馴染みの飲食店で「いつもの」と頼むようなものだろうか。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Dリーグ第3試合、チーム永瀬とチーム広瀬の対戦が6月26日に放送されたが、チーム広瀬の丸山忠久九段が第2局、第4局、第9局と3局にいずれも後手番で登場した。この対局前に、チームメイトから毎回作戦を聞かれたが「まあ、予想通りの」と笑顔。これにチームメイトも一緒ににこにこするという、微笑ましいシーンが誕生した。
丸山九段は名人経験もある実力者で、レジェンド羽生善治九段(50)と同学年。いわゆる“羽生世代”の一人として、長く活躍してきた棋士だ。ゴキゲン中飛車に対する角交換への対応策は「丸山ワクチン」と呼ばれ、角交換に関する研究は棋士の中でも指折りだ。特に有名なのが、後手番から採用している一手損角換わり。使い手が少ない中、丸山九段はこの戦型を貫いているスペシャリストだ。
ABEMAトーナメントでは、今大会から予選、本戦通じて全対局でチームが棋士の出場順を決められることになったが、この第3試合では丸山九段が偶然か否か、全て後手番に。リーダーの広瀬章人八段(34)、北浜健介八段(45)と対局前に相手の印象や傾向などは意見交換するものの、丸山九段の戦い方について広瀬八段が「どういう作戦でいきましょうか」と聞くと、丸山九段が「まあ」と笑いながら答えるというのがパターン化していった。
漫才に例えるなら、お決まりのボケとツッコミのようなものだっただけに、ファンもこのやりとりにじわじわと笑いのツボを刺激されたようで、「まるちゃんかわいいかよ」「丸ちゃんの笑顔いいな」「ニッコニコで草」と、会話が繰り返されるほどに笑いのコメントも多くなっていった。なお、この試合では3局とも敗れた丸山九段だが、本戦でも変わらず一手損角換わりで勝利を目指すことだろう。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)