「日本人が思っている以上に海外メディアは注目している。開催について議論すべき時だ」どうなる?東京オリンピック・パラリンピック
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 東京都への緊急事態宣言が延長される中、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長は7日の会見で、来週に予定されていたIOCのバッハ会長の来日について「非常に難しい」との見方を示した。大会開催の現在地はー。元ANNアメリカ総局長の名村晃一氏に話を聞いた。

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 まず、開催となれば最大規模の選手団が来日することになるアメリカの反応について名村氏は「もちろんオリンピックは大イベントではあるものの、野球などのプロスポーツも盛んなアメリカ人にとっては、日本人ほどの高揚感のあるものではない。そして“やめたほうがいい”という国民の総意があるわけでもない。それでも、アメリカのメディアの反応は総じて厳しいと言っていい」と話す。

 「アメリカの放送局NBCはIOC(国際オリンピック委員会)に対して大きな影響があると言われているし、朝のニュース番組でも画面の隅に五輪のロゴマークを入れるくらい、開催に向け機運を盛り上げようとしている。一方で、大きな新聞ほど論調は厳しい。例えばニューヨーク・タイムズ紙やサンフランシスコ・クロニクル紙は“感染が拡大するからやめたほうがいいんじゃないか”というようなことを書いているし、ワシントン・ポスト紙もIOCのことを揶揄するようなトーンで開催を疑問視するコラムを掲載した。スポーツ雑誌の中にも、“あまりにもお金をかけているし、もうやめられないんだろうね”という記事を出しているところもある」。

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 これらの懸念の背景にあるは、やはりワクチン接種率の低さだという。「アメリカではすでに全国民の約40%が2回の接種を終えている。一方、日本では2月から始まって、まだ2%程度だ。中国に抜かれる以前は世界2位だった先進国が、ここまで低いのか、というのが取材をしているスポーツジャーナリスト、さらには記事を読む読者たちの反応だ」。

 名村氏によれば、日本の動向を注視しているのは他の国のメディアも同様だという。

 「日本というのは、感染をうまく抑えている国だと思われていた。その国で、いま再び感染者数が増えてきている。だからこそ、“オリンピックをやる日本でしょ?どう対応するんだろう?開催するの?”と興味を持たれているということだ。例えばイギリスのメディアは、日本政府が開催期間中に看護師の派遣を要請したことについて報じたし、きょうの午前中、菅総理と立憲民主党の枝野代表が開催をめぐって論戦をしたこと、国民民主党の玉木代表が延期に言及したことなどもすぐに海外で流れた。読売新聞は“中止する”が59%だったという世論調査の結果について最終版の2面で取り上げていたが、このこともイギリスやオーストラリアのメディアは通信社の報道をもとに、きちんと報じていた。

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 先月末には大会を取材するメディア向けのプレイブック(ガイドライン)が更新され、感染防止対策も非常に厳しいものになった。当然、日本としては守ってもらわなければならないものではあるが、来日するメディア関係者が“ここまでやらないといけないの?ここまでしてやる必要あるの?”という気持ちにならないとも限らない。そうなれば、開催についてさらに厳しい論調が出てくることも考えられる。こうした点を踏まえれば、むしろ海外メディアの方が日本のメディアよりも敏感になっていると言ってもいいと思うし、我々日本人は、海外でそのくらい細かく報じられているんだと思わないといけない。

 そんな中で、イタリア国際出場のためにイタリア入りしている大坂なおみ選手が、“個人的にはやってほしいという思いはあるが、そうは言ってもこういう状況。今こそ、やるかどうかの議論をすべきではないか”と発言した。このことはAP通信などを通じて、各国のメディアが報じた。選手たちにも様々な考えがあるだろうが、基本的には開催してほしいし、参加したいと思っているはずだし、実際、“行きたくない”と言った選手はいないと思う。それでも客観的に見てやれるのかやれないか、それを議論してほしいという大坂選手の発言はタイムリーで、冷静で的を射たものだったと思う。日本のメディアも、これはきちんと報じて議論すべきではないか」。(ABEMA NEWS)

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