「ワクチンを接種してビールを飲もう」。来月4日の独立記念日までに成人の1回目の接種70%達成を目標に掲げ、“コロナからの独立”を呼びかけたアメリカのバイデン大統領。多くの人が接種を終えたラスベガス(ネバダ州)では規制の大半が解除され、カジノは店内のアクリル板を撤去。人々がマスクも“ソーシャル・ディスタンス”もない生活を謳歌している。
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東大大学院特任研究員の坂元晴香医師は「接種率が5割超えたくらいのところで緩めてしまった結果、感染が再燃してしまった国もある。世界全体で何割を目指そうという合意があるわけではないし、見極めていく必要があるとは思うが、イスラエルやアメリカの一部地域を見ていると、7~8割を超えれば、ある程度は緩めていいのではないか」と話す。
「ワクチン接種が始まったのが去年12月頃からなので、効果(抗体価)が1~2年は持続するのではないか、といった話については慎重に見なければならない。ただ、さすがに6カ月以上は効果があるのではないかといわれている。やはり1回打てば一生免疫がつくという“終生免疫”タイプのワクチンではないと考えられているので、冬になる前に季節性インフルエンザのワクチンを打ち始めるように、これからみんなで年に1~2回打っていく、ということになるかもしれない。もしかしたら季節性インフルエンザと新型コロナウイルスの混合ワクチンもできるかもしれない」。
一方、2月に医療従事者から始まった日本の接種も、そのスピードが加速している。政府は2日、1回目の接種を終えた人が1000万人を超えたことを発表。21日からは一部の職場や大学などでの接種、さらに国家公務員への接種など、65歳未満への対応も進めていく方針だ。
坂元医師は「1日50万人を超えてきたし、64歳以下の接種を始める自治体、大学や企業での接種も始まるということで、立ち上がりとしてはすごく順調に進んでいるという印象だ。7月中には高齢者への接種が終わるといわれているが、これが日本の人口の3割くらいなので、“1日100万回体制”になれば、早ければ8~9月くらいには7~8割へ接種が終わる可能性もある」と話す。
一方、アメリカ出身のお笑いタレントのパックンは「アメリカにはマスクを拒否してきた人たちもいるし、“コロナはただの風邪”説も根強い。ワクチンに関しても、“政府が国民をコントロールするためだ”といった陰謀論を唱えている人も多い。そういうこともあって、ワクチン接種した人に抽選で1億円をプレゼントとか、大麻や拳銃を配るといったキャンペーンをしているところもある。日本でも新規感染者数が減って緊急事態宣言が解除されれば、“痛いとか、ちょっと熱が出ることもあると聞いたから、別に打たなくてもいいんじゃないか”と考える人が必ず出てくる。“どうせ私はかからないから”という人たちをどうやって説得するのか、そこも課題になってくると思う」と指摘。
政府分科会の尾身茂会長との対談が話題になっているEXITのりんたろー。も「早くワクチン打ちたいと言ったら、“妊娠できなくなると聞きました、そういう発信はしないでください”みたいなメッセージがたくさん送られてきた。まだこういうことを言っている人がいるのかと思った」と明かす。
坂元医師は「季節性インフルエンザのワクチンについても、“自分は打っても打たなくてもかからない”と言う人がいる。しかしそれはワクチンを打った周りの人の免疫に守られているから。そういう事実を知ってもらうことが大切だと思う。私の所属する機関でワクチン接種開始前に行ったアンケート調査では、ほとんどの人が“打ちたい”か“迷っている”と答えた。“嫌だ、絶対に打ちたくない”という人は少数派だと思うし、周りが打ち始め、日常に戻っていくことが見えてくると、迷っていた人の中にも“打ってもいいかな”と思う人が増えてくると思う。やはり強制できることではないので、みんなが打った先に待っている“明るい生活”を見せていくことも必要だ」と指摘。
その上で、「ワクチンが全国民分確保されてきていて、ゴールも見え始めているので、本当にあともうひと頑張りだと思う。おそらく映画館、博物館、百貨店などへの規制の解除、昼食を一緒に取らないとか、休憩室を一緒に使わないといった制限付きでのテレワークの解除のようなことも業種によっては始まると思う。また、お酒を飲むことについても、一緒にいる時間が長時間になったり声が大きくなったりすることでの感染リスクがあることから規制されているが、これも接種率がかなり高まればイスラエルやアメリカの一部のようになることも考えられる」との見方を示した。
では、目下の最大の関心事、50日後に迫ったオリンピック・パラリンピックの開催についてはどうなのだろうか。坂元医師は「ここ1週間の状況を見ていると、少し前の大阪のような爆発的な増加はギリギリ抑えられていると思うし、医療機関や高齢者施設のクラスターも抑えられていると思う。これがワクチンの効果によるものかどうかははっきりしないが、接種の進み具合に加え、何とか持ちこたえている新規感染者数についてどれくらい下げきれるかというところだろう。一方で一部の国からの入国制限の強化も始まっているし、変異型の問題もある。判断するのは非常に難しい」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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