日本銀行は27日、黒田総裁が任期満了を迎える2023年4月になっても物価目標の「2%」を達成できないという見通しを発表した。
日本銀行は2%の物価目標の達成を目指し、2013年から大規模な金融緩和を始め、黒田総裁は当初「2年程度」で達成する考えを示していた。日銀が初めて発表した2023年度の生鮮食品を除く消費者物価指数の見通しはプラス0.7%から1.0%で、大規模緩和から10年経っても2%の目標実現は難しいことを示した。
「2%物価目標」が達成できない見通しとなったことで生活に影響は出るのか。テレビ朝日経済部の平元真太郎記者が解説する。
Q. 今回の黒田総裁発言で何が明らかになった?
2023年度に日本の経済がどうなっているかという見通しを日銀が初めて発表した。その中で、物価上昇率が2023年度は1%ぐらいの上昇にとどまるとしている。これを2%まで上げていきたいというのが日銀の一番の目標だったが、まだ半分の1%程度だということを明らかにした。
2023年度というのは、日銀にとって2つの大きな意味がある。1つは黒田総裁の任期が2023年4月までということで、つまり黒田総裁の任期中には物価2%が達成できなさそうだと日銀が白旗を上げたという意味合いがある。もう1つは、物価を上げるために2013年から“異次元”と言われる金融緩和を始めているが、10年経ってもゴールに達しないということへの驚きがある。
Q. なぜ物価は上がらなかった?
日本は長い間デフレで、国民は皆それが当たり前になってしまったと。インフレというものを経験していないので、誰も物の値段が上がっていくと思っていないからだ、と日銀は分析している。
Q. いわゆる“黒田バズーカ”は不発だった?
物価を上げる結果にはなっていないが、日経平均株価は3万円まで上がっていて、これはまさに日銀の施策の効果でもある。世の中にお金をばらまく手段として株を直接買うという、世界主要国の中央銀行で唯一やっている手段なので、その面では効果を発揮している。
Q. “異次元緩和”からの方向転換はある?
記者会見でもそういった質問は出ていたが、今の黒田体制の日銀は物価目標2%が絶対になっているので、黒田総裁はその旗を降ろす気はないという意思をはっきり示している。
Q. 「給料が上がらない」という声が叫ばれる中で物価は上がらないのでは?
労働者側からすると「まず企業が給料を上げてくれ」と思うが、経営者側からすると「値段を上げても買ってくれる、許容してくれるという気持ちにならないと怖くて給料を上げられない」となる。
Q. 菅政権肝入りの“携帯料金引き下げ”はデフレに影響しない?
なぜ菅政権が携帯会社にプレッシャーをかけているかというと、携帯会社が儲けているというのもあるが、家計の中で携帯・通信料が大きな部分を占めているので、そこを下げればそのお金が他に回るのではという意図もある。ただ、物価を上げたい日銀から見てみると、2021年度は携帯料金が下がる分が影響して元々の想定より下がってしまう。
Q. 日本の“デフレマインド”を変えるのは難しい?
新型コロナウイルスによって、この先またインフレではなくてデフレに入っていくのではないかという危機感が日銀の中にもある。ある日銀幹部は「小売業が安売りをすることによって客の囲い込みという戦略に打って出ると、もう一度デフレに入っていくのではないか」と危機感をあらわにしていた。実際に小売に目を向けてみると、4月から消費税込みの価格を表示しなければいけないという動きの中で、ユニクロは実質的に1割も値下げしたりしている。今はデフレにもう一度入っていきかねない、危機の入り口にあるのではという見方もある。
(ABEMANEWSより)