BACKSTAGE TALK #25 SIMON
AbemaMix出演の合間に、HIPHOPライター 渡辺志保氏がアーティストにインタビューを実施!
ココでしか聞けないBACKSTAGE TALKをお届けします!
ーEP『TRY』のリリース、おめでとうございます!前作のアルバム『03』から数えると約4年ですが、このタイミングでEPを出した経緯は?
SIMON:リリースの計画は一年半前くらいから考えていたんだよね。その間、ずっと制作していたから、このEPに関しては、実は制作期間が長くて。
ーその間、SIMONくんはラップの裏方的な仕事も多く手掛けてらっしゃいましたよね。
SIMON:そういう時期だったね。作詞の仕事も増えて、ラップの先生をやってる時もある。そんな中で、リリックでも言ったんだけど、自分がもう一回バッターボックスに立ちたいっていう気持ちを捨てきれなくて。
ー久しぶりの制作はどうでしたか?
SIMON:他の人のために書く、とかではなくて、紛れもなく自分の楽曲だから、逆に作り悩むこともあったな。一曲に対して15回くらい書き直すこともあった。例えば、作詞家として人の曲を書く時は、あらかじめ曲のテーマがあって、そこにアジャストしていくのが仕事。でも、自分の曲だとそこは無限だから。だから、「何を書いたらいいんだろう?」って不安に思うこともあったんだよね。
ーそうした感情を抱きながら制作を進めるにあたって、自信になった一言などありますか?
SIMON:「どうってことねぇ」を地元の連れとかに聴かせたら「超かっこいいじゃん」みたいな反応をもらえて、それは自信に繋がった。あと、RYKEYが連絡をくれて、スタジオに遊びに来たことがあったんだけど、たった20分でその場でリリックを書き上げてくれて、それも力をもらえた出来事だったな。
ー「どうってことねぇ」は、漢さんと¥ellow Bucksさんを迎えたリミックスも超話題になってますよね。
SIMON:リミックスに関しては、まず、漢くんを最初に決めたんだよね。
ー漢さんのヴァース、とにかくキレキレで。
SIMON:そう、ぶっ飛んでるよね。漢くんとは、昔からストリートの現場では仲良くて、ずっといつか一緒にやりたいと思ってた。元々、RYKEYと漢くんが仲良いというのもあったし、漢くんが逮捕を経て、まさに「どうってことねえ」っていう状況だなと思って。そこで漢くんにその時の気持ちを書いて欲しいと頼んだら、二つ返事でOKもらって。
バックスはやっぱり、若手で一番光ってるから。彼からはとにかくヒップホップを感じるんだよね。ただラップが上手い若手ってすごく増えたけど、彼に関してはヒップホップのカルチャーの中にいる感じがある。それでDJ RYOWくんに繋いでもらった。
ーあの曲を先行配信して、私は同世代ということもあって「SIMONくん、今、こういうモードなんだ!」って勇気をもらったというか。とにかく「おかえり!」って思ったんですよね。
SIMON:今まで、ラッパーとして色んなアプローチをしてきたけど、もう一度ラップに立ち返ろうと思ったんだよね。オートチューンとか使わないで、自分のラップのかっこよさっていうものを、もう一度見せたかった。「やっぱり俺はラップでバチバチにイケるっしょ」みたいな。「どうってことねえ」のトラックも、もともと4つの候補から選んだもので、中にはエモいビートとかもあったんだけど、結局、ハードなトラックを選んで作ったんだよね。
ー冒頭の「Salud」は今回の所信表明というか、改めて覚悟を感じるような一曲だと思いました。今回、制作の面で特に気をつけたことはありますか?
SIMON:さっきも言ったように、今回は書き直すことも多かったんだけど、あえて言うなら日本語の響きを大事にしたということかな。あと、当たり前のことだけど韻を踏むということ。リリックの中で英語を多用すると、そっちの方が響きがいいから自然とかっこよく聴こえるんだけど、俺らは日本人に対してやってるわけだから、そこにも立ち返って歌詞を書いた。サビを全部日本語で書いたり、韻も、4文字、5文字で踏むようにしていたり。フロウもなるべくアップデートした。戻ってくるからには、やっぱりダサいものは作れなかったし、ヒップホップってセオリーを大事にした。
ー表題曲の「TRY」もすごく深く響きました。特に1ヴァース目は一行ごとに情景が蘇るというか、個人的にも歌詞の中に出てくる当時のことを思い出して、泣けちゃいましたね。
SIMON:俺がラップをやってきてよかったなって思える曲で、現時点での集大成は、この「TRY」だね。でも、過去を振り返って、ただ自分のヒストリーをラップするだけではダメだと思って。だから、未来に向かっていく自分に対してのエールでもあるし、もう一回ラッパーとして前に出ようって気持ちを赤裸々に書いた。
ー「Salud」では”ダサい先輩にはなりたくないから戻ってきた”という描写もありますが、SIMONさんが考える、”イケてる先輩”ってどんな先輩ですか?
SIMON:言葉に責任を持っている、ということかな。一度言葉を吐いたら、それに伴う行動や責任が生じるわけだけど、それをちゃんとやる。AK-69くんとかもそうだけど、やっぱりやることやってきてるじゃん。”やることやってる奴が勝ち”ってRYKEYも言ってるけど、端的に言うとそこかなと思う。
俺は、やっぱり自分がかっこいい先輩になりたいんだよね。振り返ってみると、自分が理想とする先輩に、なれなかった時もあるし、それこそ離婚して子供もいなくなってしまって、家族を失うダサさっていうのも味わった。それも含めて、今は俺がトライしてやるって思ってる。
ー最初の方にも少し話しましたが、SIMONさんはラッパーとして裏方の仕事も豊富に経験している。アーティストとして活動していく上で、どういうマインドで裏方の仕事にも取り組んでいますか?
SIMON:こういう仕事を出来ない人もいると思うし、やりたくないって思う人もいるかもしれない。でも、俺は、声優の花江夏樹さんたちが参加しているプロジェクト「Paradox Live」とか、映画版「TOKYO TRIBE」のラップ指導にも携わって来て、“『鬼滅の刃』の竈門炭治郎がバッチリラップしてたら面白くない?”って思うし、”それを俺が教えてるんだったら間違い無いでしょ”って思ってる。
それに、プロフェッショナルな人は、どのジャンルでも人としてかっこいい人が多いし、自分の予想を超えてくる人が多い。ラップ指導や作詞の仕事をするときって、まず俺がガイド音源っていうのを作って相手に渡すんだけど、みんな、そのガイド音源を超えてくるんだよね。それってすごくプロフェッショナルなことだと思う。
ーEPのリリースを経た今、次にチャレンジしたいことはありますか?
SIMON:レゲトンをやりたいんだよね。アフロビートぽさもあるような、ちょっとアーバンなレゲトン。俺は親父が外国人で、ボリビアの血が入ってる。ヒップホップって俺の人生だから、親父が死ぬまでに、楽曲で見せたいんだよね。自分にそういう血が流れているってことを。