昨年4月にアメリカでサービスを開始し、今年に入ってから日本でも利用者が増えた、音声SNSサービス「Clubhouse」。その音声コンテンツに関して、最近ではさまざまなサービスが次々と登場し、人気がますます高まっているという。
音声コンテンツをとりまく状況や人気の理由について、テレビ朝日経済部の進優子記者が解説する。
音声コンテンツは多様化してきており、Clubuhouseのような音声SNSの「Spaces」「Spoon」、AppleやGoogle、Spotifyなどで提供されている音声番組の「Podcast」、音声配信サービスの「Voicy」「stand.fm」「Radiotalk」、インターネットラジオの「radiko」「ラジオクラウド」などさまざまなサービスが登場している。
市場規模も拡大が見込まれ、日本のデジタル音声広告市場は2020年の16億円から、2025年には420億になるという推計もある。Spotifyだけをとってみても、現在世界で利用者は3億5600万人いて、これにそのほかのプラットフォームの利用者なども加えると規模の大きさがうかがえる。
ここ数年で音声コンテンツに人気が集まっている理由について、進記者は大きく3点あると説明する。
「1点目が、デバイスの進化。AirPodsやワイヤレスイヤホン、スマートスピーカーなどの進化で、音楽を聴くということがより手軽にできるようになったこと。昔はMDプレイヤーやCDプレイヤー、iPodなど音楽を聴くためのガジェットを持たなくてはいけなかったところが、今はスマホ1台でアプリからあらゆる音声コンテンツにアクセスできるようになったこと。
2点目が、コロナ禍で在宅時間が増えたこと。家事をしながらでも仕事をしながらでも、耳だけは空いているので、何かコンテンツを聴きたい、音楽を聴きたい、カフェっぽいプレイリストを流したいといったニーズが高まったということで、1、2年で伸びている。目まで持っていかれると集中しなければいけないということがあると思うが、音声だけということで“ながら”にすごく向いている。
3点目は、生活全体の大きな変化。これまでのように決まった曜日の決まった時間にコンテンツを楽しむという方法から、オンデマンド方式に。好きな時間に好きなコンテンツを見る・聞くという文化が醸成されてきた」
さまざまあるサービスの中でも、特に注目されているのがPodcastだという。Podcastとは、大きくはインターネット上で配信される音声コンテンツやサービスのこと。Spotifyでは、2018年時点では世界に1万番組しかなかったが、今は260万番組に増えているという。アメリカのオバマ元大統領なども番組を持っている。
アメリカでは犯罪ドキュメンタリーがきっかけとなり、一気にPodcastの人気が広がり、音声業界がその可能性に気づき番組がどんどん増えてきているということだ。
各社もPodcastに力を入れており、「Spotifyでは、これからPodcastが広がっていく中で、質の高いコンテンツやすばらしいクリエイターを作っていくのが大事だということで、世界でそういった支援プロジェクトを行っている(Sound upプロジェクト)。支援の内容として、選ばれた受講者は制作に必要な機材を無料で借りた上で、企画・制作・配信までを行うノウハウを教えてもらう。そして、Spotify出資のもとで番組のパイロット版を制作し、全世界での配信を目指す。特に声がまだ発せられていないクリエイターの発掘をテーマにしていて、例えばアメリカだと有色人種の女性、ドイツだとLGBTQの方々を対象に行ってきた。今回、日本でもそのクリエイター募集が先月29日から始まったが、対象は女性(性自認が女性の方も含む)。なぜ女性かというと、『音声の世界で女性パーソナリティが少ない』『男女が立っていても女性がサブ的なことが多い』『ジェンダーギャップも120位と低い』という問題意識から、今回は女性が対象になった」と進記者は説明した。
今後音声コンテンツ市場の拡大は続く一方で、課題もあるという。「音声番組としてのフォーマットの発掘を各社が模索していて、イメージとしてはYouTubeの10年ぐらい前という感じ。業界関係者によれば、今じわじわと業界内で有名になりつつあるPodcasterの方たちも、10年後にはかなり認知度が上がっているのではないかと。課題は認知度とノウハウの提供で、Podcastの存在は知っていても、聞いたことがないという人をこれからどれだけ取り込めるか。あとは、言語の壁。海外のコンテンツに簡単にアクセスできる一方で、音声で聞いているので言語がわからないとなかなか楽しめない。YouTubeだと日本語の字幕が自動生成される機能があるが、音声だとなかなか難しい。あらゆる言語のコンテンツをすべての人が楽しむためにはどうしたらいいのかということが、これからの課題だと思う」とした。
(ABEMA NEWS)