身寄りのない子どもたちが暮らす家で周囲の目から逃れるように生きる18歳の少女・花が、8歳の少女との出会いをきっかけに、少しずつ前へ進もうとする姿を描いた映画『海辺の金魚』。
作品を手掛けたのは、女優や文筆家としても活躍する小川紗良監督。『ABEMA Morning』では今回、プライベートでも親交のあるテレビ朝日の並木万里菜アナウンサーが小川監督に単独インタビューを行い、作品の魅力に迫った。
並木:『海辺の金魚』のテーマ設定について経緯を教えてください。
小川:今回一番にあったのが、花っていう主人公の女の子が、自分の人生を歩みだす瞬間を描きたいというのがあって。それは自分の自立のタイミングだったということもあるし、(花を)演じた小川未祐さんが18歳、等身大だなというのもあって、その設定になった。
これが初の長編作品となる小川監督は、大学在学中、是枝裕和監督の授業を受講。映画を学び、その後、自主制作でメガホンをとった3作すべてが映画祭で入選を果たすなど、監督としても高い評価を得ている。
並木:脚本協力に是枝監督の名前がありましたが、何かアドバイスはありましたか?
小川:是枝監督は大学時代から授業で映画作りを教わっていて。その延長線上で、今回も一度脚本を見ていただいた。その時はセリフのここはこうしたほうがいいとか、シーンの入れ替えとか、本当に細かいところをアドバイスいただいたんですけど。授業で是枝さんがよく、「時代性」「普遍性」「社会性」という3つの要素を取り込むといいと言っていて、そういうことは企画を作る段階からすごく意識していた。
2019年に撮影されたこの映画には、小川監督が親善大使を務める鹿児島県阿久根市も全面協力。エキストラやスタッフとして、阿久根市民も参加している。
小川:エキストラの方とかスタッフの方含めて、本当に阿久根市の方にたくさん協力していただいた。中でも子どもたちはたくさん映画の中で走り回ってくれて。大変ではあったんだけど、子どもたちが予想外の動きをしてくれることで、すごく作品の世界が広がったというか。極力、自然な姿を映画の中に取り込んでいこうという感じで、楽しみながらやっていました。
初めての長編作品となった、映画『海辺の金魚』。小川監督がタイトルに込めた思いは。
小川:矛盾をはらんだタイトルというか、やっぱり海で生きていける魚ではないので、金魚は。金魚って人間の飼育の元で育つ魚なんだけど、子どもっていう存在も大人に守られなくては育っていけない存在だと思っていて。でも花という主人公は、守られているところから出て行かないといけない、まだ知らない海に出て行かないといけないというタイミングを描いているので、金魚の姿と子どもの姿を重ね描きながら作りました。
■映画の撮影をきっかけに「保育士資格」を取得
ここからは、小川監督としてではなく“小川紗良”の魅力に迫る。
並木:監督はどうしてやろうと思ったんですか?
小川:実は、女優業をやるよりも映像を作る方が(時期が)早くて。高校生の時に行事が盛んな学校にいたから、文化祭だったり宿泊行事だったりをドキュメンタリーで撮っていて。“身近な友達を撮って、身近な友達に見せる”ということから始まって、映像って面白いなと思ったのがきっかけ。それで、大学に入ってから映画を撮り始めました。
映画『海辺の金魚』で描いたのは、身寄りのない子どもたちが暮らす家で育った18歳の少女をめぐる物語。小川は子どもたちと触れ合った映画の撮影をきっかけに、ある資格を取得したという。
小川:この『海辺の金魚』をきっかけに子どもたちとたくさん触れ合って、「子どもって面白いな」と思ったから保育士資格を取りました。知り合いの保育士さんに話を聞いてすごくいいなと思ったのが、子どもに対してできるだけ「否定語」を使わないというか、「肯定的な言葉」を使っていくと言っていて。でもそれってたぶん、大人の世界でも通用することだと思っていて、子どものことを勉強することで大人が気づかされることもたくさんあって、それも面白くて勉強していました。
女優に映画監督、執筆業と多忙な日々を送る小川。そんななか最近、プライベートでハマっているものがあるということだ。
並木:最近“暮らしを丁寧にしている”と小耳にはさんで(笑)。ハマっているものがあるんだよね?
小川:コロナ禍、自粛期間に家で過ごす時間が増えて「干し野菜」を始めました。にんじん、キャベツ、ピーマン、トマト、なんでもって感じで。(水分が)多いものほど、干した時の食感とか味の濃さが変わるから楽しいし、干し野菜を始めてから、朝起きて天気が良かったらすごい楽しくなるというか、“きょうは干せるぞ!”っていう。洗濯より野菜干してるくらいハマってる(笑)。
(ABEMA/『ABEMA Morning』より)