各国の感染再拡大の背景にあるとされる、新型コロナウイルスの「変異ウイルス（変異株）」。6日の『ABEMA Prime』では、Twitterアカウント「手を洗う救急医Taka」としても知られる、新型コロナワクチン公共情報タスクフォースの副代表幹事の木下喬弘医師に話を聞いた。
・【映像】変異型ウイルスってそもそも何だ?手を洗う救急医Takaさんが解説
■「変異種」と呼ぶのは間違い…そもそも変異ウイルスって何？
「実は新型コロナウイルスは2019年に見つかって以降、少なくとも1万カ所以上が変異していることが分かっている。ウイルスというのは、人の細胞の中で増殖、つまりコピーされていく。その中では時々“ミスプリント”が起きるが、大抵は感染できないなどの劣化版”で、自然と淘汰されることになる。しかし、稀に細胞にくっつきやすくなってしまうといった変化が起こり、人から人への感染性が高まって生き残ってしまうことになる。
その中でも（1）人から人へうつりやすくなってしまう“伝播性”の高まり、（2）感染した人の重症化率や死亡率が上昇してしまう“病毒性”の高まり、そして（3）ワクチンで作った抗体や一度感染した人の抗体の効き目が低下してしまう“免疫逃避”という3つの嫌な特徴を持つ変異が世界中でいくつか見つかっている。これが“変異型”の新型コロナウイルスと呼ばれるものだ。
一方、最近では見かけなくなったが、当初はニュースでも“変異種”と呼んでいたが、これは間違いだ。種が変異するということは、人間がゴリラに変わってしまうくらいのもの。つまり新型コロナウイルスという名前そのものを変えないといけないのではないかというほどの変異は見つかっていないということだ」。
■都内で急増中の「イギリス型」、感染防止対策の強化を
東京都内では新規感染者のうち、基礎疾患のない若年層も重症化するケースがあるとされる“イギリス型”（N501Y変異ウイルス）と呼ばれる変異ウイルスの割合が急増している。
「この“N501Y変異ウイルス”というのは、501番目のタンパク質のアミノ酸がNからYに変わったウイルスという意味で、正式にはB117と呼ばれている。ウイルスに変異があるかどうかPCR検査で調べていたイギリスで最初期に見つかり、あれよあれよという間に国内で変異していったため、イギリス株とも呼ばれている。これは重症化率が約1.6倍という研究結果が出ている。
このように伝播性の高いウイルスの場合、例えば今までマスクなしの会話を15分くらい続けていた場合に感染していたのが、今度は5分くらいでも感染するようになるといったことが考えられる。もちろん医療提供体制の強化も必要だが、イギリス型の場合、単純計算で1週間後には重症者が1.3倍、次の週には1.7倍、1カ月後には2倍、2カ月後には5倍…となってしまうことになる。ベッド数や医療従事者の人数を踏まえれば、対応しきれない。
実際、イギリスでは日本以上に厳しい感染対策をしてなんとか難を逃れているし、今一度、対策を見直していただくことが必要だ。これまで通り手洗い、マスク、三密の回避という基本の感染防止対策をより厳し目にしないといけないということだし、飲食だけ避けていれば大丈夫だとか、換気が悪い所での長時間の会話もマスクをしていれば大丈夫、といったことにはならないかもしれない」。
■インドの感染爆発の背景にはウイルス以上に“緩み”も？オリンピック開催は…
また、変異ウイルスの中でも、とりわけ感染爆発が深刻なインドで見つかったウイルスの脅威が喧伝されている。医療提供体制は崩壊し、ベッドの空きや酸素吸入を待つ中で亡くなる人が増加。遺体安置所や火葬現場は対応が追いつかず、集団火葬を余儀なくされているという。
これについて木下医師は「確かに、他に見つかっている変異ウイルスとは異なっている。おそらく免疫逃避によってワクチンの効果が落ちていてしまっているということもあるのだろうが、むしろインドの感染大爆発の原因は、必ずしも変異のせいだけではないのではないか。例えばインド保健省は“我々は特別ではなかった”と言っている。つまり感染を抑えられたところで宗教行事を一気に開放してしまったり、国の政策決定者が“BCGワクチンを打っている人はコロナにかかりにくいのではないか”という仮説を基に話をしてしまったりしたことが原因だったと思う」との見方を示した。
その上で、「イスラエルでは4月に屋外でのマスク着用をやめてもいいということになった。そして1日あたり約1万人も出ていた感染者数が、今や70人くらいになっている。これは本当にすごいことで、本当にワクチンによる集団免疫ができるんだな、歴史の教科書に載るような出来事を見ているな、という印象だ。そうしたことを踏まえれば、現状でのオリンピック・パラリンピック開催はあり得ない。もし開催したいというのであれば、まず入国者全員にワクチン接種の確認や義務付け、国民へのワクチン接種もより速やかにしなければならない。そうしたことをやりきっていない段階で“コロナに勝った証”などと言われても、“いや待ってくれよ”と思う」と話していた。（ABEMA／『ABEMA Prime』より）
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