映画『ゾッキ』『裏ゾッキ』の交互上映トークイベント「秘密の集会 今こそ愛だ」が5月16日、東京・渋谷にあるミニシアター・アップリンク渋谷で行われ、『ゾッキ』監督&プロデューサーの山田孝之、同じくプロデューサーの牧有太と伊藤主税が参加した。
山田監督の『ゾッキ』演出パート『Winter Love』には、これが俳優復帰作となったピエール瀧が出演。しかし撮影前にその情報が漏れたことから、ピエール瀧の出演シーンのロケ地となった愛知県蒲郡市にある漁港では、厳戒態勢での撮影が敢行された。その様子は『裏ゾッキ』の中でも克明に記録されている。
当時の状況を振り返り、警備員を雇ったり、軍用ライトも買ったという山田監督は「ピエール瀧さんにとっては久々のお芝居の場ですから、邪魔されたくなかった。結果的に安心して芝居ができてよかった。大勢の蒲郡の皆さんの協力のお陰で、集中できる環境を作れた」と撮影をサポートしてくれた地元スタッフの連携に感謝。
その姿勢に牧プロデューサーは「そういった環境を作るのも、ある種の監督としての演出」と唸り、伊藤プロデューサーも「あのときの山田さんの気持ちと気合にはすごいものがあった。みんなが山田さんの気持ちに共鳴して、みんなでいい現場を作るんだという結束が生れた」と現場の士気を高める山田流演出術に感動していた。
また山田監督は、シュールな画風の原作を映画化するにあたり「背景などを飾ったりしないのを意識。原作者の大橋裕之さんが蒲郡で生まれ育ってそこで描いたものなので、蒲郡の景色をそのまま切り取れば『ゾッキ』の世界になると思った。余計なことはせず手も加えず」と映像化するに当たってのこだわりを解説した。
現在全国で『ゾッキ』および『裏ゾッキ』は絶賛公開中だが、『裏ゾッキ』公開初日の5月14日に伊藤プロデューサーの身に予想外のハプニングが襲い掛かったという。首にコルセットを装着しての登壇となった伊藤プロデューサーは「公開初日の昼に道を歩いていたら、後ろからおばあちゃんが運転する自転車に激突されました」と状況を説明。
山田監督から「聞くところによると事故というか、故意に轢かれたような感じなのでもはや事件?」と心配されるも、伊藤プロデューサーは「緊急事態宣言で映画館が開くのか開かないのかという状況だったので、天から『お前はこんなに痛くても映画を届けたいのか!?』と問われた気がした。なのでこの怪我は試練と受け止め、一人で首を痛めながら『上映したい!』と天に念じました。そうまでしても『ゾッキ』『裏ゾッキ』を全国に伝えたかった」と満身創痍の熱弁。山田監督からは「…この人は天才なんです」とややイジられるも、会場からは大きな拍手が沸き起こった。ちなみに激突したおばあさんは「邪魔よ!」などと言ってどこかに立ち去ってしまったという。
最後に山田監督は『裏ゾッキ』について「松井玲奈さんがナレーションをやり、竹原ピストルさんが曲を付けてくれるなど、豪華になって良かった」と完成に嬉しそう。伊藤プロデューサーは「コロナ禍によって、作戦を組み立てては崩されての繰り返しでしたが、大勢の仲間がいたから踏ん張ってここまで来られた」と映画に関わる全員に感謝。牧プロデューサーは「アップリンク渋谷最後の新作として交互上映が行われることに意味がある。閉館まで色々な形で応援してほしい」と期待を込めていた。
(c)2020「ゾッキ」製作委員会