていた」(稲村和美市長)という。

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 「住民の不安の声が非常に強かったので、私たちとしても放置できない課題だと認識していた。法律では、特に抗争が起こっている地域については強制力を持って取り組めることになっていたので、県警に対して指定強化の申し入れも行っていた。その過程で、当事者が売却を希望しているという情報を頂いた。

 ただ、他の自治体の条例と同様、尼崎市の暴力団排除条例では関係者との契約を禁じている(第7条)。しかし、このまま別の暴力団に売られてしまえば、新たな活動拠点になってしまう恐れがある。条例制定の目的について、第1条では“市民の安全で平穏な生活の確保”としているし、第4条では“それに資する暴力団排除のための施策を実行していく責務が市にはある”としている。これらに沿った形であれば条例違反には当たらないということが言えるだろうということを弁護士にも確認し、決断をした。

 その後、議会でも様々な質疑を行い、全ての会派に賛同いただいた。市民からも、“よく買い取りを決断してくれた”というお声を頂いているし、これから1800万円を最低価格に設定して競争入札を行う予定だが、すでに“この価格であれば買いたい”というようなお問い合わせも頂いている」。

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 稲村市長が暴力団との契約以上に“苦渋の決断”だったというのが、支払いに税金が投じられるという点だ。

 「もちろん、売買代金が一旦は関係者に渡るわけだが、尼崎市の財政としては、安全が確保された後でこの土地と建物を売却する予定なので、その意味では費用は回収される予定になっている。結果的には売却代金を充てて買い取りをするという形の歳入歳出の予算だ。

 また、売買代金がゆめゆめ利益供与に当たるような金額設定になっていないということも絶対条件だった。今回は非常に安価に契約が成立しそうだということもあったし、抵当権等を外してもらうための費用や引っ越し費用も含め、組織の活動資金になるということはなさそうだということも判断材料の一つになった。その意味では、たくさんの条件が重なった特例的な措置だと言えると思うし、今後の資金の流れについても警察にチェックをお願いしている。

 実は“他にも買い取り要望があったらどうするのか”、というご質問も頂いた。しかし先ほどもご説明した通り、今回は非常に特例的な措置だ。事務所として使われている実態もあったようだし、昭和50年代にも発砲事件が起きている。居宅の要素があったとしても、やはりもう一歩踏み込んだ取り組みができるような位置づけにしていくべきではないかということを問題提起したいという思いもある」。

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 一方、引っ越した先の自治体ではどうなるのか、疑問もある。

 「私たちとしても、市外に行ってくれさえすればいいと思っているわけではないし、市という住民の生活に一番身近な自治体として、様々な事情がある家庭の支援、青少年の居場所、貧困の連鎖を断ち切るといった取り組みをやっていかなければならないし、犯罪に手を染めなくとも暮らしが成り立つような社会を目指すということが大前提だ。

 一方で、私たちの地域では抗争指定が解けておらず、住民が安全安心を脅かされるという状態にある。まずは毅然とした姿勢で暴力団排除の取り組みを進めていかざるを得ないと考えている。この方の場合、新たに本人名義で建物を購入するのは非常に難しいし、事務所に関しても使用差し止め等々をしているので、少しずつ身を寄せる先というものが統合されていくことになる側面があると思う。まずは全国的に暴力団排除の取り組みを進め、しっかりと包囲網を狭めていくという段階なのではないか。

 今回の事例も含めて、私たち一人一人ひとりが考え、議論していかないといけない問題だと思う」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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