兵庫県明石市の泉房穂(ふさほ)市長の発言に、注目が集まっている。発端は1週間前の大阪府・吉村知事の会見だ。
「社会の不安や危機を解消するために、個人の自由を大きく制限できる強い措置、国家の仕組みが必要だと思う」(吉村知事)
吉村知事が語ったのは、個人の自由に対して制限を加える、いわゆる“私権制限”の必要性だ。これに対し、泉市長は強い憤りをあらわにした。
「弁護士資格を持っている者が、“私権制限”について軽々に言うなんてことは、少なくとも司法試験を通った者としては許されない」(泉市長)
【映像】「頑張ってこなかったのは政治家だ…」泉房穂市長の怒りポイント 医療ひっ迫は“知事の責任”か
泉市長は、知事の権限と責任をどのように考えているのだろうか。ニュース番組『ABEMA Prime』に出演した泉市長は、新型コロナ対策における国・県・市それぞれの役割に言及する。
「簡単に言えば、市には医療の権限がない。権限がない中で、明石市は一生懸命頑張っている。例えば兵庫県の場合、重症病床の数は半年前で110床だった。今いくつかと言ったら118床。半年でたった8床しか増えていない」
「本当は重症患者を診る病院ではないのに、やむを得ず明石の市民病院で、必死に診ていただいている。だから私としては、ちゃんと知事さんが自分の権限で重症病床を作ってほしい。それを作らないで、国民のせいにするのは違うと思う。もう一点は、やはり私権制限をやりすぎだ。映画は観に行けないし、お酒も飲めない。これ以上何をしろと言うのか。それはちょっと違うだろうと思っている」
国や県が責任を果たさずに、国民に責任転嫁するのは間違っている――泉市長は自身のスタンスをこう語る。
「私は『まず県知事の責任として重症病床をしっかり確保してほしい』と去年の暮れから言い続けている。国には『ワクチンを早く用意してくれ』と。ワクチンを用意できないのであれば、正直に事実を語ってほしい。みかん箱を送ってくるようにワクチンを一箱だけ送られてきても困る。明石市は約1万1000人の医者や医療従事者がいるが、まだ半分程度しかワクチンが来ていない。約8万人いる高齢者のワクチンも、まだ1000人分だけ。権限のある者が本来の責任を果たすべきであり、その責任を果たした上で国民に新たなお願いをするのが筋だ」
緊急事態宣言が出ている4都府県の病床使用率(29日時点)を見ると、東京や京都の重症病床使用率が30%台であるのに対し、大阪は93%、兵庫は75%と高い数値を示している。大阪では一般病床の使用率も95%と、医療ひっ迫の渦中にある。
新型コロナの感染が日本で拡大してから約1年。なぜ重症病床の確保やワクチン接種が遅れているのだろうか。泉市長は「ちゃんと真面目に政治をやれと言いたい」「言い訳をするのは政治家ではない」と訴える。
「すぐ近くなので大阪府の対応に明石市も影響を受けている。知事、市長それぞれがしっかりと責任を果たすべきで、私も市長だから市長として責任を果たす。時間は戻らないので、これからでも早急な重症病床の確保が仕事だ。明石市としては、市民病院はフル稼働していて、民間病院からの協力も取り付けることができた。明石市の職員約2000名に協力いただいて、保健所の職員も14名から60名体制に増やす」
「病床ひっ迫は重症病床数が分母で、重症者数が分子だ。要は分母を増やすかどうかの問題。結局、ひっ迫の責任は分母を増やさなかった政治家にある。それは国民のせいではないと、強く思っている。今からでも重症病床は増やせる。全然難しくない」
■泉市長「“私権制限”は全部がノーではない」 根拠がないルールに従う国民の生真面目さ
東京大学教育学部卒業後、NHKに入社。衆議院議員秘書を経て弁護士になった経験を持つ泉市長。同じく弁護士出身である大阪府・吉村知事が発言した“私権制限”の必要性に「全部がノーではない」と述べる。
「法律に基づかずに、日本は私権制限をやりすぎた。ほとんど根拠がないのに、映画館に行ったらダメといって、国民は生真面目に従っている。今の状況は私権制限を行って解決するテーマではなく、私は違うところに原因があると思う」
これにネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「シンガポールや台湾など、GPSを義務化してある種の私権制限を行って、ワクチンができる前から死亡者数や感染者数を抑えられている国はある。僕はそういう私権制限をもっと早めにやっておくべきだったと思う。市長はどう思うか?」と質問。泉市長は「議論が割れるところだ」とした上で、「今は頑張ってきた国民にこれ以上ものを言う段階ではない」と答える。
「GPSも議論が割れるところだが、今まで国民はずいぶん頑張り続けている。頑張ってこなかったのは政治家だ。頑張ってこなかった政治家が、頑張ってきた国民に、これ以上ものを言う段階ではない。これが私の真意だ。今は市長や知事が頑張る時期だと思う」
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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