「SHIROBAKO」や「色づく世界の明日から」などを手がけてきたアニメスタジオ・P.A.WORKSによる完全新作オリジナルTVアニメ「白い砂のアクアトープ」が、7月より放送される。
「白い砂のアクアトープ」は、沖縄県南城市にある閉館の危機が迫ったちいさな水族館「がまがま水族館」が舞台のアニメ。閉館させまいと奮闘する海咲野くくると、東京でアイドルの仕事を失い沖縄を訪れた宮沢風花が出逢い、ひと夏のストーリーが始まっていく――。
第1話の完成タイミングで、くくるの友人である照屋月美役の和氣あず未と、沖縄県南城市の観光協会で働く久高夏凛役のLynnにインタビューを実施。本作の魅力やそれぞれのキャラクターを演じる上で意識したポイント、第1話を見た感想などを伺った。
「姉妹のような2人の友情と、お魚の尊さや綺麗さが描かれている」4人の女の子が紡ぐ物語とは?
――本作はオリジナルTVアニメということで、お2人が最初に内容を知った時の印象から伺えますか。
和氣:最初はオーディションの時に作品の概要を見て、沖縄の水族館がメインの舞台になっていることから、すごく綺麗で儚い作品になるのかなとイメージしていました。あとお話の雰囲気として、くくると風花という2人の女の子がメインになる物語ということで、友情をメインとしたシーンが描かれるのかなって思ったりもしたんですが、第1話のアフレコ台本を読んで、すごく真面目に(ストーリー性を重視して)お話が作られていると感じました。
「がまがま水族館」で働くという夢を諦めたくないくくると、アイドルという夢を諦めてしまった風花のそれぞれの夢が作品で大切に描かれているんです。
Lynn:私もオーディションの時は概要だけしかいただいていなかったので、水族館が舞台になっている女の子2人の友情物語なのかなという、ざっくりとした印象を持っていました。そのあと第1話のアフレコ台本を読んで、友情だけじゃなくて水族館というところにスポットをしっかり当てたお仕事ものなんだなという印象を持ちました。なおかつ、様々な人々が出てくる群像劇としてもドラマが巻き起こる作品なんだなと感じましたね。
そういう作風がすごく好きなので参加できることを嬉しく思いましたし、全体的な作品の雰囲気としても登場人物みんながすごく自然体というか、沖縄に本当にいそうだなという人間味あふれた人物がたくさん出てくるので、今後の展開が楽しみだと思いました。
――くくると風花のお話が主軸ですが、月美と夏凛も重要な役どころですよね。演じるに当たってどのようなポイントを意識されましたか?
和氣:月美はすごく明るくてお調子者というキャラクターなので、演じるときにはネガティブな発言をしていたとしてもギャグに寄せるなど、根っからの陽キャラになるようにお芝居をしていました。でも、だからといって子どもっぽいわけではなくて、定食屋の看板娘として働きつつ、お母さんに任せられたことをしっかり受け継いでいこうという夢を持っているので、内面には大人っぽさもある子なんです。
くくるが悩んでいるときは、月美が受け入れて話を聞いていますし、年上の夏凛と話すときは同じ目線で話せるなど空気を読むのが上手い女の子なので、お芝居をするときも月美の感情に合わせながら演じることを心がけています。
Lynn:夏凛は月美たちよりちょっとだけ年上で社会人として働いている立場なので、頼れる良きお姉さんという部分が大きいんですけれど、子どもっぽいギャップもある子ですね。月美とは逆に内面的にはまだ大人になりきれていない部分もあったりして、くくるたちと一緒にいるときは同じ目線で話ができるように意識して演じさせていただいています。
夏凛も自分の夢ということについて徐々に認識し出していくので、全部は表に出さないけれど秘めている気持ちがあると、ちょっとだけ意識しながら演じていますね。
「自分の信じたことを頑張るために自ら背中を押すための言葉」気になる第1話の感想は?
――第1話の完成映像をご覧になっての感想はいかがでしょうか。
和氣:台本を読んだだけではわからなかった魚の動きや描写がとっても綺麗で、映像になったことで私が収録する前に思っていた作品とは、いい意味で全然違っていました! スタッフさんがたくさん見て観察して描かれているんだと思います。当たり前なんですけれど、動きが本物の魚みたいで、それを描けるってすごいと思います!
Lynn:私もアニメーションとしての映像美がすごいと思いましたし、実写かと思えるような細かい描き込みや繊細な色使いで、沖縄という土地がより魅力的に描かれているなと感じました。キャラクターたちも活き活きとしているというか、物語にぐっと入り込める雰囲気があると思うので、そういうところを楽しんでほしいなと感じました。
――第1話でくくるが言っていた「まくとぅそーけ、なんくるないさ」という言葉が印象的でした。正しいこと・真のことをすれば、なんとかなるさという意味ですよね。
和氣:沖縄で一番聞く言葉といえば「なんくるないさ」だと思っていたんですが、「まくとぅそーけ」という言葉はこの作品ではじめて聞きました。「なんくるないさ」という言葉だけでも私はすごく素敵なものだと思うんですが、そこに「まくとぅそーけ」という言葉がつくことによって、そうすればいつかは自分の願いが叶うかもしれないとくくるが真っ直ぐ一生懸命に頑張れているので、本当にこの作品にとってぴったりの言葉があったんだなと収録を通じて気づけましたね。
「がまがま水族館」をなんとかしたいくくるの努力って、ある人にとっては諦めてくれよって思われてしまうようなことかもしれないですが、くくるの周りにいる「がまがま水族館」を大切にしてきた人たちからしたら、すごく正しいことなんです。大切なものをすぐに無くしてはいけない、諦めない気持ちを持ってくくるは正しいことをやっているなと思うので、「まくとぅそーけ」という言葉によって作品にも深みが出ていると思います。
Lynn:私は「なんくるないさ」っていう言葉は、相手がいてその相手に対して言う言葉というイメージがあったんです。でもこの作品の最初に出てくるときは、くくるが自分に言い聞かせるおまじないのように言っていて、自分の思ったこと信じたことを頑張るために自ら背中を押すための言葉としてあるのかなと思いました。
その言葉があることで、ちょっと強くなれるというか勇気がもらえるような、そんな素敵な言葉があるのっていいですよね。正しいことを常に選べるわけではないですし、正しいことを選んでいてもどうにもならない残酷な現実もあるけれども、それでも諦めないで信じる気持ちが大事なんだということを伝えたい作品なのかなって思いました。
――ストーリーの中心になるくくると風花の関係性は、お2人から見ていかがでしょうか?
和氣:普通だったら絶対に交わらない2人が、とあることをきっかけに出会ったんですよね。そして風花は、ずっとお魚と水族館のことばかり考え、命をかけてお世話をしているくくるの姿を見て、次こそは諦めないで頑張らなくちゃ! と影響を受けたりして。くくるも、自分が好きなものを風花に好きになってもらえることがすごく嬉しいと思うので、本当に早い段階でお互いに信頼しあって友情が固まっていったなと思います。
Lynn:くくるは本当に、好きなことに一生懸命な真っ直ぐで純粋な明るい子で、風花は大人しくて穏やか。タイプの違う2人ですが、実はどちらもすごく優しい子で相手を思いやる気持ちがあるので、早い段階でわかりあえたんだと思います。
――それでは最後に、これから作品を見る方に向けてメッセージをお願いできますでしょうか。
和氣:女の子2人の友情と、夢に向かって諦めない姿が描かれているんですが、沖縄や水族館の描写がすごく綺麗で引き込まれました。とにかく1話を見ていただければ、ハマる人が多いんじゃないかなと思います! お魚の綺麗さと夢を諦めない気持ちというものを見ていただければ、いま夢を持っている方の心に響くものがあるんじゃないかなと。
Lynn:夢を持つことや働くということ、人と関わり合っていくということをいろいろな角度から訴えかけてくる作品だと思います。何かしら自分の考えが変わったり、影響を受けるようなセリフも散りばめられているので、そういうところも楽しんでいただければなと思います。
TVアニメ「白い砂のアクアトープ」概要
【CAST】
海咲野くくる:伊藤美来
宮沢風花:逢田梨香子
照屋月美:和氣あず未
久高夏凛:Lynn
仲村 櫂:土屋神葉
屋嘉間志空也:阿座上洋平
おじい:家中 宏
【STAFF】
原作:projectティンガーラ
監督:篠原俊哉
キャラクター原案:U35
シリーズ構成:柿原優子
キャラクターデザイン / 総作画監督:秋山有希
美術監督:鈴木くるみ
美術監修:東 潤一
美術設定:塩澤良憲
撮影監督:並木 智
色彩設計:中野尚美
3D監督:鈴木晴輝
編集:高橋 歩
特殊効果:村上正博
音楽:出羽良彰
音楽制作:ランティス
音響監督:山田 陽
プロデュース:infinite
アニメーション制作:P.A.WORKS
オープニングテーマ:ARCANA PROJECT
エンディングテーマ:Mia REGINA
※高橋 歩の「高」は、正式にははしごだかの字
【公式HP】https://aquatope-anime.com/
【Twitter】https://twitter.com/aquatope_anime
(C)projectティンガーラ
取材・写真・テキスト/miraitone.inc