累計発行部数250万部突破の大人気恋愛漫画『胸が鳴るのは君のせい』が実写映画となって6月4日(金)公開する。転校生の有馬(浮所飛貴/美 少年/ジャニーズJr.)に告白し、振られてもなお彼を想い続けるつかさ(白石聖)の“片想い奮闘記”を描いた本作は、恋をしたことがある人ならば誰もが共感必須な青春ラブストーリー。終始胸キュンシーン満載の本作において、つかさに何かとちょっかいを出すクラスメイト・長谷部(板垣瑞生)が有馬のライバル役として劇中に登場。常に女子から囲まれモテモテな長谷部とクールで飄々としている有馬、対局な2人の男子が火花を散らす様子は必見だ。
今回はライバル役として大きな爪痕を残した板垣にインタビューを実施。現場で実際に繰り広げられた青春エピソード、大人びた恋愛観には思わず胸が鳴ってしまうだろう。
浮所とは“ウッキー”“ミッキー”と呼び合うほどの仲
――今回は一見いじわるでチャラいイケメンという役どころでしたが、長谷部に共感できる部分はありましたか?
板垣:長谷部はある意味僕自身です。あ、でも素がチャラいキャラクターってわけじゃないですよ(笑)。長谷部はリア充のモテ男っぽく見えるけど、実は影もあってその部分を好きな人に対して小出しに見せてくるじゃないですか? そういうところに人間味を感じるし、背負っている重たいもの(過去)を人に押し付けない、自分をも騙しているような彼の心の闇は演じる上で大切にしました。
――ライバル役だった浮所さんとは現場でお互いを“ウッキー”“ミッキー”と呼び合うほどの仲の良さだったと聞いています。
板垣:ウッキーって最初から心のドアが開きっぱなしというか、ドアそのものが壊れちゃっているような人なんです。だから壁を作る理由もないし、お芝居もすごくしやすかったです。ウッキーは一緒に芝居をしていて純粋に「いろんなものをぶつけてみよう!」って思えるようなピュアな役者さん。本番で僕がアドリブをぶつけると、面白いリアクションをしてくれるんですが、そういう純粋な部分も含めて有馬そのものだったと思います。
―― “ウッキー”“ミッキー”呼びはどうやって誕生したんですか?
板垣:共演者同士で「みんな、あだ名をつけて楽しい感じで話そうよ!」っていう流れから着地した感じです。確か「海外だと瑞生じゃ呼びにくいから、“ミッキー”ってあだ名でいこうかな」みたいな話をして、そこから“ウッキー”“ミッキー”が生まれた気がします(笑)。僕が“ミッキー”だから「ウッキーじゃん」って本当自然な流れでした。でも僕らだけじゃなくて、共演者みんな仲が良かったのでずっと喋りっぱなしでした。みんな等身大の学生って感じで、「一緒にラーメン屋行こうぜ!」みたいな話をしてました。
――そういった仲良しエピソードを聞くと、サッカーの試合のシーンで長谷部と有馬が
一触即発状態で睨み合っていた時とのギャップがすごいです。
板垣:あれは原作のシーンにウッキーがすごく合わせてくれた感じですね。台本には有馬が長谷部の胸ぐらを掴む指示はなかったのですが、ウッキーが「俺はがっつりいきたいです!」と言ってあのシーンが完成しました。あのシーンの撮影の前は自然とお互い喋らなくなったけど、その分、本番でエネルギーをぶつけ合えたと思います。ウッキーが芝居をピュアに受け止めてくれる人だったから助かりました。
――恋にまっすぐなつかさと、あざと女子の麻友(原菜乃華)も有馬を巡り火花を散らしますが、板垣さんのタイプはどっちですか?
板垣:つかさみたいに想いを包み隠さず、ストレートに表現できる女性って素敵だと思うんです。過去に告白して振られてそれでもずっと好き、って普通だったら辛くなるじゃないですか? けどそんな状況でも弱さを見せないし、どんな時も一生懸命有馬を想い続けるつかさのほうが僕は好きです。
――ではもし長谷部のように好きな人に他に好きな人がいるとわかったら、板垣さんならどうしますか?
板垣:そうなったら完全に引きます! 「頑張ってくれ!」って感じで(笑)。
――好きな人の恋を応援する派?
板垣:むしろ本当に愛があるなら応援することすらおこがましくなっちゃうかも。だって(好きな人にとって)好きな人がいるならそこは思いっきりいったほうが絶対に良い。それに自分のものにしたいからその人のこと好きになるわけじゃないし、本人が幸せを掴んでくれたほうが僕は幸せだから。
役が抜けずに、友達との会話で自分を確認「こういうリアクションをするんだった!」
――ABEMAオリジナルドラマ『ブラックシンデレラ』では、『胸が鳴るのは君のせい』とは違ったタイプのミステリアスなイケメン高校生・島村空を演じています。長谷部と空、どちらが素の板垣さんに近いですか?
板垣:さっきの長谷部に共感できる部分の答えと似ちゃうけど、どちらも僕が演じているから、ある意味どちらも僕なんです。だからどちらの要素もあると思っています。『ブラックシンデレラ』では、ちょっと会話が通じないキャラクターを演じているんですが、そうするとプライベートでも役を引きずっちゃって、どう言葉を返していいのかわんなくなっちゃうんです(笑)。演じている時は常に「その役でいなきゃ」って思うので、だから実は今もまだ役が抜けていない状態です。
――プライベートでも役を引きずったままだと何かと大変そうです…!
板垣:だから最近は友達に支えてもらっているなと痛感しますね。それは大人になってより感じるようになりました。役を引きずっていても、普段の状態の僕をわかって接してくれるから、「こういうリアクションをするんだった!」って思い出せるんです。
――お芝居もプライベートも周囲によって形成されている部分が大きいのでしょうか?
板垣:僕的には仕事もプライベートも関係なく、人は周りによって作られているものだと思うんです。「全部自分の意思で行動している」と思い込んでいても、そもそもそういう思考自体が周りから与えられたもので形成されているのかなって。
――『胸が鳴るのは君のせい』『ブラックシンデレラ』と、立て続けに高校生役を演じていますが、手応えは感じていますか?
板垣:手応えと言うか高校生役は単純に演じていて面白いです。(高校生役は)未来に向かってキラキラしているし、限られた期間しか魅せれないエネルギッシュさがあるというか。あの青年と少年の間の無敵感は、特別なものだと思っています。それに世の中のことがまだわからないからこそ良い意味でポジティブにもなれる。それも大きな強みですよね。
――こうして板垣さんとお話ししていると、まだ20歳なのに見た目も考え方も大人っぽくて驚かされます。けど、その大人びた雰囲気から幅広い役のオファーが絶えないと思うのですが、俳優として20代以降の目標はありますか?
板垣:アカデミー賞を獲りたいです!映画が好きだし、お芝居も好きなので、作品に必要な役者になりたい。上の世代にはすごい役者さんがたくさんいますが、そういう方たちをいつか超えていけるくらいの熱量を持ち続けたいです。
取材・文:近藤加奈子
写真:mayuko yamaguchi