麻生大臣「飲んでもなんということない」発言を中韓批判も 福島第一原発処理水の海洋放出は世界より厳しい基準?
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(6枚)

 東京電力福島第一原発のトリチウムなど放射性物質を含む処理水について、政府は13日、海に放出して処分することを正式に決めた。

【映像】海洋放出の「処理水」ってそもそも何?

 福島や宮城などでは風評被害を心配する声が多く上がっているが、そもそも処理水とは何なのか、海洋放出して問題ないのか。テレビ朝日経済部の中村友美記者が解説する。

Q.処理水の海洋放出決定の経緯は?

 決断するのであれば今がギリギリのタイミングだったというのが正直なところ。タンクに処理水が貯められているが、満水になる時期が来年の秋以降に迫っている中で、放出のための設備をつくるには2年ほどかかることになっているため、今の段階で決断する必要があった。去年の10月にも決めようとしていたが、漁業関係者の納得が得られないことで断念した。その後、コロナの感染が急速に拡大したため、延期され続けて今年の4月になった。

麻生大臣「飲んでもなんということない」発言を中韓批判も 福島第一原発処理水の海洋放出は世界より厳しい基準?
拡大する

Q.海洋放出以外の選択肢はなかった?

 2018年に海洋放出を軸に公聴会で市民から意見を聞く場を設けた際には、長期保管も検討すべきではないかという声が多かった。そこから政府は検討を深め、長期保管はありえるのかをみていったが、福島第一原発の敷地内に保管するというのが原則なのでタンク増設の余地はあまりなく、長期保管は難しいという結論になっている。

Q.政府の決断は理解を得られたから?それとも強気な判断?

 「そこにタンクがあることが風評の原因になる」と訴える方もいて、自治体の中には早期放出を求める声もある。一方で、漁業関係者からは不安の声が多くあがっている。一番懸念されているのは風評の部分で、処理水の安全性については理解が広がりつつあるが、今回の決定、実際に放出されることによって“なんとなく危ない”と思われることが問題。納得を得られているかというと、政府は「理解を得られるために努力を続けていく」としている。

麻生大臣「飲んでもなんということない」発言を中韓批判も 福島第一原発処理水の海洋放出は世界より厳しい基準?
拡大する

Q.国は風評被害対策を考えている?

 水産業もそうだが農林業、観光業など影響を受ける業種があるので、それらに対して政府は支援策を打っていきたいと考えている。そうすることで風評を未然に防ぐ。それでも風評が生じた場合には、東京電力が補償・賠償するようにということで指導している。

■麻生大臣発言を中韓批判も、福島第一原発処理水の海洋放出は世界より厳しい基準?

麻生大臣「飲んでもなんということない」発言を中韓批判も 福島第一原発処理水の海洋放出は世界より厳しい基準?
拡大する

 麻生財務大臣は13日の会見で、海洋放出の方針が決まった処理水について「中国や韓国が海に放出しているものと同じもの以下だ」「あの水、飲んでもなんということもないそうですから」と理解を求めた。

 中国ではメディアが一斉にこの発言を取り上げるなど関心を集め、中国のSNS「ウェイボー」では一時「日本副首相」が検索ランキングの1位に。「大丈夫なら飲めばいい」などの批判の声があがっている。

麻生大臣「飲んでもなんということない」発言を中韓批判も 福島第一原発処理水の海洋放出は世界より厳しい基準?
拡大する

Q.処理水は安全なもの?トリチウムは除去できない?

 実際に放出する際には国の基準の40分の1、またWHOが決めているの飲料水の基準の約7分の1まで薄めて流すことにしている。トリチウムは水素の一種で、雨水や水道水など自然界にも存在するとされている。水と同じ性質を持っているために、水に溶けている段階ではトリチウムだけを取り除くのが技術的に難しい。

Q.麻生大臣が言うように飲んでも問題ない?

 処理水を実際に飲んだことがある人はいないが、仮にタンクに保管されている全ての処理水を1年間で流しきったとしても、自然界からの被曝量より低い線量になると政府は試算している。そのため人体への影響はほとんどないとされている。

麻生大臣「飲んでもなんということない」発言を中韓批判も 福島第一原発処理水の海洋放出は世界より厳しい基準?
拡大する

Q.トリチウムは日本だけでなく海外でも放出されている?

 中国や韓国の反発が注目されているが、韓国の原発でもトリチウムを含んだ処理水は流されている。韓国の月城原発が年間に放出するトリチウムの量は143兆ベクレル(海洋23兆+大気120兆)で、福島第一原発の貯蔵タンク内の総量は約860兆ベクレルあるが、30~40年かけて年間22兆ベクレル以下で放出していくとしているので、海外や国内の原発で放出している量より厳しい基準になっている。安全性に関して大きな問題があるとは考えられていないが、放出を実際に担うのが東京電力ということで、不安に感じる声がどうしても出てくるのが現状だと思う。

ABEMA/『倍速ニュース』より)

【解説】謎の紋章も…江戸城“最古の石垣”を発見
【解説】謎の紋章も…江戸城“最古の石垣”を発見
この記事の写真をみる(6枚)