同じプロの土俵に立ったからこそ、そう簡単に負けるわけにはいかなかった。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Dリーグ第1試合、チーム天彦とチーム広瀬の対戦が6月12日に放送され、チーム広瀬の北浜健介八段(45)が、チーム天彦・古賀悠聖四段(20)に2連勝した。2人は奨励会時代、幹事と会員という間柄。戦前に「勝敗は別として対局できてうれしい、感慨深い」と話していた北浜八段だったが、いざ対局となるときっちり厳しく“指導”した。
北浜八段は広瀬章人八段(34)から指名を受けて、今大会初出場。持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算という超早指しに不安の色も見せていたが、いざ盤に向かえばいつもと同じ。昨年9月末まで奨励会員だった新四段を、得意の振り飛車で迎え撃った。
初対決となった第3局では、終盤に千日手の筋がはっきり見えたところ「もう一局は覚悟していた」という北浜八段に対し、古賀四段がこれを嫌って打開。ここが勝敗の分かれ目となると、ここから北浜八段が加速。そのまま勝ち切った。
次の対戦は第7局。後手番から角交換型の振り飛車(向かい飛車)を目指すと、形勢が二転三転する混戦になったが、166手の熱戦で粘り勝ち。自身2勝目は、チームの勝利を決める大きな白星になった。
古賀四段からすれば、北浜八段は「よく怒られた先生」だった。奨励会時代「長くお世話になりました。怒られることが多かったですね。僕があまりいい奨励会員じゃなかったから(笑)。三段になったりしたら、周りから怒られることは少ないんで、そういう中で怒っていただいたことはすごくありがたく思っています」と、当時を思い起こした。将棋界には師弟の関係があるが、棋士の養成機関である奨励会の幹事である先輩棋士は、違った形で世話になっている人でもある。今回は北浜八段に軍配が上がったが、次回対戦の際に古賀四段がどれだけ成長した姿を見せるのか。幹事の北浜八段からすれば、それがきっと楽しみだ。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)