菅総理があす未明、バイデン大統領と対面としては初の首脳会談に臨む。
両首脳は中国を念頭に、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて日米同盟の強化をアピールするほか、会談後、両首脳は安全保障分野などでの共同声明を発表する予定だ。また、菅総理はアメリカの製薬大手「ファイザー社」の最高経営責任者と電話会談、日本国内における新型コロナワクチンの安定供給のための協力を要請するものとみられている。
■実は共通項の多い菅総理とバイデン大統領
両首脳の相性について、テレビ朝日政治部の佐藤美妃記者は 「トランプ前大統領と安倍前総理はゴルフという共通の趣味も通じて個人的な信頼関係を築いていたが、やはり共通点というのは重要だ。菅総理とバイデン大統領の経歴などを見てみると、非常によく似ていることが分かる。バイデン大統領を知る外務省関係者の間でも、二人は合うのではないかとの見方が大勢を占めている」と話す。
「一方、トランプ前大統領はトップダウンを好むタイプで、バイデン大統領はボトムアップを好むタイプ。首脳会談でもトランプ前大統領は事務方がのけぞるようなことを出してくるが、バイデン大統領が出してくるのは想定内のものとみられる。外交というのはサプライズが必要なものでもないし、関係者としてはやりやすいようだ。また、今回の日米首脳会談が成功したからといって、菅総理への支持率が急上昇し、政権の安定化につながる、というような甘い見方は政権としてもしていない。
国内外でコロナが非常に重要な問題になっているし、菅総理に同行している人の数もおよそ80人と、通常よりも2、3割減だ。菅総理はもちろん、随行する事務方、記者も全員が2回のワクチン接種を終えているが、アメリカも非常に神経質になっているので、本来であれば親睦を深めるための夕食会や、現地の日本人との交流の機会もほぼない。このかなり厳しい制限に、外務省関係者も頭を抱えていた」。
■中国に強い姿勢で臨みたいアメリカ、あまり刺激をしたくない日本
では、両首脳の会談の重要テーマはどのようなものなのだろうか。佐藤記者は「主要テーマには3つあると思う、安全保障、気候変動、そして経済問題だ。安全保障では中国、中でも台湾問題は焦点の一つ。これをどういう風に取り上げるか、非常に注目度が高い」と話す。
「共同声明の中に“台湾海峡”、もしくは“台湾”という言葉が入るかどうかが焦点になっている。中国は先日も最新の大型空母を使った訓練をしたり、防空識別圏に航空機を飛ばしたりするなど、台湾周辺での活動を活発化させている。アメリカは米軍のインド太平洋司令官が6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると議会で証言するなど非常に緊張感を持って見ているし、今回の共同文書にも“台湾海峡”という言葉であっても盛り込んで、強い姿勢を見せたい。
一方、中国としてはあまり台湾に触れて欲しくないし、両国の板挟みになる日本としても中国を刺激すればどのような措置を取られるかわからないので、できれば穏便なメッセージで済ませたい。出発直前の外務省幹部も非常にピリピリしていた。とはいえ、日本の最西端の与那国島は台湾から100kmほどしか離れておらず、仮に軍事衝突が起きれば安全が脅かされる。いかに中国の行動を変えさせていくか、それが話し合われると思う。
また、尖閣諸島周辺の接続水域でも連日のように中国の艦船が航行しているが、ここはこれまでの電話会談でも出ていたとおり、共同声明に尖閣諸島は日米安保条約5条の適用範囲だ、という文言が入るとみられている。そうすることで、日本の後ろには米軍がいるというメッセージを示すことができる。
加えて、ウイグル問題も注目だ。アメリカはジェノサイド(大量虐殺)と認定して制裁を加えたい姿勢だが、日本はそこまで積極的な姿勢は見せず、慎重。ただ、ここ最近、外相会談などではウイグルに触れることも増えてきたので、今回の会談でも話題には上ると思う」。(ABEMA/『倍速ニュース』より)