東京・新宿区のマンションの地下駐車場で15日、消火装置が誤作動して二酸化炭素が噴出し、作業員4人が死亡、1人が意識不明の重体となった事故。警視庁は20日、工事の元請け業者で東京・豊島区にある株木建設東京本社などを業務上過失致死傷の疑いで家宅捜索した。
なぜ事故は起きてしまったのか。徐々に明らかになってきた原因を、事故発生直後から取材を続けるテレビ朝日社会部・警視庁担当の松本拓也記者が伝える。
Q.家宅捜索の目的は?
警視庁は、工事の元請け業者で東京・豊島区にある「株木建設東京本社」と1次下請けの業者を家宅捜索した。家宅捜索の容疑は業務上過失致死傷の疑いで、資料などを押収し、工程で安全管理に問題がなかったか調べることにしている。捜索を受けた株木建設は取材に対し「押収された書類の中身については分からないが、捜査には全面的に協力していく」とコメントしている。
Q.事故の原因についてわかっていることは?
現場には煙に反応する感知器と熱に反応する感知器が複数設置されていた。捜査関係者によると、作業員は天井板をはめる際に感知器のネジを緩めて天井との間に隙間を作って作業をしていたという。これが何らかの誤作動につながった可能性があるとみて警視庁は調べている。
Q.作業工程は一般的なものだった?
今回の作業は一般的だったということだ。このような二酸化炭素を排出する装置が設置されている場所で工事に当たる時は、「自動(熱や煙に反応)」「手動(人為的に作動)」の設定をどうするか決まりがないという。消防が行う専門的な点検に関しては、有識者を立ち会わせるのが義務化されているが、今回のような工事においては専門家の立ち会いを推奨するに留まっていて、義務ではない。
Q.事故の3時間前に感知器のひとつが反応したことをマンションの管理人が確認していたというのは?
今回の装置の仕組みとして、煙に反応する感知器と熱に反応する感知器の両方が反応しない限り二酸化炭素は噴出しない。事故の約3時間前に、管理人室のモニターで感知器のひとつが作動したというランプが作動し、管理人が警備会社に連絡したそうだが、工事の影響だろうというところで止まってしまっていたようだ。事故の約3時間前から消火装置が作動する一歩手前の状態だったということになるが、一度反応した感知器を解除するためには消防や専門家が現地に来て解除を行うしかできない。
Q.二酸化炭素を噴出する消火装置は一般的なもの?
二酸化炭素ガスを噴出する消火装置は、水での消火に向かない立体駐車場や通信機器、電気室、ボイラー室などの初期消火として活用されている。同様の装置は東京消防庁の管内だけでも約3500カ所の建物に設置されている。広く普及していると言えるが、一方で危険性もはらんでいて、過去5年間に都内で6件同様の事故が起こっていて、死亡者が出た事例もある。一度作動してしまうと噴出を止めることができないというのがこの装置の問題点ではないか。
Q.今後、同じような事故が起きないようにするためには?
今回の事故を受けて総務省の消防庁は、こういった工事を行う場合には専門家の立ち会いを推奨するよう工事業者に呼びかけてほしいということを、改めて各自治体に通達したと聞いている。ある捜査関係者は「作業が始まる前に電源を切るか、手動設定にしていれば事故は防げたかもしれない」と話している。
(ABEMANEWSより)