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 松坂桃李広瀬すずが初共演。在宅期医療で直面する “いのちのしまい方”を描く映画『いのちの停車場』が5月21日(金)より公開される。

 原作は現役医師・南子による傑作小説。「まほろば診療所」に勤め在宅医師として患者やその家族と向き合い、「いのちの在り方」「生きるという意味」について考えていく主人公・白石咲和子を演じるのは吉永小百合。松坂は咲和子を慕って東京からやって来た医大卒業生の野呂聖二役を、広瀬は看護師の星野麻世役を演じる。

 “いのち”を描く深いテーマを扱う同作において、成島出監督が松坂と広瀬に期待したのは「“太陽”のような存在」であること。そのリクエストに見事応えた二人は、実際に会って話を聞いてみても陽だまりのような人柄で、インタビューは和気藹々としたものに。現場でのエピソードから、共演前の意外な交流、そして俳優人生の転機となった作品まで、ざっくばらんに語ってもらった。

「苦しい中にも未来や希望を感じる」リアルな在宅医療を描く『いのちの停車場』

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ーー初めに脚本を読んだときのお気持ちを教えてください。

松坂:改めて命について考えさせられました。人間誰しも終わりを迎えるのですが、そういうときを迎えるのですが、僕の中ではどこか遠くに感じている部分があったんです。でも、この作品と出会い、現場に入ったときに、もし自分だったらと置き換えて考えると、すごく“いのち”に対しての距離が縮まった。身につまされる思いがありました。

広瀬:こんなにも連続して命が失われていく瞬間が描かれているんだと、読んでいるだけで苦しくなりました。それを実際に現場で目の前にすると、お芝居なんですけど、とても苦しくなりました。けれどそれと同時に、未来や希望を感じる作品でもありました。読み物としてもすごく感動できる、グッときた脚本でした。

ーーそんな重いテーマを扱った作品の中でも、お二人の演じられた野呂聖二と星野麻世は陽だまりのような存在ですよね。広瀬さんからみた野呂はどんな男性でしたか?

広瀬:いい人すぎて心配になるような人でした。こんなに一生懸命人のために動ける人って、素晴らしい人だなと思いました。

ーー松坂さんからみた麻世は?

松坂:芯の強さを感じました。野呂のフィルターを通して見ると、「なんで年下なのにこんなにしっかりしてるんだ」って思っていたのに、だんだん年齢差を感じることもなくなり、気付いたら同じ目標をもって進んでいく仲間になっている。「なぜこの若さで、在宅医療と向き合えるんだろう」というところから、だんだん興味が湧いてくる魅力的な女性ですよね。

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ーーこの作品のために準備したことはありますか?

松坂:医療研修ではないのですけど、事前に勉強する機会がありました。何回かリハーサルもして、子役の子たちと空気づくりをしたり、それはすごく楽しかったし、結果として現場にすごくいい影響を与えてくれました。成島監督自身がリハーサルを何度も重ねて空気を作ってから、現場をスタートさせる方で、それはすごくありがたかったです。

広瀬:私も在宅医療についての授業を受けました。その直後に、子役の(若林)萌ちゃん役の佐々木みゆちゃんとのリハーサルがあったのですが、同じ血圧を測るということでも、大人の方に対する接し方と小さいお子さんに対する声のかけ方だったり、やり方が違うので、事前に学べて良かったです。

共演前にポケモンカードをプレゼント 岡田将生が繋いだ松坂桃李&広瀬すずの縁

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ーーお二人が共演するのは今回が初。お互いの印象に変化はありましたか?

松坂:ドラマや映画を拝見して「色んな顔を持っている方だな」と思っていました。

ただ、実は共演前から岡田将生伝いの交流がありまして…僕に甥っ子がいるんですけど、岡田将生に「甥っ子がポケモンカード好きなんだよね」って話をしたら、彼がすずちゃんに言ってくれたんです。そしたら、すずちゃんが僕にポケモンカードをくれたんです。なので「すごく優しい子なんだ!素敵な子なんだ!」という印象がありました。それでスタジオでチラッとすれ違ったときに「あの…!ポケモンカードありがとうございました!」って挨拶しました(笑)。

広瀬:私も「あ、ポケモンカードの人だ」って見ちゃってたんです(笑)。岡田さんから「欲しいらしいよ~」って聞いていて、私、とある事情でたくさん持っていて、「そのコレクションの中からすぐ明日持ってくるから!」って(笑)。

それこそ現場でも、みゆちゃんとかに「ポケモンカード何枚持ってるの?強いの持ってる?」って聞いたりして(笑)。 “ポケモンカードの人”みたいになっていました。たくさん持っていたので、被っているカードがあると、「あの~これ~」って楽屋に持って行ったりして。押し付けてしまっていたかもしれないです(笑)。

松坂:いやいや、とんでもない。すごく喜んでいたよ(笑)。

ーーそういうこともあって、役の上でもいい空気が作れたのですね。

松坂:スッと役に入れましたね。きっかけはポケモンカードという(笑)。

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ーー麻世は年上の野呂にも、初対面から物怖じしないで接していましたよね。実際に広瀬さんもそういうところがありますか?

広瀬:私、実はすごく人見知りなんです。「わ…松坂桃李さんだ…どうやって喋ればいんだろう」とか思ったりしていました(笑)。でも、朝ドラでお兄さん役だった岡田将生さんにすごくよくしていただいて、松坂さんと仲が良いと知っていたので、現場で「次、松坂さんと一緒だよ~」って言ったら「めっちゃかっこいいから!!!」って言ってくださっていたので。そういうテンションで話していい方なのかなって勝手に思って、いつもより人見知りしなかったです(笑)。

松坂:岡田に「ありがとうございました」ってお礼しときます!(笑)

繰り返されるモノマネに苦しむ松坂桃李「だんだんこなれてきてるって思われたくない」

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ーー撮影現場で印象に残っていることはありますか。

松坂:子役の佐々木みゆちゃんと鈴木乃伊留くんが対照的で面白かったです。みゆちゃんはちょっと大人っぽい感じがするんですけど、乃伊留くんは子供らしい子で、すごい動き回って、あっちこっち行っちゃう(笑)。

すずちゃんと乃伊留くんと記念写真を撮るシーンで、ゲームセンターだったので、いろんなものがあるんですね。それでいろんなものに興味を示しちゃって。監督にはこういうルートでゲームセンター内を走って行って欲しいというプランがあったんですけど、全く違うルートで走っていました。何回もやるので、監督が頭を抱えていて、これは珍しいことなんだろうなと思いました(笑)。

広瀬:私にも遠慮なく「まだ終わんない?」とか聞いてきましたね(笑)。なんて答えたらいいか分からなくて「今頑張ればすぐ終わるよ」「あと2回かな」っていうのを1日何十回も言ってました(笑)。

松坂:吉永さんや西田さんもいるシーンで「あと何回あるのー?」って無邪気に聞いてましたね(笑)。肝が座っています。

広瀬:なんでも思ったこと口に出しちゃう。そこも可愛いんですけどね(笑)。

松坂:可愛い。和みましたね。

ーーあの記念写真撮影のシーンはどこまでがアドリブか分かりませんでした。松坂さんと広瀬さんの顔におじいさん・おばあさんの落書きがされていましたが、あれはアドリブですか?

松坂:乃伊留くんのセリフで「(2人は)おじいさんおばあさんにして僕はそのまま~」みたいなのがあったので、それに合わせていますね!

広瀬:でもスクリーンにあの写真一枚だけ出てくると思わなかった(笑)。

松坂:ちょっと恥ずかしいですね(笑)。

広瀬:記念写真のカットが入ってる~って(笑)。

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ーー「BAR STATION」のシーンではモノマネをされていましたね。

松坂:やっぱりモノマネは何テイクもすると辛いですね。

広瀬:(笑)

松坂:最初はいいんです。でも2回、3回とやっていくと、やってる側からすると「あ~やばい、どうしよ…」って。毎回、西田さんの「はい、全然似てない」ってセリフで落とされるんですけど、どんどん凹んでくるんです(笑)。そのセリフは和ませてくれるトーンなんですけど、テイクを重ねるごとに「あ~もうやりたくない…」って(笑)。

広瀬:しかも、その2、3回目がやっと本番なんですよね(笑)。私は松坂さんの後だったのでそこまでしんどくなかったのですけど、一発目の松坂さんは辛そうでした(笑)。

松坂:もうモノマネは避けたいですね(笑)。

広瀬:変に上手くなって似てきたら、それが一番面白くないですもんね(笑)。

松坂:恥ずかしい。だんだんこなれてきてるって思われたくない(笑)。

松坂桃李&広瀬すすが芝居の楽しさを実感した作品は?

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ーー吉永さんの印象はいかがでしたか。

松坂:こっちがびっくりするくらいナチュラルに現場にいらっしゃる方でした。佇まいが自然で、不思議な魅力を持った方です。今思うと、初めから“咲和子先生”として現場にいてくださったのだと思います。

広瀬:軽やかでした。空き時間にいろんなお話させていただいたんですけど、しゃべりながらスクワットしていました(笑)。「え!?」って思ったんですけど、つっこんでいいのか分かりませんでした(笑)。ご一緒させていただいて、役作りに関しても私生活においても、とてもストイックな方だということがひしひしと伝わりました。

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ーー咲和子先生は野呂と麻世にとって目指すべき人間像のような側面がありますよね。お二人が憧れる先輩とはどんな方でしょうか。

松坂:今回、みなみらんぼうさんと初めましてだったんですけど、あんなに渋くて、チャーミングな方はなかなかいない。ああこういう歳のとり方したいと思いました。厳しすぎず、優しすぎず、可愛いことも言えて、人としてもすごく素敵な方だと思っていました。

ーー勝手に松坂さんはすでにそういう人だというイメージを持っています。

松坂:本当ですか!?…はい、そういう人なんです(笑)。

ーー広瀬さんから見られても松坂さんはそういう方ですか?

広瀬:もう、みなみらんぼうさんです。

松坂:ありがとうございます。いただきました(笑)。

広瀬:どっちがみなみらんぼうさんだか分かりません(笑)。

ーーお二人とも素敵な先輩なんですね(笑)。広瀬さんの憧れの先輩は?

広瀬:松たか子さんです。女優さんとしてもお母さんとしても女性としても、全てに置いて男前すぎて憧れます。以前、3、4ヶ月くらい舞台でご一緒したんですけど、共演する女優さんたちがみんな「たかちゃん、男前だよね~」って言ってるんです。その期間は終始、松さんの素敵な噂話を聞いていて、なんてかっこいい人なんだと思っていました。さっぱりしてるし、お芝居に対しての向き合い方や、感情の出し方もカッコよくて、すごく憧れます。

私はそのときが初めての舞台で、演出家の野田秀樹さんに「わかんないことはたかちゃんに聞きなよ!」って言われていたんです。そんな中、稽古中に野田さんのおっしゃっていることが難しくて分からなくて「どうしよう~」と思っていたんですけど、隣の席だった松さんに「どういうことですか?」って相談したら、「わかんない!!」「考えなくていいの!誰かついて行けばいいんだよ!」ってあっけらかん。「さすがです」ってなりました(笑)。それで、誰かについて行ってる松さんの後ろに私がついて行って、稽古が進んでいくという(笑)。

私は結構構えちゃうタイプなんですけど、松さんがそう言ってくださったので安心しました。それから一気に毎日の稽古が楽になって、自分でも変わってることがわかるくらいお芝居も開放的になりました。

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ーー映画の中では、野呂が医師になるという覚悟を決め、麻世もトラウマを乗り越えようと動き出しますね。お二人が役者として生きていく覚悟を決めた瞬間について教えてください。

松坂:たくさんの作品に関わっていく中で、だんだんという感じなのですが、最初のきっかけとしては、『僕たちは世界を変えることができない。』という映画です。特撮終えて初めての映画出演だったのですが、カンボジアロケがありました。僕自身プライベートも含めて海外に行くのが初めてで、あらゆることが新鮮でした。手持ちの5D(カメラ)とかで撮影されていて、本当にカメラがあるのか分からないような撮り方で。その当時、すごく新鮮ですごく楽しくて、映像のお仕事に興味が湧いたというのは覚えています。そこから、いろんな作品や監督、役者さんと出会って、どんどん好きになっていきました。

広瀬:10代の頃に「anone」というドラマに出させていただきました。元々、脚本家の坂元裕二さんが大好きだったのですが、「anone」をやっている最中は、こんなにも楽しいお芝居あるの!?っていうくらい楽しかったんです。現場で見れる共演者の方のお芝居が贅沢すぎて、またその方々とご一緒したいから「まだかな、まだかな」って待っている感覚があります。これはどの作品でも、どの共演者の方にも思うんですけど、とにかく楽しかったのが「anone」だったので、すごく自分にとっては大きい作品です。お芝居が無性に楽しいという思いをくれました。

ーー素敵なお話ありがとうございます。最後に今回の作品から学んだことを教えてください。

松坂:自分がこの立場になったとき。それぞれのエピソードのどれかにぶつかったとき、どういう風な向き合い方をするかというのを、想像させられました。向き合うきっかけを与えていただきました。

広瀬:人との出会いは財産だと改めて感じました。家族以外にも頼れる人がいたり、自分のことを思ってくれる人がいるというのが、どれだけすごいことで、幸せなことなのか。年齢的に、“いのち”に対して考えることはあまりなかったんですけど、そういうときがきた瞬間にどう思って、どう動いたほうがいいのかなと、決める選択肢が増えました。そんなことを現場で感じられて良かったです。

ーー映画を観られる方にとってもきっかけを与えてくれる作品だと思います。本日は貴重なお話ありがとうございました!

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取材・文:堤茜子

写真:You Ishii

(c)2021「いのちの停車場」製作委員会

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