今も新型コロナウイルスの影響で国境封鎖を続ける北朝鮮。中国と北朝鮮の間では、貿易再開に向けた準備が各所で進んでいるという。
厳しい経済状況が続く北朝鮮の“今”について、中国と北朝鮮の境界の街で取材を続けるANN中国総局の北里純一記者が伝える。
中国・丹東から河を挟んで向こう側に見える北朝鮮の街は、見られることを意識したショーケース的なエリアだという。止まったままの観覧車は特別な記念日などにしか動かず、一際目立つ建物は金正恩総書記の肝いりで去年完成したマンションだとされているが、上部の塗装は剥がれたままになっている。人の姿も兵士がちらほら確認できる程度で、市民らしき姿は見られない。
今中国の動画サイトでは、北朝鮮の様子を撮影した映像が数多く投稿されている。警備が厳しく海外メディアが立ち寄れない吉林省の国境地帯などの住民が北朝鮮側を撮影して動画サイトにアップしたものだ。彼らが“北朝鮮動画”を投稿する狙いは、お金稼ぎだ。YouTubeなどと同じように動画のアクセス数に応じてお金がもらえる仕組みになっている。中国でも北朝鮮の市民生活を捉えた映像は珍しがられアクセス数が伸びるという。
そもそも、北朝鮮側を撮影することは問題ないのか。北里記者は「我々が今いる丹東という街は、対岸に北朝鮮が見えるということで多くの人が訪れる観光地的な場所で、比較的緊張感はなく中継をすることができている」と説明する。
中国との貿易再開に向けた準備が進んでいるというが、再開は間近なのか。北里記者らは「鉄道による貿易がまもなく再開する」という情報を受けて現地入りしたものの、中国の貿易関係者からは「まだ北朝鮮側の警戒感がかなり高い」「再開はまだまだ先になりそう」といった声が聞かれたという。ある関係者は「これまで北朝鮮側は人から人への感染を警戒していたが、最近になって物を通じた感染をいかに防ぐか悩み始めたようだ」と話したということだ。
依然厳しい経済状況が続く北朝鮮だが、中国・丹東にある「北朝鮮レストラン」は賑わいを見せていた。国境封鎖の中、中国にとどまり続ける北朝鮮労働者が働いている。実際に店を訪れた北里記者は「夜7時には店は満席で、もう少し遅れたら入れないほどだった。20人から30人ほどのお客さんがいたが、その半分ほどは北朝鮮の人だとみられる。歌と踊りのある場所で、楽しそうに過ごしていたのが印象的だったが、伝え聞く(北朝鮮)本国の状況とはかなりかけ離れた光景が展開されていると感じた」と話す。
中国との貿易が絶たれ、北朝鮮が外貨を稼ぐ手段がなくなっている中で、唯一増えている輸出が「電気」だという。「この鴨緑江の上流に行くと中国と北朝鮮が共同で管理している水力発電所があって、ここで発電した電気を中国に輸出している。米CIAの調査によれば北朝鮮で電力を使える人は3割に満たないという中で、電力の輸出を増やしてなんとか外貨を増やしていかないといけない状況にある。そういった意味でも、中国との貿易を早く正常化して、かつらや時計といった国連制裁の対象外のものを輸出するといった手段を回復させたい狙いも当然ある」と指摘した。