7月3日(土)より放送されるTVアニメ「ぼくたちのリメイク(ぼくリメ)」は、主人公・橋場恭也が28歳の記憶を持ったまま10年前の世界に巻き戻り、憧れのもの作りに関わる人生を作り直すべく芸大への道を選ぶというストーリー。
映像学科でヒロインの1人・シノアキこと志野亜貴やクラスメイトたちと作品を作っていく中で、もの作りの楽しさはもちろん、苦しみや葛藤もリアルに描かれるのが特徴だ。
本作にて恭也を演じる伊藤昌弘とシノアキを演じる古賀葵は、それぞれ名古屋音楽大学管楽コースと代々木アニメーション学院福岡校声優タレント科で、登場人物たちと同様に専門分野を学んできた。お2人の学生時代のエピソードを中心に話を伺い、声優としてのルーツに迫ってみる。
音大と声優専門学校の気になる学生生活は?
――伊藤さんは音大出身とのことですが、学生時代はどのように過ごされていましたか?
伊藤:僕はトランペットを専攻していたのですが、とにかくうまくいかないことしかなくて、壁にぶち当たっていました。音大まで行って気づくのは遅いんですけれど、歌やポップスやロックが自分の中心にあって、歌詞を書いて自ら音楽に乗せることが本当にやりたいことなんだなってやっと見つけられたんです。いろんなジャンルが好きなんですが自分が人生をかけてやるのだったら、そこだなって。
あとはやっぱり、大学の友達って非常に刺激的ですよね。大前提としてみんな音楽というものが好きなので、打ち解けるのも早かったんです。
――同じ志を持っている仲間が集まるというのも、音大や専門学校の魅力ですよね。
伊藤:飲み会やカフェでお茶をするよりも「課題曲の伴奏してよ」って言って演奏してもらうほうが、よっぽどその人のことがわかるんですよ。
古賀:すごーい!
伊藤:マジでそうなんです! 音楽をやっていない人からしたら第六感と思えるようなことで人と交流できたことが、嬉しいというか貴重な体験でした。
――今でも交流はあるんですか?
伊藤:ありますね。音大って8~9割の生徒が女性なんですよ。残りの男子で固まったりするので、その中には今も連絡をとっている人がいますね。かけがえないです。
――やっぱり「お前の音には負けないぜ!」っていう思いもありましたか?
伊藤:ありましたね! 「こいつとは性格が合わないし苦手なんだけど、なぜか音楽だけはぴったり自分と一番合う」という不思議なこともあって。
古賀:おもしろい!
伊藤:そうなんですよ。音楽と映像という違いはあれど、そういう感情で「ぼくリメ」という作品にも共感したのかなって思います。
――古賀さんは専門学校でお芝居を学ばれてきたと思うのですが、どんな環境だったのでしょうか?
古賀:専門学校なのでこれまでお芝居をしたことがない子たちがいっぱいいて、自由に「わーっ!」て気持ちを発しているのを見て、こういう風にしてもいいんだって(笑)。私はそれまで自分の気持ちを表に出すのが苦手で、人の顔色を窺っているような子だったんですが、そういう自分が嫌で自分の気持ちを出せる場所、自分のやることを認めてもらえる場所はないかと思って、声優さんになりたいと思ったんです。
最初はぷるぷる震えながら行ったんですが、みんなすごく自由に自分を出していて。お芝居ってその人が出したものが正解じゃないですか。もっとやっていいんだ、積極的に「やりたいやりたい!」って言っていいんだということを教えてくれた場所だと思います。
伊藤:それは衝撃ですよね。
古賀:衝撃です! 「ありなんだ、こういうの」って!
――専門学校だと卒業制作などがありますよね。
古賀:卒業式の日にみんなの前の大画面で流すという卒業制作のアニメーションをやりましたね。「出たい人ー? はーい!」みたいな感じでオーディションに参加して、面白かったですし懐かしいです! あと卒業公演として声優学科みんなで舞台をやるんですが、各校の最優秀ヒロインを決めるみたいなこともあったり。
伊藤:最高じゃないですか!
――音大では卒業制作的なことはあったのでしょうか。
伊藤:専攻するジャンルにもよると思いますが、僕はトランペットを専攻していたので、大ホールに何十人と集まって行う定期演奏会がありましたね。あと自分でスキマスイッチさんみたいなデュオを組んで、2人で「ああでもないこうでもない」と曲を作ったりしていました。
古賀:オーディションとか試験はあったんですか?
伊藤:毎学期実技があって、自分の場合はトランペットと副科のピアノと普通の一般教養があったんですけれど、ほんとうに怖かったです! 心臓が飛び出そうな気持ちで演奏しようとしていると、目の前に寝そうになっている教授がいたり(笑)。
古賀:ちゃんと聴いてあげてほしい(笑)。
伊藤:そういうところも好きでしたね(笑)。「くそー!」って思いながら起こしてやろうと思って演奏していました。古賀さんも試験とかありましたか?
古賀:二年制で進級試験とかはなかったんですが、成績表は学期ごとにありましたね。実技テストもあって、舞台で体を使ったお芝居をしたり一人で電話をしているお芝居をやったり、アニメのアフレコでナレーションを評価してもらうとか。
伊藤:すごいですね……!
もしも2006年に戻って人生をリメイクできるなら?
――そんな学生時代からさらにさかのぼりまして、「ぼくリメ」は2006年が主な舞台になっていますが、お2人はその頃どう過ごされていましたか?
伊藤:今年が2021年なので、15年前ですよね。僕は29歳になるので、その頃中学・高校生くらいですが、けっこうわがままなところがあるのでやりたいことは全部やってきた気がします。もし恭也みたいにリメイクしたいと思うことがあるとすれば……ちょうど中学から高校にかけての春休みに、アメリカのオレゴン州にホームステイに行ったんです。日本の学校の「みんな一緒」という空気感ではなく、真剣に音楽を磨いて自分の意見をしっかり持って、自分のやりたいことと重なる人と仲間になりたくて。
それ以来アメリカには行っていないんですが、そこから高校に行かずにアメリカにずっといたらどうなっていたんだろうなって。
――それは大きな分岐ですね。
伊藤:人種の問題もありますし、言葉の壁もある。だけどあのままアメリカにいたら、全然違う人生があったんじゃないか。もし自分の人生を変えられるとしたら、そこだけですね。今でもいつかあっちに10年くらい行ってみたいと思ってはいるのですが、言っているだけで(語学の)勉強とかは特にしていないです(笑)。
――古賀さんはいかがですか?
古賀:何をしてたんだろうなぁ……。伊藤さんのスケールの大きな話を聞いていたら、ずいぶん狭い世界で生きていたなぁと思うんですが、私も中学生くらいでまだ佐賀県に住んでいました。田舎なので閉鎖感があるというかクラスメイトも少なかったので、家と学校だけですべての世界が決まってしまっていたんです。
伊藤:田舎はそうなっちゃいますよね。めちゃめちゃわかります。
古賀:その時期はすごく中二病みたいな感じで「周りの人が全部怖い!」って思っていて、親にも迷惑をかけてしまっていたんです。そのあと東京に出てきて、いろんな人がいる場所でたくさんの人に会ってみて、そんなにほかの人に干渉しなくていいんだと思えるようになったので、もしあの時に戻れるならもうちょっと堂々と生きられたかなって思いますね。
伊藤:田舎はご近所での噂の広がりも、SNSばりに早いですからね。
古賀:そういうご近所さんとのつながりがあるのも、今ではいいところだなと思うんですけれど、思春期の心にはきついところもあったりして。
――東京はいい意味でも悪い意味でも、人に無関心な部分がありますからね。
伊藤:人が多いとそうなるんですね。
古賀:当時の私に教えてあげられるのなら「そんなにビクビクして周りを気にしなくてもいいよ」って言ってあげたいです。
TVアニメ「ぼくたちのリメイク」概要
【CAST】
橋場恭也:伊藤昌弘
志野亜貴:古賀葵
小暮奈々子:愛美
河瀬川英子:東山奈央
鹿苑寺貫之:石谷春貴
加納美早紀:沢城みゆき
火川元気郎:高橋英則
桐生孝史:田丸篤志
樋山友梨佳:大塚紗英
杉本ミキオ:落合福嗣
柿原将:中島ヨシキ
橋場美世子:反田葉月
【STAFF】
原作:木緒なち(MF文庫J「ぼくたちのリメイク」/KADOKAWA刊)
キャラクター原案:えれっと
監督:小林智樹
シリーズ構成:木緒なち
キャラクターデザイン:川村幸祐
音響監督:納谷僚介
音響制作:スタジオマウス
音楽:Elements Garden
音楽制作:ブシロードミュージック
プロデュース:フロントウイング
アニメーション制作:feel.
【公式HP】https://bokurema.com/
【Twitter】https://twitter.com/bokurema_anime
(C)木緒なち・KADOKAWA/ぼくたちのリメイク製作委員会
取材・写真・テキスト/miraitone.inc