コロナ禍で迎える二度目の夏。今年は旅行を検討している人が増えているという。
航空・旅行各社の夏の予約状況を見てみると、JALでは7月が去年の1.15倍、ANAでは7月22日~25日の4連休が去年の2倍、お盆期間が去年の2~3倍、JTBでは7月が去年の1.45倍となっている。
予約好調の背景には何があるのか。テレビ朝日経済部の延増惇記者が解説する。
Q.なぜ予約が増えている?
観光業界を取材すると、緊急事態宣言が解除されたこともあって、夏の旅行計画を今から立て始めている方々が増えているそうだ。職域接種も始まるなどワクチンが徐々に普及し始めていて、旅行マインドが少し上がってきたというのが大きな要因。
Q.旅行業界・観光業界はどうみている?
ワクチンへの期待というのは相当強い。観光庁の関係者は「ワクチンに絡めた旅行商品がこれから出てくるだろう。『ワクチン』と『観光』は密接に関わってくるものだと思う」と話し、JTBの高橋広行会長も「これから“ワクチン接種証明”を活用したツアーなど前向きに検討していきたい」と期待をにじませている。ワクチンが絡んだ旅行商品がこれから続々と出てくるんじゃないか。そういった意味でも、観光需要・旅行需要を喚起していきたいという考えが業界では広がっているようだ。
Q.政府側はどのような捉え方をしている?
まだ大きな動きはないが、感染状況がすでに収まっている自治体を中心に、県民が県内を旅行する際に割引を受けられる「県民割」がすでにスタートしている。実施中の地域と国から補助金交付が決定済みの地域を合わせると18県あって、政府関係者によると隣県での割引適用も検討しているということだ。例えば、県民割が始まっている秋田県から隣接する岩手県に旅行する場合でも割引をOKにしましょうと。感染状況とワクチンの普及状況を見つつ、徐々にギアを入れていきたいというのが政府の考えだ。
Q.県民割の財源はどこから出ている?
「GoToトラベル」の予算を使い、上限が3000億円。GoToトラベルの残っている予算は、最新の情報だと9000億円強ということで、そのうちの3000億円をすべて使えば6000億円が残る。ただ、県内の移動であればそんなに長距離の交通手段は使わないと思われるので、3000億円すべてを消費しないのではないかという見立てがある。
Q.県民割の延長にGoToトラベル再開の考えも?
見据えているが、再開時期はとにかく判断が難しいようで、オリンピック・パラリンピックが密接に関わっている。観光庁の幹部は「オリンピックには絶対に水を差したくない」と話していて、開催中にGoToトラベルを再開して感染が拡大してしまっては目も当てられないと懸念している。GoToトラベルの再開は当然、東京と大阪が含まれてくるので、再開には慎重姿勢を崩していない。ただ、複数の政府関係者を取材すると、「うまくいけば、オリンピックが終わった後の9月10月あたりに再開できないか」というところを考えているようだ。
Q.ワクチンパスポートを持っていない人のGoToトラベル利用が制限されることはある?
GoToトラベルを利用できる条件としてワクチンを絡めるかどうかというのは、考えていないようだ。国が主導している政策でワクチンの是非を問うような、税金を使った政策で恩恵を受けられないという不平等が起きてしまうのは絶対にやってはいけないと、みな口を揃えている。
Q.GoToは絶対にやめられない政策?
今観光業界は非常に厳しい状態で、旅行業界や航空業界、鉄道業界も数千億円の赤字が出ている。この状況があと1年2年続いてしまうと、旅行関連の会社がバタバタと経営破綻を起こしてしまいかねないということで、政府関係者も相当危機感を持っている。赤字が垂れ流されているのを「いち早く止血しないといけない」と考えていて、その一番の対策はGoToトラベル。GoToトラベルがきっかけで旅行の予約は爆発的に増えたので、その感触は政府関係者としても残っているようだ。