無線機を違法に輸入した罪などに問われているアウン・サン・スー・チー氏の審理が24日に行われ、これまでのオンライン方式ではなく、本人が直接出廷した。ミャンマーの国営テレビはその際の様子だとする画像を報じた。
2月のクーデター以降、軟禁状態にあるスー・チー氏の姿が伝えられるのは初めて。スー・チー氏は弁護士と面会し、自らが党首を務めるNLD(国民民主連盟)について「国民のための政党で、国民がいる限り存在し続ける」と訴えた。また、弁護士に「国民の健康を祈っている」と伝えたということだ。
国軍側がスー・チー氏を裁判にかける意味合いについて、ANNバンコク支局の白川昌見支局長は「民主派勢力の弱体化というのが最大の狙い。スー・チー氏は民主派にとっての“シンボル”で、彼女に代わりうるリーダーも出てきていない。デモ行進ではスー・チー氏の写真を抱えて釈放を求める動きも行われたが、彼女に対して様々な容疑で起訴を行い、拘束を長期化させることで、犯罪を犯した人物だという印象を植え付けるとともに、彼女が戻ってくることはないと国民に諦めさせようとしているのではないか」と説明する。
国軍側はなぜこのタイミングでスー・チー氏の写真を公開したのか。その狙いについては、「スー・チー氏を長く拘束していることに対して国際的にも批判の声が出ているので、きちんと裁判を行っている、彼女を不当に扱っていないというアピールをしたかったのでは」と分析。スー・チー氏はネピドーの自宅で軟禁されていると言われていたが、自宅ではない場所にいることが今回明らかになったという。
また、写真に対するミャンマーの人々の反応として、「スー・チー氏とウィン・ミン大統領、ネピドーの責任者というスー・チー政権の幹部3人が写っている。広い法廷に3人並列で座っていて、後ろには警官が立っていることに対して、ミャンマーの多くの人は改めてすごく悲しい気持ちになったそうだ。それまでは指導者として華々しく活動してきた人が、今は法廷の中で“小さな姿”でおさまっている。権力者として実権を握っていたのが、クーデターによって権限が奪われてしまった象徴のようにも見えるので、ミャンマーの人たちはショックを受けている」と述べた。
クーデターから4カ月、ミャンマー情勢は今後どうなっていくのか。
「大規模なデモは数が減ったが、それは治安部隊が強硬な摘発策に出て、銃撃するなどして多くの人が亡くなる事態にもなったから。今は仲間内や知り合いなど少数で集まって、数分のデモをゲリラ的にいろいろなところで行っている。当然リスクがある中で続けているので、スー・チー氏を支持して国軍を受け入れないという姿勢を示している人はまだ数多くいる。不服従運動をやっていた人が生活のために職場復帰したり、いろいろなお店が開き始めていて、表面上は日常生活に戻りつつあると聞くが、内心では長く続いた軍事政権に対する思いや国際社会から受け入れられずなかなか発展できなかった状況を覚えている。“あの時代には戻りたくない”という思いを持っていたり、抵抗活動を続けている人はたくさんいる。
一方の国軍側は、自分たちは決して間違ったことはしていないと再三アピールしていて、NLDが選挙の不正を認めないから正しい民主主義に戻すということで、1年後ぐらいに改めて選挙をするといっている。その選挙で勝った政党に政権を託すと話しているが、NLDの解党を検討していたり、自分たちに反抗的な人々をどんどん捕まえている。軍に反対する人々が支持したくなる政党が次の選挙で登場できるかというと難しく、軍に都合のいい団体しか出馬できないとなれば意味はない。非常に難しい状況にある」