厚生労働省が立ち上げた「大麻等の薬物対策のあり方検討会」で、大麻使用罪の創設が検討されている。

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 現在、日本の大麻取締法では大麻を栽培や輸出・輸入もしくは所持や譲渡・譲受した容疑のみ逮捕され、吸引など“使用”に関する罰則はない。大麻を原料とした医薬品の導入などの議論が進む一方、使用罪の検討にネットでは「使用罪は抑止力になる」「むしろ治療や相談の体制が大事」「所持と栽培の罪を重くすればいいのでは?」など賛否両論、さまざまな声が上がっている。

 日本は大麻使用罪を創設すべきなのか。ニュース番組『ABEMA Prime』では、専門家と共に議論を行った。

厚労省が法改正を検討 “大麻使用罪”創設は必要か
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 使用罪創設に反対の立場を取り、署名活動を行っている弁護士・亀石倫子氏は「立法事実と言って、法律を作るには社会的な事実が必要だ。一体どのような社会的事実があるのか、そもそも詳しい説明がない」と述べる。

「厚労省は『30歳以下の若者の間で大麻使用が広がっている』と言って、それを抑えるために使用罪を作ろうとしているようだが、因果関係、根拠に確かなものはない。国家が個人に与える、新しい刑罰を創設するに見合う立法事実があるのか。弁護士として疑問に思う」

 一方、薬物アドバイザーで元厚生労働省麻薬取締官の廣畑徹氏は「使用罪に100%賛成ではない」「医療用の大麻は進めるべきだ」とした上で「数を減らすには、使用罪しかないのではないかと思う」とコメント。抑止力として、使用罪創設の意義はあるとした。

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 なぜ今まで日本には大麻使用罪がなかったのだろうか。番組が調べると、70年以上前、大麻取締法の制定時に栽培農家が大麻成分を吸い込む恐れを懸念し、使用に関する罰則が設けられなかったことがわかった。しかし、2019年に大麻農家の尿検査を行った結果、大麻成分が検出されなかった。不当逮捕の恐れが消えたことで、改めて使用罪の検討が行われているが、亀石氏は誤認逮捕の可能性に言及する。

「例えば、それほど広くない室内で、誰かが大麻を吸っていたとする。煙がモクモクしていたときに、自分は吸っていないのに煙を吸い込んでしまったために、尿から大麻の成分が出てくることはあり得る。尿から成分が出れば、使用罪で逮捕となると、それは誤認逮捕だ」

 今まで産業用の大麻は病気の治療や、神社で使うお祓い用の神具などでも使われてきた。亀石氏は「国家が個人に刑罰を与えるならば、刑罰に見合った有害性や依存性があり、非常に危険な薬物であることが前提にあるべき」と話す。

「大麻は合法化までされていなくても非犯罪化されている国もある。例えば、日本でも未成年の子がお酒を飲むとそれは違法だが、刑罰に問われるわけではない。それが非犯罪化という状態だ」

 さまざまな国で大麻が非犯罪化されている理由について、亀石氏はは「もちろん有害性がゼロとは言わないが、大麻の研究やデータに基づいて、そういう流れになっている。日本にとって大麻が良いものか悪いものか、それは分からない」とコメント。使用罪の創設は「ただ、とにかく若い人の大麻使用を抑えるために新しい刑罰を作ろうという発想が、非常にエビデンス(根拠)に基づかない感覚的なものだ」と批判した。

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 所持をしていないと使用できないため、所持と使用は紐づいているように見えるが、所持していないのに使用するといった状況は起こり得るのだろうか。

 亀石氏によると、手元に大麻があれば所持だが、他人から大麻をもらい、吸ってなくなってしまえば、所持していないことになり、現在の法律では罪に問えないという。しかし「使用罪が創設されたら、このケースも罪に問われる」と説明。

「使用罪を創設したいのは、取り締まる人たちなのではないか。大麻の匂いがしていたり、大麻自体は持っていないが吸引器具を持っていたりして、明らかに吸っているだろうという人を今の法律では逮捕できない。そういう人も捕まえたい思惑があるのではないか」

 亀石氏の主張に元麻薬取締官の廣畑氏は「そんなケチくさいことは考えていない。関係するとしたら、職務質問をする警察官はやはり有利だろう」とコメント。

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「覚醒剤も『横の人が炙りで吸っていて、その煙を吸っただけ』と言って、無罪になった人もいる。検討されている使用罪(の創設)は無理だと思う。落とし所がわからないし、合法として大麻草の主要成分で作られたカンナビジオール(CBD)とテトラヒドロカンナビノール(THC)がある。THCを規制するとしても、THCの含有量をどれくらいで違反とみなすのか。CBDオイルに混ざっているTHCはどうするのかなど、それをいろいろ考えていくと、使用罪の創設は無理だろう」

 厚労省は若い世代で大麻の乱用が相次いでいることを受け、大麻の使用についても犯罪として処罰の対象にする方針だ。賛否両論の声があるなか、大麻の扱いが今後日本でどのように変わっていくのか、議論の行末が注目されている。 

ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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