全国で優先接種や職域接種の動きが始まる中、全市民への接種を9月中に終えると宣言したのが兵庫県・明石市だ。
これまで数々の独自政策を推進してきたことで知られる泉房穂市長は、「まず、速いから良いというわけではないことをお伝えしたい。私が重視しているのは、スピードと丁寧さの両立だ」と強調する。
「本来は国がやっているような大規模接種は望ましくない。やはりかかりつけ医とよく相談をして打つかどうかを決めるべきなので、明石市では134の医療機関での個別接種を原則としている。一方、特設会場には障害に詳しいお医者さんや専門家にお越しいただき、ゆっくりやっていく。あるいは認知症のある方には無料で付き添うようにしている。基礎疾患をお持ちの方も同様だ。
そして、こうした丁寧さは打たない人に対しても必要だ。国が言うように、“ヨーイドン”で競争させたり、ワクチン、ワクチンと言い過ぎたりすることで、“打たないとダメだ”という空気が作られてしまい、“コロナ自粛”“コロナ差別”のようなことが起きるかもしれない。例えば学校で一斉接種を始めれば、打たなかった子どもがいじめられてしまうかもしれない。
国が感染症法を改正し、感染した人を罰するというような誤った法改正を行った時、私は“市長でいる限り、そういう罰則は絶対に市民に適用しない”と公言したが、明石市ではワクチンを打てない人にも目配りをするようにしている」。
その上で泉市長は、明石市の接種スピードの速さを支えているのが「医療関係者の全面協力」「職員の体制強化」、そして「市民の理解・強力」だと明かす。
「おかげさまで、地元医師会、そして市民病院の皆さんも全面協力してくれていて、中にはOBの方まで駆けつけて下さっている。ベースにあるのは、18歳までの医療費完全無料化、認知症診断の完全無料化、性的少数者の方々も家族と同様に対応してもらう協定など、市民のために一緒にやっていこうという医師会との連携、信頼関係だと思う。ワクチン接種になったから急に頭を下げたということではなくて、これまでの積み重ねが大きいということだ。国も医師会にちょっとお願いする程度ではなくて、計画を一緒に作るべきだ。それができていないので、しわ寄せや責任が自治体に転嫁されている。
加えて、事務や受付のために職員をしっかり揃える必要がある。そこで全職員がシフトを組んで対応にあたるとともに、急がない案件については1年先延ばしでいい、という方針を打ち出した。具体的には人事異動だ。普通、自治体の人事異動は年に1回だが、昨年度はコロナ対応に合わせて19回も行った。今年度も4月以降、すでに9回の異動しているので、ほぼ毎週のように職員をワクチン対応に追加していっている。
そして接種がスムーズに進んでいるのは、ある意味で市民に行政を信頼いただいているということも大きい。8年連続で人口が増え、出生率も税収も増えた。“住みやすい”と答えた市民は91.2%だ。去年は独自のコロナ対策もかなり実施したが、それでも貯金を増やすことができた。
だから医療関係者に対する追加助成もできるし、今回も5億6000万円の予算を投入して、打ち手の方に1回あたり7200円をお渡しし、インセンティブを高めようとしている。また、これからは接種を受ける人の年代が若くなってくるので、会社帰りなどの夜のニーズにも応えようとしている。そういう好循環に入っているということだ」。
こうした対応からか、"明石市に引っ越したい"という人も多い。そんな声に泉市長は「私は他の自治体と競争しているわけではない」と話す。「明石だけ良かったらいいということではなく、全国一斉に良くなったらいいと思っているので、他の首長とも連絡を取り合っている。今日もある市長が電話をくれたので、話をした。“じゃあうちもやるわ。頑張るわ”と言ってくれた。本来、日本中どこにいても打ちたい人は打てるようになっているべきだ」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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