今や人気YouTuberとしての顔も持つ、ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏。再生回数は1カ月でなんと2億4000万回以上。どれくらいすごい数字かというと、このペースで1年間配信を続ければ、去年日本で最も多く再生されたYouTuberの3倍以上の新記録を樹立。そんな驚異的な躍進の背景に“ある存在”が隠れている。YouTuber業界で話題になっている“切り抜き動画”だ。
切り抜き動画とは、元の動画から一部だけを切り抜いた動画のこと。投稿主ではなく第三者が編集して作ったもので、時間も短く、テロップ追加などが行われている。ひろゆき氏の切り抜き動画は『元の動画より分かりやすい』とネットで人気を集めており、投稿先はYouTubeのみならず、InstagramやTikTokにまで広がっている。
ネットには「切り抜きって違法じゃないの?」「著作権的にアウト」などの声もあるが、YouTubeは切り抜かれても、著作権を持つ側が収益を管理できる。本人が許可を与える代わりに収益の折半も可能で、違法ではなくWin-Winな関係が構築できる。ひろゆき氏も「僕は何にもしなくても頑張っている人のおかげでチャリンチャリンと(お金が)入る状態」と批判もどこ吹く風だ。
ニュース番組『ABEMA Prime』では、実際に切り抜き動画でお金を稼いでいる大学生・ひろゆきキャリアさん(仮名)を取材し、制作風景を見せてもらった。
【映像】切り抜き職人が使う“ひろゆきDB”とは? 実際の作業工程と月収(3分ごろ~)
切り抜き動画制作のために、作業をプログラムで自動化したり、面白い発言を冒頭に持ってきたり、プログラミングスキルや動画編集への理解は深そうなキャリアさん。月収は「フリーターと対して変わらない」という。他にもキャリアさんのスキルが活かせるアルバイトもありそうだが、なぜ切り抜き動画にこだわるのだろうか。
「頭が悪いと思うが、切り抜き動画を増やしていけば、それだけで1億円くらい稼げるんじゃないかと思った。元々、将来は『科学者になりたい』と思っていたが、自分は完全にエリートコースに乗ってないと気づいた。正規ルートで勝負すると100パーセント(周りに)負ける。サクッと稼いで、サクッとリタイアしたい」
キャリアさんが目指すのは不労所得、早期リタイアだ。夢が叶うその日まで、ひろゆき氏をはじめとした有名人にパラサイトして、切り抜き動画を作り続ける。
だが、切り抜き動画で夢を追っているのは、キャリアさんだけではない。番組スタッフが徹底リサーチしたところ、その数はなんと578件。ひろゆき氏の切り抜き動画でYouTubeドリームを夢見る人が増殖しているのだ。
今回番組には、ひろゆき氏にパラサイトしながら、YouTubeドリームを狙うにーとちゃんねるさん(仮名)、ひろゆけさん(仮名)の2人が動画出演。ひろゆき氏は2人の切り抜き動画をどのように思っているのだろうか。
「にーとちゃんねるさんはセンスがおかしい。そこがクセで好きな人もいればキモいと思うタイプもいるので(評価は)分かれる。ひろゆけさんは、無難にポイントを押さえて見やすくしている。良くも悪くも僕に興味がないから、伸びると思う」
2人は同じひろゆき氏の切り抜き動画を制作しているとはいえ、それぞれ異なる制作体制を持っている。にーとちゃんねるさんは全行程を一人で作業し、ひろゆけさんは複数の外注スタッフを使い、完全分業制で制作している。外注費は「具体的な数字は言えない」とした上で「完全成功報酬型で、一人あたり1カ月20~30(万円)を超えるぐらいの金額は渡している」と明かした。
ひろゆき氏の切り抜き動画を始める前には、「バーチャルYouTuber」(VTuber)の切り抜き動画を制作していたひろゆけさん。しかし、VTuberの切り抜き動画はすでに寡占状態だった。ひろゆけさんは「VTuberでは勝てないと思った。ひろゆきさんの切り抜き動画は、知名度が他の配信者に比べて高いし、やり始めたら儲かるだろうと確信を持って始めた。去年から始めてそのままやっている」と話す。ひろゆけさんは医学部の大学生で、留年してひろゆき氏の切り抜き動画を作り続けているという。
ひろゆけさんの話を聞いたひろゆき氏は「つまり勝てるところで、楽なところに逃げてきた。完全にビジネスマンだ。ひろゆけさんは完全に勝ち残ったので、留年した理由は収入がとんでもないことになっているだろう」と述べる。
一方、すべての作業を自分一人で行い、ひろゆき氏の切り抜き動画を作っているにーとちゃんねるさんは、ひろゆき氏を強く尊敬している。一連の作業は自身の生きがいで、収入は「ニート価格でいけば、食えるくらいにはある」と話す。
■ “切り抜き動画”市場はブルーオーシャン? 今後の行方は「ひろゆき氏のやる気次第」
ひろゆき氏の動画を原液と考えると、第三者による切り抜き動画は原液を薄めて使っている状態とも言える。テレビ局が著作権を開放してこのブームに乗ることはできるのだろうか。ひろゆき氏は「需要はある」と語る。
「やり方次第だと思う。野球の1試合は長い。野球中継で映像を全部見たいわけではなくて、ホームランのシーンだけ見たい、点が入ったところだけ見たいのに、スポーツ番組のダイジェストという形でしか見られない。ちゃんと解説や字幕を入れて『動画は3分で24時間いつでも見られますよ』となったら、需要は絶対あると思う」
今後、どのぐらいひろゆき氏の切り抜き動画バブルは続くのだろうか。にーとちゃんねるさんは「あと2~3年ぐらいは続くと思うが、本当にわからない。ひろゆきさん自身がYouTubeをやるモチベーションがいかに続くかみたいな話だと思う。ひろゆきさんが『もうYouTubeやらないぞ』となったら、切り抜く人もいなくなる」とコメント。ひろゆけさんも「ひろゆきさんが配信を続ける限りは続くんじゃないかなと思う。ひろゆきさんの件で切り抜きが儲かると知られて、今後は拡大していくのではないだろうか」と見方を示した。
密かに一大ブームを巻き起こしつつある切り抜き動画。新たなジャンルとして確立していくのか、それとも一過性の流行なのか。しばらくネットで注目を集めそうだ。

(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
この記事の画像一覧■Pick Up
・キー局全落ち!“下剋上“西澤由夏アナの「意外すぎる人生」
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・「ABEMA NEWSチャンネル」知られざる番組制作の舞台裏