BACKSTAGE TALK #24 SILENT KILLA JOINT & dhrma
AbemaMix出演の合間に、HIPHOPライター 渡辺志保氏がアーティストにインタビューを実施!
ココでしか聞けないBACKSTAGE TALKをお届けします!
ー今回はジョイント・アルバムという形態ですが、そもそも、お二人の出会いは?
SILENT KILLA JOINT(以下 SKJ):元々、友達が多く繋がっていて、自ずと同じパーティーに集まったり、遊びに行ったりして出会ったんです。
dhrma:そうですね。神戸・大阪あたりの関西圏を中心に動いて行く中で出会ったみたいな。
【映像】SILENT KILLA JOINT & dhrma ABEMAMIX ライブパフォーマンス
ーdhrmaさんがビートを作り始めたきっかけは?
dhrma:元々ラップをしていたんですけど、地元の"Factory No.079"ってセレクト・ショップにレコードがあって、ラップするためのインストを探しているうちに、いいビートを求めて行くようになったんです。
で、その結果、自分でもビートを作るようになった。ラッキーなことに、加古川にビートメイカーの先輩もいっぱいいたので。
ーバイオグラフィーを拝見すると、デトロイト周辺のサウンドに影響を受けた、と。
dhrma:そうなんです。一番デカかったのは、J・ディラの存在。毎年2月は、J・ディラの誕生月でもあり、亡くなった月でもある。だから、”ディラ・マンス”って呼ばれているんですけど、地元のお店にJ・ディラの写真がプリントされているアパレルが置いてあって、それを見たときに最初はラッパーだと思っていたんです。
でも「これ、ビートメイカーやねん」ってディラのことを紹介されて。それまで、ビートメイカーって裏方の人やと思ってたんですけど、そうじゃなくて、こうやって全面にフォーカスされるし、「ビートが表現になり得るんや」ってショックを受けました。楽器が弾けなくてもビートはサンプリングで作れるし、何ていうか、カスタマイズしながら自分で組み立てて完成させていく点にも魅力を感じたんですよね。
ー『DAWN』はどうやって二人で制作を進めていったのですか?
SKJ:キャッチボールですね。ビートが届いて、リリックを乗せて、そしたらミキシング・エディットされて返ってくるという。最初に録ったビートに、全然違うドラムの構成になって返ってきたこともありました。返ってきたらいつもワクワクでしたね。「そんなサプライズしてくんの?」みたいな。
ーdhrmaさん的に、今回『DAWN』を作るにあたってビートにおけるコンセプトのようなものはありました?
dhrma:作っていくうちにざっくりと固まっていきましたね。SKJの持つ二面性というか、明るい部分と闇の部分をしっかり引き立てることができるようなビートを意識しました。毒があるビートもあれば、穏やかなビートもあって、という。
SKJ:dhrmaのビートってやっぱ他の人のビートと比べてだいぶ異質なんですよ。めちゃくちゃ細かく作られている。だから、『DAWN』を作り始めたときにそういうビートの上で自分が何を表現するか?ってことは考えながら作りました。書いたり消したりを何度か繰り返しましたね。一回乗ると、あとは乗り切ることができる。
dhrma:この人はとにかく振り幅がすごいんですよ。陰と陽というか。だから、そのどっちかに振り切ることができるビートを送っていました。
ー今回は、dhrmaさんの穏やかなビートがSKJさんの内面を引き立たせているような印象を受けました。
SKJ:僕、元々刑務所に入っていたんですけど、入所前に出した『BlAqDeViL』とかは特に、攻撃的で反骨精神に特化した楽曲が多かったんですよ。だから、これまで穏やかな曲を作ったことがなくて。ヒップホップのブラックさも好きですけど、それだけだとアルバム通して聴いた時にしんどいなと思って。
ー分かる気がします。
SKJ:なんか、陰鬱な気分に持っていかれる気がして。それよりは、アルバムを聴いた人の何かが、例えば、感情がふっと動くような作品にした方がいいのかなと思ったんです。同時に、刑務所に入所したことで僕のマインドや人生観もだんだん変わっていった。「アンチ・バビロン」とか言ってたけど、実際にパクられてみたら、そんなに甘くなかったと分かったんですよね。
そこで、自分自身の情緒の変化などにも気づくことができた。それが、穏やかな曲も作りたい、というマインドに繋がっています。
ーそもそも、ビートを全てdhrmaさんに依頼しようと思ったきっかけは?
SKJ:僕、2016年の10月に捕まったんですけど、12月にいったん保釈されたんです。翌年の3月に収監されるんですが、その保釈中にめちゃくちゃ曲を書いたんです。刑務所に行くまでに、自分のソロのEPと、後輩のKAKKYとのクルーであるSquad Words名義の2つを作ったんですが、そのビートが全部dhrmaだった。
あと、MILES WORDさんとOLIVE OILさんでやってる 「AT THE TIME」って曲があって、そのビートを勝手にYoutubeからダウンロードして、自分のアカペラを乗っけた作品があったんです。「このアカペラを誰かに送って、俺が刑務所に行っている間になんかしといてくれ!」って友達に預けたら、dhrmaがそれをリミックスしてくれて。
それが、自分が一番好きな音やったんです。穏やかで、優しさも切なさもあって、色んなもんがあるビートやなって。刑務所から出てきて、「あ、俺、出てこれてよかったな」って本当に感じたビートだったんです。
dhrma:その曲は、自分がやりたいからやっただけなんですけど、やってよかったなと思いますよね、こういう話を聞くと。
ー今回、客演もすごく豪華で。中でも「FALLIN’ feat. BES , MILES WORD, rkemishi」はそれぞれのメンバーの個性が際立つ作品になっていて、じっくり聴き入ってしまいました。
SKJ:このアルバムは元々友達だけで作ろうと思ってたんです。それをエミシ(rkemishi)君に伝えたら、「レーベルから制作費をもらえるんだったら、これをきっかけに自分がやりたかったアーティストとやるのもいいんじゃないか」ってアドバイスをくれて。そう言われたら、「それもアリかな」と思って、dhrmaに相談しながらフィーチャリング・ゲストを考えていったんです。
僕が日本語で今のラップに影響を受けてきたのは、DLiP RECODSやDogear Records、SCARSといった先輩たちだ。もちろん、みんな好きなんですけど、今のフィーリングだったらBESさんとMILES WORDさんと、エミシくんに頼みたいと思って。それで、エミシくんがお二人に働きかけてくれて、制作が進んでいきました。
ーBESさん、MILES WORDさんのヴァースが返ってきた時、どんなお気持ちでしたか?
SKJ:テンション上がりましたね。「夢のようや…ありがてえ~!」って。BESさんなんて、吐きそうなくらい邪悪な世界を体現してくれたなって。
ー皆さんには具体的に楽曲の説明などした上で、客演をお願いしたのでしょうか?
(rkemishi):僕はただそれぞれにビートを渡して、「FALLIN’」っていうタイトルだけを伝えましたね。
SKJ:具体的な説明とかはしませんでした。皆さん、たくさんの「FALLIN’」を見てきた人たちですもんね。
ー今後、チャレンジしてみたいことがあれば教えてください。
SKJ:僕はバンドでちょっとやってみたいなと思っています。生音がめっちゃ好きなんで。
dhrma:僕はもっと感情を排除した音というか、グルーヴに特化したブーンバップというか、何ていったらいいんだろう…そこだけ聴かせるような無機質なビートを作ってみたいと思っています。
ー今、ヒップホップの曲やビートってどんどんエモーショナルな方向に走ってるから、流行と真反対な感じがいいですね。
dhrma:流行っていない分、自分も聴いたことがない。だから新鮮で楽しいのかなって。そういう、実験的な作品を、自分が所属しているレーベルから出せたらなって思います。