昨年8月末に約18年間所属した芸能事務所を巣立った剛力彩芽。立ち上げた個人事務所の名称は、ショートカット。ドラマ出演をきっかけにロングヘアーだった剛力がショートカットにイメージチェンジしたのは約10年前のこと。剛力自身「まさか社名にまでするとは思わなかった」と驚くが、そのヘアスタイルこそ女優・剛力彩芽の誕生の瞬間であったことを本人も自覚している。ゆえに社長としてのスタートラインに立つときに思い浮かんだ言葉は“ショートカット”一択だったという。
イメージチェンジのきっかけは、月9『大切なことはすべて君が教えてくれた』（2011）への出演。当時長髪だった剛力は、監督から「表情が見えづらい」という指摘でロングヘアーをバッサリ切った。「似合わないのではないかという不安はあったけれど、いざ切ってみたら周りから『凄くいい！』と言ってもらえて。自分としても肩の荷が降りたというか、何かが剥がされたような気がしました。髪を切った後の方が自然と明るい自分が出てくるような気がして。実際に性格も明るくなりました」と変化を実感した。
ショートカットでボーイッシュな明るい女の子というイメージが定着。しかしブレイクの一方で、20代前半の頃はそのパブリックイメージに悩まされることもあったという。「いい子、明るい子、というイメージに対して“全然違うけど！”と思ったりして、反抗期突入。笑うのが嫌になった時期もあります。ちょっとした反抗として髪にインナーカラーを入れたりして」と若気の至りに苦笑いだが、ヘアスタイルは一貫してショートのまま。
それが今では自身が社長を務める社名になるとは。「剛力彩芽という一度聞いたら忘れないような名前に加えて、髪形がショートカットというインパクトやイメージがあることは凄くありがたいことで、感謝しかありません。それだけに社名を決める際も、剛力彩芽＝ショートカットというくらい、ほかの言葉は思い浮かびませんでした。会社名らしいカッコいい言葉もあるのかもしれないけれど、それでは私らしくない。ほかの候補もなくショートカット一択でした」とこだわりと愛着がある。
剛力社長として1周年目前。独立直後は焦りと不安に駆られていたというが「自分ではなにもできない名ばかりの社長だと思っているので、周りからどう思われてもいいや！という心境です。社長業1歳児ですから、知らないことがあるのは当たり前。かつては知らないことが恥ずかしくて、教えてくださいと言うことに緊張がありました。でも今は知らないことは知らないと素直に口に出せる。今から勉強していきます！という姿勢に変わっていきました」。等身大の自分をさらけ出せるようになった。
仕事が成立するまでのプロセスにコミットできる面白味も刺激的。「引き受けるお仕事も“利益”ではなく“楽しそう”が判断基準になることもあるので、楽しいから始まって生まれるものへのワクワク感があります。自分ですべての責任を負わなければいけないので、自分の一言一言に対する責任感やプレッシャーも感じますが、それも意外と嫌いじゃない。悩み過ぎて頭が爆発しそうになる時もあるけれど、できる限り制限をせずにやりたいと思う」と無限の可能性を感じている。
SNSに力を入れていきたいと思うが、ちょっとした不安もあるという。「今は個々で発信する可能性が強調された時代。そんな流れの中で、私も自分自身でチャレンジしたいという思いが強くなりました」と打ち明けるが「ただSNSは意外と苦手…。ブログ時代からそうで、投稿も悩むし、文章も長くなりがち。気軽に…というレベルにはまだ達していません」と悪戦苦闘の日々だ。
5月21日からは出演映画『お終活 熟春！人生、百年時代の過ごし方』が公開される。終活を通して残りの人生を謳歌しようとする熟年夫婦（橋爪功・高畑淳子）の長女・大原亜矢を、現在よりも短いショートカット姿で好演。これが実にナチュラルで、女優・剛力彩芽の新たな一面が開花している。
剛力は「こそばゆい」と照れるも「自分で言うのもおこがましいですが、ナチュラルにお芝居ができたと思います。演じた大原亜矢は、私に与えられがちな元気はつらつ女子でもボケタイプ女子でもなく、普通の女性です。演じていて、安心感がありました。飾らず、気負わず。それが出ればいいと思って演じていました」と手応えがある。
映画の撮影は『LDK』（2014）以来の久々。「映画の場合は連続ドラマとは違い、撮影から公開まで時間があります。1年後に自分の芝居をちゃんと見れるのだろうか？という不安もあるけれど、それも映画ならではの醍醐味。観客の皆さんが1年前の私にどんな思いを重ねてくれるのか…。感想や反響が楽しみです」と公開を期待している。
スタイリスト：小谷雄太
ヘアメイク：高城裕子
取材・文：石井隼人
写真：You Ishii
