「“森喜朗体制”や菅政権を調査報道するという役割を放棄し、国民の不安を煽っている」五輪開催をめぐり猪瀬直樹氏がメディアに苦言
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 東京都への緊急事態宣言について政府内に延長論も浮上する中、東京オリンピックの開幕まで2カ月を切った。

・【映像】カンニング竹山が猪瀬氏と激論

 一方、IOC=国際オリンピック委員会のコーツ調整委員長の「緊急事態宣言下で5競技のテスト大会が成功した。選手と日本国民の安全と安心を守るためのプランはすべて最悪の状況下でも機能した。したがって答えは(緊急事態宣言下でも開催は)YESだ」との発言に国民からの批判が集中。また、バッハ会長の「私たちはいくつかの犠牲を払わなくてはならない。選手たちは間違いなくオリンピックの夢を実現できる」との発言についてIOCは24日、「日本国民に向けたものではなかった」と釈明した。

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 いま、オリンピックを開催する意義とはー。24日の『ABEMA Prime』では、東京都知事として大会招致活動に携わった作家の猪瀬直樹氏に生直撃した。

■「開催しなければ、日本は国際的な信用を失ってしまう」

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 連日の報道に対し、カンニング竹山は「安全・安全にアスリートが競技をできるかという話が多いが、関係者やマスコミも世界中からくるわけで、その管理を本当にできるのか。招致した時には“おもてなし”と言っていたが、それだってどっかに行っちゃうことになる。状況が当時と全く変わっているのに、やる意味はあるのか」と疑問を呈する。

 これに対し猪瀬氏は「開催しなければ、日本は国際的な信用を失ってしまう」と主張する。

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 「我々が“やります”と手を挙げた時、スペインのマドリードとトルコのイスタンブールも手を挙げた。3者が約1年をかけてIOCに対して開催する意味などをプレゼンテーションして説得した結果、マドリードやイスタンブールを退けて東京が招致を勝ち取った。つまり、国際公約的なものを我々は引き受けたということだ。もちろん、この時点ではコロナになる状況が前提ではなかったが、もし我々がやらなかったら、“マドリードやイスタンブールでやるべきだった”となってしまう。

 さらに来年2月には世界の人が北京オリンピック開催の風景を見に行く、あるいはテレビ中継で見ることになる。そうなれば、“なんで東京はできなかったのか”と思われてしまう。確かに困難はある。しかし、これはある種の“目標管理”であり、前向きな意欲を見せる、そして困難を乗り越えてやりきるというのが、国際社会に対する我々の信頼の勝ち取り方ではないだろうか。そこで東京がコロナをどう克服するのか、それを見せることによって、日本が世界の流れを積極的にリードしていくということにもなると思う。

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 それから、我々は招致する時に“おもてなし”と言った。例えば東京マラソンでは都庁の前に集まった3万5000人が服を着替えるが、脱いだ服が1万人のボランティアによって間違いなくゴールのビッグサイトに戻ってくる。そういうホテルのクロークのようなことを日本人はやれる。今回もみんなが頑張ればできると考えればいい」。

■「日本の感染状況、特別ひどいわけではない」

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 この説明にカンニング竹山は「僕だってテレビを見て楽しむだろうし、感動もすると思う。しかしもう2カ月を切っているというのに、そのための受け皿ができてないんじゃないかと思うし、精神論のようになってしまっているところが無いだろうか。アンケートでも中止・延期論の人が増えているし、ボランティアの人たちの中にも、もう参加したくないとの意見もある。この状況下で、成立するのだろうか。“コロナに打ち勝った証し”と言っても、オリンピックはワクチンでも特効薬でもない。季節的には感染者数が再び増える可能性もある」と重ねて指摘する。

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 すると猪瀬氏は「そういう疑問は僕もあるし、そこは大会組織委員会や政府がきちんと答えるべきだ。ただ、メディアのアンケートが“やる、延期する、やらない”というのも選択肢なので、どうしても“やる”が少なめに出てしまうが、“延期する”も含めると、50%以上いる。つまり半分以上はオリンピックに期待しているということだ。2年延期というのはそもそもありえないので、多くの人は何とか乗り切ってやろう、あるいは来年やればいいという考え方だと思う。そこはミスリードしないほうがいいと思う。

 そもそも今の世界の感染状況を見てみれば、日本の感染状況が特別ひどいわけではない。ワクチン接種が進んでいるアメリカでも100万人あたり76人の感染者が出ているが、それに比べても日本は少ない方だ。欧米から見れば、なんでこれだけの感染者数なのにやらないのかという疑問が出てくると思う。ほとんどの人はテレビで観戦するわけだし、大会期間中に1日500人のお医者さんが必要だというが、それくらい医師会が出せなくてどうするんだ」と反論した。

■「メディアは菅首相や小池知事に影響力を与えればいい」

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 ジャーナリストの堀潤氏は「丸川担当大臣や小池都知事はもっと国内外に向けてこういう情報発信をすべきではないのか、いろいろな思惑があって発言できないということなのか」と憤る。

 猪瀬氏は「僕だったら今のように発信していたと思う。“なんのためにやるのか”についても常に言っていたし、だからこそ開催についての支持率も高かったのだと思う」とした上で、次のような見方を示した。

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 「そこは菅さんにしろ小池さんにしろ丸川さんにしろ、思想として説得力のある言葉で言わなきゃいけないと思う。ただ、やはり問題だったのは、コロナ禍になる前の段階から6~7年にわたって続いた大会組織委員会の“森喜朗体制”なんだと思う。新国立競技場の建設費が膨大になったことについても、不透明な組織委員会ができて不信感が生まれてしまった。それでも“一回決まっちゃったからもういいだろう”ということで、“なんのためにやるのか”というメッセージを全く出してこなかった。

 そして、こういう“森喜朗体制”の問題について、地上波はオリンピックの“おこぼれ”をもらうためにタブーにして、扱ってこなかった。菅政権や森体制の問題について調査報道的要素をもっとつけ加えるべきだ。それをやらないで不安だ、不安だと煽っているのが今のメディアの状態だ。メディアも開催する側だし、言葉を持っているんだから、他人事のように要求するだけじゃなくて、“だったら私たちはこういうオリンピックにしたいんだ”ということを発信することで、菅首相や小池知事に影響力を与えればいい。今のメディアは、その役割を放棄している」。

■「“コロナ後”の経済効果を考えて」

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 こうした議論を踏まえ、カンニング竹山は「やりたいと言っている人たちの本音は、要は金でしょう?経済効果なんでしょう?」と猪瀬氏に詰め寄った。

 猪瀬氏は「すべての産業は金だ。スポーツについても、金は確保しなければならない。サッカーJリーグの選手ならスポンサーも付くだろうが、マイナーな競技やその選手たちはオリンピックに出ることで脚光を浴びて知名度が高まったり、メダルを獲ることで予算が増えたりする。“商業主義だ”という批判があるが、世の中は全て商業だ。

 そして、世界何十億人の人たちがテレビで競技を見ることになる。そのために、各国からメディアが来るのも当然だ。もちろん、その受け入れ体制について不手際があることは分かる。それでも、オリンピックが放映権で支えられているということ、一定の数が来ることを認めなければ成り立たないということだ。

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 オリンピックは飲食も含めた開催国の文化を世界に知ってもらうきっかけにもなる。北京オリンピックもロンドンオリンピックも、開催決定から7年間で観光客が倍増したし、日本も開催決定から3倍増の年間3000万人くらいまで来た。コロナはいつか終わる。その“コロナ後”のことを考えてください。その時にもう一度、インバウンドのお客さんに東京に戻って来てもらって、飲食業や観光業を潤すことを考えなければならない。それも含めての経済効果と言っている。これが大事だ。

 今もオリンピックの理念そのものを喪失したわけではなく、コロナ禍によって不安が出てきてしまっているというところが大きい。そこに対する菅政権の対応のメリハリが良くなかったために、不安がさらに増幅してしまったと思う。しかし、この極めて後ろ向きな気分のまま、オリンピックを潰していいのか、本気で考えてほしい」と改めて訴えた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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