BACKSTAGE TALK #22 MC TYSON
ABEMAMIX出演の合間に、ライター・コマツ ショウゴ 氏がアーティストにインタビューを実施!
ココでしか聞けないBACKSTAGE TALKをお届けします!
——まず、ラッパーとして活動を始めた時期や、当時好きだったアーティストなど、原点となる部分から教えていただけますか?
MC TYSON:19歳からなので、ちょうど10年です。地元でサイファーというか、フリースタイルをやる文化があって、友人に「お前もやれや」と言われたのがきっかけ。
当時は日本語ラップをよく聴いていて、特に名古屋のシーンに思いを馳せていたんですよ。M.O.S.A.D.を始めAK-69さん、そしてTOKONA-X。それ以外なら、ウエストコートで言えばMACCHOくんやDS455をよく聴いていました。
【映像】MC TYSON ABEMAMIX ライブパフォーマンス
——当時の大阪はいかがでしたか?
MC TYSON:韻踏合組合とか、DOBERMAN INC(現DOBERMAN INFINITY)、のちにR-RATEDに加入するGAZZILAくんをよく聴いていました。
——そういえばTYSONさんも、〈浪速裏庭〉ってワードをリリックで使っていましたね。
MC TYSON:そうなんです。TERRY THE AKI-06も好きでよく聴いていたんですよ。それを使う前に、一応GAZZILAくんに連絡して、「俺も言っていい?」って聞いたら、「言ってや!」と。裏庭の文化に触れながら育ってきたので嬉しかったです。
——大阪って他の地域と比べると、HIPHOPとレゲエの境界線がないように感じるんです。TYSONさんも、ファーストアルバムでARM STRONGさんとHEAD BADさんをフィーチャリングしていましたよね。
MC TYSON:僕の感覚だと、どちらかと言えば大阪はレゲエ色の方が強いかもしれません。TERRY THE AKI-06さん世代のアーティスト、例えばシンゴ☆西成さんとかが、HIPHOPとレゲエの壁を壊して、ジャンルレスを加速させたと思っています。大阪のHIPHOPのどこかにグルーヴを感じるのは、街にレゲエのテイストが沁みているから、その影響を受けているのかもしれないですね。
——現在の大阪のシーンはどのように感じていますか?
MC TYSON:ここ数年、大阪でもいろんなラッパーが頭角を現してきて、みんなキャラが立っているんです。日本でHIPHOPのムーブメントが巻き起こっている中、大阪のシーンは特に勢いがあるんじゃないですかね。10年前と比べても、層が厚くなったように感じます。
——大阪はHIPHOPに限らず、縦も横も繋がりが強いと思っていて。
MC TYSON:カルチャーの街なので、ラッパーやDJだったり、レゲエのDEEJAYだったり、スケボーやグラフィティをやっているヤツもいたりして、みんなどこかで繋がっているんですよ。絆みたいなものがあって、それが大阪というか関西の強みだと思います。
——大阪は人情の街と言われるくらいですからね。大阪のどんなところが好きですか?
MC TYSON:まさに人情があって、どこかほっこりする。バッドバイブスがなくて、みんなポジティブですし、笑うことも大好き。それが自然と音楽に反映されている。
——昨年12月に『THE MESSAGEⅢ』をリリースされましたが、アルバムを2年スパンでリリースしていますね。
MC TYSON:そうですね。間に『THE MESSAGE2.5』もありますけど、それをカウントしなかったら、2年おき。一応1年に1枚は、アルバムなりEPなりをリリースするか、ツアーを回るようにしています。それを怠ると落ちていくだけだと思っているんですよ。ましてやこの時代、すぐにニューカマーが現れて、一時期は良くても忘れられるのが早いから、常にシーンの最前線に立ち続けるために作品を発表してリスナーと繋がっていないと、やっていかれへん。だから、毎年作品を残すことは最低限の活動なんです。
——『THE MESSAGE2.5』をリリースした直後から、『THE MESSAGEⅢ』の制作をスタートしたんですか?
MC TYSON:はい。今回もすぐに次のアルバムの制作を開始しています。構成は考えていて、次はトラックとか客演を考える段階です。
——『THE MESSAGEⅢ』の客演も豪華でした。フィーチャリングの相手は、製作中に気になっているアーティストに声を掛けているんですか?
MC TYSON:僕は基本的に、遊んだことのない人とは一緒に曲を作らないんですよ。ライブが一緒になって、グラスを交わして語って、友達になった人にだけお願いしているんです。客演に参加してくれた人には、それぞれのドラマがある。
——そのほうが制作もスムーズに進みそうですし、パーソナルな部分も分かっているから、いい曲が完成するように思えます。
MC TYSON:まあ、初めましてで一緒に曲を作ることも、ないことはないんですけど。例えば、この前DJ PMXさんのアルバムに参加させてもらったんですけど、一緒にやったのはAYA a.k.a. PANDAちゃん。全然面識がありませんでしたが、それが逆に新鮮でした。
——そもそも女性アーティストとの共演は、いつもと違って刺激があるのではないでしょうか?
MC TYSON:今まで、フィメールラッパーと共作することが少なくて。『THE MESSAGEⅡ』ではレゲエシンガーのAKANEちゃんと、『THE MESSAGEⅢ』ではMinamiちゃんと一緒にやったくらい。性別が違うだけで、曲の雰囲気が変わるのがおもしろいんですよね。それがMIXされて、新しくいいものができる瞬間が楽しいです。
——今作のMinamiさんとの作品を通じて、何か新しい発見がありました?
MC TYSON:Minamiちゃんの制作の仕方は初めてでした。日本語でリリックを書かないんですよ。CREAMの楽曲はMinamiちゃんがリリックを書いているらしいんですけど、英語で描いた歌詞をSTAXXくんが和訳するそうです。そこにお互いのフロウを付けていって。「FOREVER」は自分のバースは自分で書きましたけど、Minamiちゃんが英語で書いたリリックは僕が和訳して、2人でああでもない、こうでもないって話しながら作っていきました。それは初めての取り組みで、やりきったことでレベルが上がったような気がします。
——アルバムのプレスリリースに、「勝負のアルバム」と書いてありましたが、それはどういう意味でしょうか?
MC TYSON:さっきも話したように、キャリア10年目の節目ですし、20代最後の年。なので、気合いを入れて、もう一枚の壁をぶち壊せるような作品を作りたかったんです。
もちろん、すべてのアルバムに全力を尽くしていますけどね。今回のアルバムは、今まで以上にリリース前から周りの反応が良くて、完成したアルバムも納得できるものでした。
そして、これまでできていなかった、ひとつひとつの音を見直す細かい作業もできて。他にもはいろんなことが重なったこともあって、「勝負のアルバム」と位置づけたんですよ。
——細かい作業にまで手をつけられたのは、視野が広がった証拠では?
MC TYSON:そうかもしれません。今作からプロデューサーに参加してもらったことで、フロウの幅が広がりました。ダーティなラップをしている曲があれば、愛する女性に向けた曲や家族の曲もあって、アルバム全体の振り幅も大きいので、僕のいろんな側面を感じてもらえるアルバムになりました。
——制作期間中にお子さんが生まれて、心境に変化があったとか?
MC TYSON:いいえ、実はファーストアルバムをリリースした直後に第一子が生まれました。守るべきものができて、それが追い風に変わったんですよね。家庭を持つことをマイナスに捉える人もいますけど、僕はそんなことないと思っていて。自分の帰るべき場所があって、癒してくれる家族がいると背中を押してくれる。
あとは、自分がやらなくちゃいけないことを全力でやるだけ。すごくシンプルだけど、パワーになるんです。
——アルバムのタイトルは『THE MESSAGE』で統一していますが、そこにはどんな思いを込めているんですか?
MC TYSON:例えば、Lil Wayneの『Tha Carter』や、THE GAMEの『The Documentary』といったように、シリーズ化してナンバリングをつけることで、3枚目で僕のことを知ってくれたリスナーの方でも、前作があると気づいてくれて、遡ってもらいやすいと思いまして。
——最後に、今年考えている動きを教えてください。
MC TYSON:今考えているのは、これまでのアルバムやEPに新曲を加えたベストアルバムを作ろうと思っています。初期の曲を引っ張り出して、新しいものを作りたいです。他にもアルバムも作るし、シングルもコンスタントにリリースしていくので、動向を見逃さないようにしてもらいたいです。
とにかく、食わず嫌いになって欲しくないです。MC TYSONは食べてみたら意外とおいしいと思うので(笑)、ぜひ聴いてみてください。